IPW(Interprofessional Work)(専門職連携協働)とは、複数の専門職が協働し、利用者や患者の期待や要望に応えていくことを意味し、「連携と統合」の理念を実践することでもあります。
在宅医療を進めていくうえで10数年前から欧米を中心に発信された概念ですが、すでに介護保険制度が導入されて日本でも、「多職種協働」と訳され実践されています。まだまだ不十分な理解のなかで、問題点も多くあります。
IPWの重要性は理解していても、現場では進まないことがよくあります。その原因として、サービスを提供側の視点に偏りがちで利用者や患者の願いについての共通認識を共有できていないこともあれば、専門職の働きを理解できていないこともあります。また、それぞれの専門職が使う言葉が専門的で他の専門職が理解できない場合や専門職同士が交流しにくい職場の雰囲気がある場合など、多様な障壁が考えられます。
しかし、国民ニーズの多様化、医療技術の高度化、専門化と同時に、専門職(資格)の数も増えている状況が進むにつれ、より一層、IPWを実践できる人材が求められています。IPWを実践し、利用者の願いを叶えていくことが、超高齢社会の我が国にとって必要不可欠となっていると言えます。
国民の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡する現在、専門職協働で末期がんの方を支えるとき、病院から在宅へ移行する際、スイッチを切り替えるように在宅にもどり、「さあきょうからは在宅ですよ」ではスタッフ、患者側とも信頼関係も築けないまま、結局元の病院へ家族の判断で戻ってしまうという後味の悪い結果になることを時に経験します。在宅で最後まで支えることが可能であった例では、がん専門病院の関わる期間と在宅医クリニックの外来に通院してもらう期間を重ねる時期があると患者・スタッフ間の信頼関係も築くことができ、在宅にスムーズに移行され在宅での看取りまで支援することがほとんどの場合可能です。
外来診療と平行しながら在宅診療を実践している当院では、この「病院とクリニックを重ねる期間」が大変重要だと考えています(下図)。