第125回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 令和7年6月6日(金);午後7時~8時30分

  <症例>20歳代 女性

  <傷病名>
   右大腿骨骨幹部骨肉腫、多発肺転移

  <挨 拶>
   開会挨拶;八幡浜医師会会長  芝田 宗生 医師
  <発表者>
   座 長;旭町内科クリニック  森岡 明 医師
    ① 家族状況などの説明
        八幡浜医師会居宅介護支援事業所
               清水 建哉 コーディネーター
    ② 症例報告
        三瀬医院  片山 均 医師
    ③ 訪問看護ステーションからの報告
        八幡浜医師会訪問看護ステーション
                  坂本 美恵子 看護師
    ④ 入院の経過
        市立八幡浜総合病院
              森岡 弘恵 医師
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第125回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●悪い知らせを伝える際、医療者のコミュニケーション行動が患者さんのその後のストレスと関連することから、癌治療医、緩和ケア医、などがかかわる経過中に、いかに信頼関係を築きながら望ましいコミュニケーションをとるべきだったか、このケースを通して多くの議論がなされ、学ぶことが多くあり、今後の活動への糧となった。

<職種別参加者数>

合計  72名
医師 9名 社会福祉士 5名
歯科医師 2名 ケアマネ 16名
保健師 5名 介護 4名
薬剤師 7名 その他 3名
看護師 18名 事務 2名
臨床心理士 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 看護師
     研修前に資料を一読し、とても胸が苦しくなりました。看護師として、母親として、そして、対象者であるご本人の気持ちを推察し、何とも言えない感情が沸き上がってきました。ご本人が「嘘つき」といった気持ち、母親が「(余命のことを)話さなくてよかった」と思っていること、父親との関わり方、そして、病識に対するずれの大きさなど、症例検討会を通して各専門職の苦悩が伝わりました。今回のケースは、疑似症例の中でも特に難しいものだったと思います。
     近年では、ご本人様の意思を尊重するという考え方が主流となりつつあり、医療現場や自宅療養の場面では、ご本人自身が病態を理解し、これからの治療や生活に主体的に選択するように支援することが重要だといわれています。そういう情勢もあり、今回の症例においては未だに「これでよかったのか?」と苦悩されている専門職の方がいらっしゃるのではと拝察します。私自身、現在の事業所で、がんと向きあう方と関わる機会はないに等しいのですが、今後、このようなケースに直面した場合、どのようにコミュニケーションを図っていくか…など考えるきっかけとなりました。
  2. 看護師
     当院の症例を取上げていただきありがとうございました。ご本人に十分な病状説明や予後説明が行えなかったことは、関わった当院スタッフ一同が後悔をしており、もやもやしているところでした。会場の皆様のご意見から多くの方が精一杯支援してくださっていたことが伝わりました。ありがとうございました。
  3. 薬剤師
     若年の患者様のケースはとても参考になりました。ご本人様、ご両親の無念や辛さが伝わってきました。関わられた医療関係者の皆様の悩みも教えていただき、貴重なご講演に参加できたことをありがたく思います
  4. 介護支援専門員
     今回は、自分の子供と年が近い症例だっただけに、いつもとはまた違った思いを持ちながら聞かせていただきました。若年がんの制度があることも、今回勉強になりました。
    普段の仕事の中で私は、どうしてこうしないんだろう、こうすればいいのに、と、“説得”するように関わることがありますが、今回の皆さんのように、それを丸ごと受け止める、引き受けるのはとても、もどかしかったのだと思います。利用者本人や家族に寄り添った支援がきるよう、努めたいと思いました。
  5. 看護師
     若い患者さんの終末期の対応は、告知のこと、死と向き合うこと、家族との関係、友人との関係、お金のこと…、たくさん悩ましいことがあって、いつも難しいと感じます。今回の事例も正解がない中で悩みながら最善を探すことや患者・家族と向き合い続けることが、苦しいけれど大事なんだと改めて学ばせていただきました。私は治療する病院の立場で、地域の医療機関や支援者の皆さんへ患者さんをおつなぎする(多くは病状が悪くなって)立場ですが、診断や治療の段階から患者さんの意向、家族関係をしっかりとらえて、患者さんと家族の認識や意向のズレが少ないようにしておつなぎしなければいけない、とあらためて思いました。どうしても難しいこともあるのですが、できるだけ努力したいと思います。
  6. 社会福祉士
     家族の要望が強く、本人に病状や予後を伝えることができない状況の中、ぎりぎりまで本人に伝えることができなかったことで、本人の視点に立った時に良かったのかどうか、と考えてしましました。本人の年齢、性格、価値観もあると思いますが、病状を知らなかったからこそ頑張れたのか、いよいよとなったタイミングで治らない病気だと知ったときの絶望など、色々考えさせられる事例でした。
  7. ケアマネ
     病状告知の難しさ、家族支援の大切さを改めて感じました。
  8. ケアマネ
     本当に大変な事例でご苦労されたと思います。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
     ご本人の思い、ご家族の思い、支援者の思いがそれぞれ大きく異なっている場合、その思いが少しでも汲み取れるような支援、関わり方ができるようになりたいです。ご本人、ご家族にとって「振袖を着る」ことが大きすぎる目標だったのかなと考えてしましました。支援は繋がるものだと思っています。普段の支援の中で小さな幸せや希望、喜びを感じられるような支援を少し早い段階から行い、それを次の支援者に繋いでいくことが大切だと学ばせていただきました。
