第118回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和6年9月6日(金);午後7時~8時30分

  <症 例>
   60歳代 男性
  <傷病名>
   小細胞肺癌
  <挨 拶>
  開会挨拶
   八幡浜医師会会長
    芝田 宗生 医師
  <発表者>
   座 長;三瀬医院  片山 均 医師
  ① 家族状況などの説明
    八幡浜医師会居宅介護支援事業所
        清水 建哉 コーディネーター
  ② 症例報告
    市立八幡浜総合病院
       緩和ケアチーム 緩和ケア医 森岡 弘恵 医師
       がん化学療法看護認定看護師 菊池 和美 看護師
  ③ 訪問看護ステーションからの報告
    訪問看護ステーションいまいスマイル
       松本 千恵子 看護師

<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第118回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●病院緩和ケアを受けていた患者さんの強い希望で在宅帰宅後お亡くなりになり、家族が救急車を要請。救急隊が到着時にはお亡くなりになっておられ、検死となった事例で、多くの課題について議論された。

<職種別参加者数>

合計  64名
医師 8名 社会福祉士 4名
歯科医師 2名 ケアマネ 7名
保健師 2名 介護 3名
薬剤師 2名 その他 2名
看護師 30名 事務 3名
心理士 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
     これまでは在宅支援をメインで、ケアマネジャーとして支援してきました。
     今回のケースのように、「何かあれば○○に連絡をして下さい」とカンファレンスで何度伝えても、いざとなると予想外の対応をされるケースもありました。現在も、「少しだけでいいので帰らせてほしい」といわれ、病識のうすい方の対応で悩んでいた所でした。これまでとは違い、送り出す立場であるため、送り出すからには、どのような連携方法をすべきか、どういう確認が必要かを改たな視点で学ばせていただきました。
     回復期リハ後、在宅に戻る方への多職種の連携と、緊急時の対応の確認を共に行い、地域を支えるマンパワーの一人でありたいと感じました。
     いまいスマイル松本様と何度もお仕事をさせていただきましたが、しっかりと説明をして下さり、心に寄り添う支援をされる方ですので、とても心強いサポーターです。
  2. 医療コーディネーター
     在宅医療・介護を受けながら過ごされる方が増えていくにつれ、遭遇するであろう事例を学ばせて頂きました。家族がその瞬間に遭遇すると慌ててパニック状態に陥るものです。前もって準備を重ねても対応が難しい家族もいらっしゃるかと思います。流れを簡略化した図をお渡しして電話の前に貼り付けるなどの工夫が必要になるかもしれないと感じました。
  3. 看護師
     「急いでいる時程丁寧にしないといけない。大事な話し合いは抜かしてはいけない」と言う吉田さんの言葉が身に沁みました。
  4. 医師
     本人の余命がとても短い中で、本人の希望に沿って、在宅に帰ることができたのは、本当に素晴らしいと思いました。本人も、身内の方も、満足されており、今回の経過は問題なかったと思います。
  5. 医師
     森岡先生がお話されたように消防の方との話し合いの場を持たれることが良いのではないでしょうか。
  6. 看護師
     7/24退院、翌日死亡ということでどのようなケースかと思っていたのですが、酸素10Lリザーバーマスクということで理由がわかりました。先生も迷われていましたが、やはり生命が維持されている状況での救急要請と、万が一の場合の対応については、退院時に説明しておく必要があると考えます。この場合、救急車要請なら検死になることも家族には伝えておき、生命の予後がわかっている状態のため、死亡する可能性のことを十分に、まわり、家族に納得、了承して頂いておくことが大事だと考えます。
  7. 看護師
     病棟スタッフとして関わりました。患者様の気持ちを優先して帰宅させましたが、状態がかなり悪く、死亡するかもしれないと考えていました。でも、その後救急車で帰ってくるだろうと考え、死亡したときにどうするのかを深く考えることができていませんでした。リーダーは主治医に先に報告、相談していましたが、森岡先生とも帰る前(入院中)には話していました。死亡診断となると主治医かと勝手に考えてしまい、報告が遅れたのも反省点です。やはり、仕組み(決め事)が充分でなかったと気付かされました。今後、緩和ケアチームとしてより良い関わりができるよう知識を深めたいと思います。
  8. 看護師
     病棟勤務しか経験がないので、自宅に帰ってからの患者さんや家族の声、様子を知ることができ良かったです。病院という制限のある状況では患者さんの思いをなかなか叶えることが難しいと、いつもジレンマを抱えているので訪問看護の方々は素晴らしいと思いました。マニュアルができあがったら、医師、看護師含め多職種と共有したいと思います。
  9. 看護師
     一度自宅に帰りたいだけだったのか、家で亡くなりたかったのか、家族はどういう希望なのかなど、細かく把握してケアをする必要があると思いました。入院中にしか関わることはないけれど、本人の希望にできる限り応じ、退院や最期を見据えた看護を入院中も行っていこうと改めて感じました。
     また、今回の症例検討会に参加させて頂いたことで、一人の患者さんに対し、様々な方が関わり医療を提供し、日々、良い看護であるか考えながら携わっておられると思い、とても勉強になりました。
  10. 看護師
     酸素10Lリザーバーマスクをしながら退院することが無謀ではないかと、なにも知らないので思ってしまいました。しかし、患者さんの強い思いに答えることは凄いと感じました。この場合は、亡くなって硬直状態で発見されることを想定できなかったこと、悪化状態で搬送されれば対応できるだろうと思っていたことだと思いました。たとえ数日であっても在宅医に繋ぐことの重要性を強く感じました。私たちも患者さん中心に考え、その思いを汲み取りながら対応していこうと思いました。
  11. 看護師
     終末期の患者さんの家に帰りたいという思いを大切にして、病状的には非常に厳しいと思われながらも多職種で連携して関わったことは良かったと思いました。
     医療情報を在宅に伝え、最悪の状態を想定して関わること、在宅看取りを見据えて患者本人、家族にもしっかり伝え、問題意識を共通にするために多職種の合同カンファレンスを行う大切さを再認識しました。

