経鼻胃管(NGチューブ)による迷走神経刺激法
きょう、がん緩和ケアで今後関わる患者さんに初面談。数日前から、しゃっくりが止まらないとのこと。胃がん術後(これは治癒)。 胆管がんで現在抗がん剤による治療中の方です。基礎疾患が横隔膜周辺の癌であり、横隔膜刺激状態がつづいていても、しゃっくりの原因となりうると思われました。
しかしながら、数日もしゃっくりが止まらず、これはかなりのストレスです。 そこで、確実にしゃっくりを止める裏ワザを紹介します。
それは「経鼻胃管(NGチューブ)による迷走神経刺激法」です。
経鼻胃管(NGチューブ)による迷走神経刺激法:まずNGチューブをなるべく奥まで入れて、胃の内容物をなるべく吸引しておきます。胃拡張があればそのもののおかげでしゃっくりが出てしまいます。それから一気にNGチューブを引き抜くのです。ここで後咽頭をNGチューブでズルズルズルと連続刺激するのがこつです。なるべく長く刺激したいので、NGチューブはなるべく長い距離入れておくといいです。一般的には、もし、これで治らなければ、どこかに器質的疾患があると思って全身検索する必要があります。 このケースでは、胃を3分の2切除後で、胆管がんを発症されており、「経鼻胃管(NGチューブ)による迷走神経刺激法」でもしゃっくりが止まらなければ、横隔膜浸潤や横隔膜下膿瘍の合併など考慮しなければなりません。
幸い、この処置でぴたりとしゃっくりは止まり患者さんに喜んでもらえました。
薬物療法にも触れておきます。どうせしゃっくりなんて痙攣だから、ベンゾジアゼピン(セルシンなど)を、なんて発想はいけません。ベンゾジアゼピン系薬は、むしろしゃっくりを悪化させてしまいます。もちろんアルコール もしゃっくりを悪化させます。
薬物療法ならクロルプロマジン(商品名;コントミン、ウインタミン)がお勧めです。クロルプロマジンは唯一アメリカのFDAがしゃっくりを止める効果があると承認した薬剤で、有効率は81%と報告されています。
もう一つ、裏ワザは、柿の蔕(へた)。ヘミセルロースという成分が効果していると考えられています。自宅でも柿の蔕10〜20個を200〜400mlの水で半分くらいになるまで煎じて(15〜20分)、1日数回に分けて飲めばいいです。一般薬局で、柿蔕湯(していとう)やネオカキックスという商品名で処方箋なしで購入できます。
しゃっくり治療の裏ワザ;まとめ
①非薬物療法:NGチューブ引っこ抜き法。
②薬物療法:柿蔕湯、コントミンがやっぱり効く。