  9. 看護師
     症例を聞くだけでもとても苦しくなる思いでした。関わった皆様、本当にお疲れ様でした。
  10. 保健師
     在宅支援チームと受入れ病院との情報共有、連携がとても大切だと思いました。急遽受け入れることになった病院側のご苦労を感じました。ご本人の想いとご家族の想いに相違がある時、どちらの想いを尊重すればよかったのか、悩ましいと思いました。正解は分かりませんが、八幡浜に帰りたい、振袖を着たい願いが叶えられたことは、ご本人にとって大切な出来事になったと思います。
  11. 看護師
     本人、家族の思い、受入の違いがある中で、残された時間を大切に過ごすために何が必要なのかを一番に考えながらケアにあたり、答えを求めようとしている自分があります。家族の背景を知ることの難しさや、なぜそうしたいのかを時間軸で考えていくことが大切であると思いました。
     本人の色々な場面で心からの声、訴えが出ている場面がありました。家族と同じ場所で同じ内容を一緒に聞きたいという本人の覚悟をご両親が知ることで、どのように感じ、医療者が一緒に関わっていけたのか、引受けていけたのだろうか疑問に思い、この方を通して大切にしたい言葉を感じました。
  12. 看護師
     若い患者でどのように関わっていたら良かったのか難しい患者でした。でも本人の希望を叶えたいと思い、緩和ケアチームで話し合って関わることができました。最後までどうしたらよかったのか考えることができました。
  13. 保健師
     今回のケースは若年の事例であり、告知や余命を伝えることについても大変考えさせられました。第三者からするとこうするべきではなかったかと思うところはありますが、緩和ケアの対象は、本人だけでなく家族も含めたものであるという話を聞くと、ますます正解はないということに気が付きました。本人も家族も必死に病気と戦われ、また関わるスタッフもそれぞれの立場で献身的に支援されていたことがよく分かりました。
     今回は制度の窓口としての関わりでしたが、様々な制度を通じて感じることですが、行政の役割としてがんの早期発見や治療に繋がるようがん検診の受診の推奨により力を入れていきたいと思います。
  14. ケアマネ
     大学で「心理学」を専攻されていたご本人が、これから「心理学」について深く学ばれていくところでの発病でご自分の気持ちをどのようにコントロールされていたのかを考えていました。がんセンターの臨床心理士の方がセルフモニタリングを提案されたとのことで、自分の感情をスケールで表すことで気持ちの安定を図られていたのだろうと推察しました。病気がなかったら普通に卒業して「心理士」として人の心に寄り添う職業につかれたのにと思うと無念です。
  15. ケアマネ
     ご本人、ご家族の意向を汲み取り、両者に寄り添った支援を行うことの難しさを改めて認識しました。在宅ケアの対象者、その家族と接する際の支援者側のスキルが重要だと感じました。
  16. ケアマネ
     今回の事例は、20代女性という事も有り今までにない何とも言えない気持ちになったのが率直な印象でありました。余命の説明が出来ない「告知」がキーワードになった事例だと思います。八幡浜に戻られた後、関わられた皆様は本当に家族状況を踏まえながらご本人の状態、意向を確認しながら短期間での対応中、素晴らしいケアをされておられた事、大変感銘を受けました。ギリギリまで治療を受け、希望を持ちながら前向きに治療を受けられたご本人の思いは如何程で有ったかと思うと親としての視点からしてもとても辛く、やりきれない気持ちになったと思います。
     当時のどのように対応されていたかや、色々な方の貴重なご意見を聞きながら感じた事としましては、がんセンターでの臨床心理士のケアをご本人はしっかりと受け止めて今後への心構えが出来てきていたと思います。ご家族は遠方で有り、時間も限られた中では有ったかと思いますが、ご本人とは別で最初に両親に対してのヒヤリング、ケアが出来る事が少しでも出来れば、余命に対しての話し合い、本人が希望していた本人と家族が一緒に話し合い、説明を受ける事が出来る可能性が有ったのではないかと思いました。難しい状況であったとは思います。
  17. 保健師
     今回の症例では、本人に告知したほうがよかったのかどうか、早い段階で本人に告知するタイミングはなかったのか、両親の思い、本人の知る権利など、いろいろ考えさせれるところはたくさんあり、正解はないと思いますが、いろんな立場の方の意見をきくことができ、今後の支援の方法にいかすことができると思いました。また、八幡浜の病院、訪問看護、コーディネーターの方々が、「うちでは、こんな症例はうけたことないので受けれない」と断ったりせず、最後まで、「その人らしくいることを支えるには何をすればいいか」考え、支援されていたことを伺い、八幡浜は、他の地域の病院に入院しても安心して戻ってこれる地域だと感じました。
  18. 医師
     悪い知らせを患者さんに伝えることを家族が反対する場合はしばしば経験します。その場合、まず、家族が患者さんに悪い知らせを聞かせたくない理由(多くは悪い知らせの後の患者さんの気持ちを気遣って、あるいは患者さんへの対処に自信が持てないという家族の心配や不安があると思われます)に対して十分に共感を示すことが大切です。そして、患者さんに伝えることで想定される利益と不利益について話し合うことが必要です。患者さんの意向という点から考えると、治療病院の臨床心理士さんがおっしゃっていたように、このケースの患者さんは両親(家族)と一緒に伝えられたいという意向を示していました。このことから、諦めずに患者さんのご両親と話し合いを重ね、患者さんと家族一緒の場で情報を共有できるように、あらかじめ場を設定する準備をしていく努力が必要だったのではないでしょうか。悪い知らせを伝えられる患者さんの精神的ストレスの大きさは知らせの内容だけで決まるのではなく、患者さんの理解や期待と医学的現実とのギャップの大きさにも影響を受けるのですから。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006