  12. 看護師
     情報共有の大切さや、伝える難しさを改めて感じました。事例を通して課題や今後の体制づくり等、考えなければならないと思いました。
  13. 薬剤師
     ステージ1の肺がんと診断されてからとても進行が早く、在宅医療に以降されてからもとても看取りまでが早いのだと感じました。
  14. 社会福祉士
     医療職ではないので専門用語の省略は難しいです。
     帰宅した翌朝には亡くなられた方でしたが、どんなに体がしんどくても「家の方が楽、家がええの」と笑顔で言われたことで、本人にとってはとても心穏やかに最期の時間を過ごすことができて良かったと思いました。

  15. 看護師
     改めて患者さんの予後予測をもちながらアセスメントし、関わっていくスタッフとの情報共有が大切だと実感しました。
  16. 医師
     私たち医療者は、一つの臨床ケースについて、診断をし、それに基づいた治療を実施し、また予後の予測など今後の医学的見通しについて考えます。今回の症例は、状態から予後が日の単位でしたが、ご本人と家族の強い希望があり退院し、自宅に戻られ最期を迎えられたことは、本人にとっては大変良かったのではないかと思います。家族も病院死ではなく在宅で亡くなられたことをよかったと感じられており、検死にはなったものの結果としてはよかったのだと思います。この症例を通じて思ったことは、八幡浜市では市立病院ががん終末期のバックベッド機能を果たしておらず、今後も高齢者が増えていく中で、これから在宅医療に取り組もうとされている診療所医師が安心して在宅訪問診療を実践できるよう、がん終末期、心不全の緩和ケア、認知症など老年期疾患の緩和ケア、などなどに対応できるよう仕組み作りを考えていくきっかけになった症例検討会でした。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006