八幡浜在宅医療研究会メーリングリストから
「患者中心の医療」から「コンコーダンス・モデル」へ
のブログについての、MLでのスレッドをまとめました。
在宅医療の質を高めるためにも、また本人、家族、関係するスタッフが安心して前に進むためにも、バックアップ病院の重要性をいつも感じています。
2年前、ケアマネージャーさんを対象にした勉強会でも紹介したのですが、がん緩和ケアを実践するとき、患者さん中心から患者さんもチームの一員と捕らえるコンコーダンス・モデルの考え方に基づいたかかわりが大切だと言われるようになっています。
従来は、患者さんや家族が中心にいて、周りからチームで支えているというチーム医療の図が提唱されていました(上の図)。最近では、患者・家族も外の輪に入れるという考え方が出てきています。
実際に症状が一番分かっている専門家は患者本人ということで、「コンコーダンス・モデル」と呼ばれています(下の図)。日本語では「調和」という意味で、患者や家族もチームの一員となって、皆で同じ方向・目標を目指すというものです。
「患者中心の医療」はもはや古い概念で、今は患者も医療チームの一員だという考え方が主流になりつつあります。
かといって、この症例のように認知症に癌を発症した方の場合、認知能力の低下で、判断・自己決定、しかも疼痛すら適切に意思表示できない方は、周囲のご家族や関わる医療・介護の援助職が痛みの具合までも含めて察してあげることが大切になってきます。この意味では、認知症合併がんの事例では、「患者中心の医療」という概念は生きているような気がします。
痛みを訴えることができず、食欲低下などが見られていく中で、12/29が通い最後の利用となりました。
状態が変化する中で、先生とも何度も話し合い、訪問対応で支援していく方針となり、訪問を繰り返す中、
1/19お亡くなりになりました。
今回、少しでもご家族の不安が軽減できるようにとできる限り、ご家族が不安に思われていることが何かを把握し、
そこに対して支援も考えて行きました。しかし、ご家族の不安を完全にはなくすことができず、入院を選択されて
いました。死に対する恐怖を特に長男さん夫婦が感じておられた様子も伺えます。特に長男さんは、年末まで、
ご本人と口喧嘩もされておりましたので、弱りゆく母を見るのが辛かったことも考えられます。しかし、年が明け、
他の兄弟が自宅に帰られたり、会いに来てくれたりする中で、亡くなられる数日前に初めてご本人が眠られている
お部屋の入口まで来られ、中の様子を見られる姿がありました。また、長男のお嫁さんも今までは、「ようせん」
「わからん」と言われていましたが、少しずつ、「お義母さん、しんどいね。」「お義母さん、休もうか。」などと
優しく声をかけられている姿が見られるようになりました。これだけでも、このご家族にとったら精一杯のことだった
のだと思います。
最後は、毎日のように面会者も来られ、『自分の家で最期まで』というご本人の思いに寄り添えたことはよかったと
思います。若い頃から、長男夫婦と一緒じゃなければいけないと思う、ご本人の思いで、元気な頃からご家族は身動きが
なかなか取れなかったことは事実ですが、長男夫婦と一緒に自分の家で最期を過ごすことができたことは、ご本人に
とっても幸せな事だったのではないかと思います。
この度は、森岡先生をはじめ、たくさんの方に支えられて旅立たれました。私たち、介護の現場もたくさんのことを
勉強させて頂きました。
本当にありがとうございました。
From: yawatahama@ml.asahimachi-gp-clinic.com