101歳の在宅死ー自然にまかせるということ
平成27年4月4日、101歳になるおばあちゃんがお亡くなりになりました。在宅医療で定期的に訪問診療を実施していた方です。夫も肝臓癌のため在宅で数年前に私が看取りました。
約3週間前に訪問診療した時には、最近食事量が減り、昼間も眠っていることが多くなっているとのご家族のお話でした。診察後、本人に「また来ます」と手を握ると、にっこりと笑顔を返してくれたのが印象的でした。高血圧症はありましたが、老衰の進行は周囲の人にも認識できる状態でした。
ご家族との相談で、点滴などはせず自然に経過を見守ることを確認していました。
死亡診断書には、「直接死因:老衰;21日」と記載しました。数年間、関わらせていただきましたが、看取りに訪問した時のご本人の様子は、いまにも開眼しいつもの笑顔を返してくれるような様子でした。深夜にもかかわらず出動してくれた当院の看護師さんに感謝です。
人は、亡くなる前に食べられなくなることにより、脱水状態となり、徐々に眠くなる時間が増えて、ADL(日常生活動作)が低下していきます。 なぜ、亡くなる前に食べられなくなるかというと、水分を体内で処理できなくなるからです。このような状態で強制的に水分や栄養を取り入れていくと、身体がむくんだり、腹水がたまったり、痰がたまったりとかえって本人をしんどくさせてしまいます。 がん緩和の現場でも同じようなことが言えますが「身体で処理できなくなったら、できるだけ脱水状態にして自然に看ていくのが最期を楽にする方法ですよ。」、また、がんの場合はそれに加えて「栄養補給はかえって癌細胞に栄養がいくのみで、本人の身にはなりません。」と説明することにしています。
ましてや老衰は病気ではないので、身体の状態にあったちょうどよい傾眠、ADLがあれば、呼吸も穏やかに最期を迎えることができると考えています。