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象徴天皇制の根幹を揺るがす現政権(第2次高市政権)の皇室典範の改正に疑問                              憲法が定める「世襲」の原則に反する問題の多い養子制度

 日本国憲法第1条は、天皇を「日本国及び日本国民統合の象徴」と規定し、その地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」と定めています。この象徴天皇制は、戦前の統治権総攬者としての天皇制とは異なり、国民統合の象徴として政治的権能を持たない制度であります。その制度的基盤を具体化しているのが皇室典範であり、その改正、とりわけ皇位継承制度の根幹に関わる改正については、憲法秩序の安定性という観点から極めて慎重であるべきだと考えます。
 憲法学において制度の正統性は、単に民主的多数決によって支えられるだけではなく、制度の継続性と予測可能性によっても担保されます。皇室制度は日本国家の歴史的連続性を象徴する制度であり、その継承原理は象徴天皇制への国民の信頼を支える重要な要素であります。社会情勢や短期的課題への対応を理由として継承原則を変更することは、制度の安定性を低下させ、将来にわたる追加的な制度変更を誘発する可能性があります。このような制度変更の累積は、象徴としての権威の基盤を弱める危険性を含んでいます。
 また、政治学の制度論では、制度には「経路依存性(path dependence)」が存在するとされています。一度変更された制度は、その後の政治的・社会的要請によってさらなる変更が求められる傾向があります。皇室典範の改正が皇位継承原則そのものに及ぶ場合、将来的にも政治的価値観の変化に応じて制度改正が繰り返される可能性があり、結果として皇室が政治的論争の対象となる危険が生じる可能性が否めません。象徴天皇制は本来、政治的対立を超越した存在であるべきであり、その制度設計もまた政治的中立性を維持できるものでなければなりません。
 さらに、皇族数の減少や皇位継承資格者の不足という現実的課題は重要であるものの、それだけをもって制度の根幹を変更することが直ちに正当化されるわけではありません。制度の基本原則を維持しつつ皇室活動を支える方策や、現行制度の枠組みの中で実現可能な代替策を十分に検討することが、立憲主義の観点からも望ましい姿勢と考えます。
 以上より、象徴天皇制は国民統合の象徴としての安定性と歴史的継続性を制度的価値として有しているのです。その基盤となる皇室典範の根幹に関わる(とくに問題の多い養子制度の導入)改正は、短期的課題への対応のみを理由として行うべきではなく、憲法秩序の安定性、制度の正統性及び政治的中立性を総合的に考慮し、極めて慎重に判断されるべきであります。
  もっとも、皇室典範の改正に慎重であるべきとの立場に立ちながらも、皇位継承資格については再検討の余地があると考えています。皇位継承の本質は「世襲」にあり、日本国憲法第2条も「皇位は、世襲のものであって」と規定していますが、「男系男子」に限定することまでは憲法上明記していません。男系男子による継承は現行皇室典範が採用する制度であり、憲法上の絶対的要請ではありません。
 したがって、皇統に属する女性皇族が皇位を継承する女性天皇は、「世襲」という憲法原則と必ずしも矛盾しないとの解釈も可能であります。実際、日本の歴史上には推古天皇や持統天皇をはじめ八人十代の女性天皇が存在しており、女性が皇位に就くこと自体は日本の歴史的伝統と相容れないものではありません。
 一方で、女系天皇の容認は、男系による皇統の継承という歴史的原則の転換を意味するため、制度的影響は女性天皇の容認よりも大きいと思われます。このため、制度変更の影響を最小限に抑えつつ皇位継承の安定性を確保するという観点からは、まず女性天皇を認めることについて議論を深めることには一定の合理性があると思います。
 以上より、皇室典範の根幹に関わる改正は歴史的継続性と制度の安定性の観点から慎重であるべきと考えます。しかし、その慎重さは制度の固定化を意味するものではありません。憲法が定める「世襲」の原則を尊重しながら、女性天皇の可能性について冷静かつ学術的な議論を重ねることこそ、象徴天皇制の将来的な安定と国民統合の維持に資するものと考えます。