第二十六回 八幡浜在宅医療研究会開催しました。

 在宅緩和ケアは、がんや心不全、認知症、神経疾患など完治が難しい病気を持つ方が、自宅で穏やかに過ごせるように支援する医療です。医師、歯科医師、看護師、薬剤師、リハビリ専門職、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、ヘルパー、心理士、栄養士などの多職種チームが連携し、身体的痛みや不安の緩和、睡眠・食事など生活の質向上を目的としてケアを提供します。
 八幡浜医師会では、平成24年(2012年)に八幡浜在宅医療研究会を立ち上げ、在宅療養支援診療所を中心に、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、訪問介護ステーションなどの多職種の連携を発展させてきました。
 また、愛媛県在宅緩和ケア推進会議の構成員として愛媛県在宅緩和ケア推進事業の一翼を担っています。
 今回は、愛媛大学大学院医学系研究科 看護学専攻 地域健康システム看護学講座の吉田 美由紀先生を講師にお迎えし、死亡統計データや愛媛県における在宅緩和ケアモデル事業の成果をもとに、今後の在宅医療のあり方についてご講演いただきました。

  1. 日 時:
    令和8年(2026年)5月1日(金曜日)午後7時00分~8時30分
  2. 場 所:
    市立八幡浜総合病院 別館2階会議室
  3. テーマ:
    死亡データで見える愛媛県の看取りの実態と
    在宅緩和ケアの“目指す姿”
    ―私たちの頑張りは最期のかたちに表れている
  4. 講 師:
        愛媛大学大学院医学系研究科看護学専攻 
         地域健康システム看護学講座

    吉田 美由紀先生

<吉田 美由紀 先生のプロフィール>

●著書:生きた現場の在宅看護入門
ライフサポート社
   
●愛媛県がん対策推進委員会 委員
●愛媛県在宅緩和ケア推進協議会 副会長
●愛媛県立医療技術大学 非常勤講師
●日本在宅ホスピス協会世話人

勤務先:愛媛大学大学院医学系研究科看護学専攻 
地域健康システム看護学講座 講師
香川県出身
●1996年 愛媛大学医学部看護学科卒業
●1998年 愛媛大学医学部附属病院
 第2外科病棟勤務
●2000年 聖路加看護大学博士
 前期課程地域看護CNSコース(在宅分野)修了
●2002年 東京都墨田区にある在宅ホスピス専門の
 訪問看護ステーション
 訪問看護・パリアン 副所長
●2003年 訪問看護・パリアン 所長
 在宅ホスピスボランティア育成および
 在宅ホスピスコーディネーターなど行う
●2005年 医療法人 聖愛会
 三番町ベテル訪問看護ステーション
●2006年 同 在宅診療部
 ベテル在宅療養支援センター
 地域看護専門看護師
●2010年10月 ベテル在宅療養支援センター 所長 
●2011年4月 ベテル在宅療養支援センター所長
 兼 在宅診療部 調整役
●2013年1月 ベテル在宅療養支援センター所長
 兼 訪問看護ステーションベテル所長 
●2016年4月 ベテル在宅療養支援センター所長
 兼 居宅介護支援事業所ベテル三番町クリニック所長
●2018年4月 ベテル在宅療養支援センター所長
●2019年9月 愛媛大学大学院
 医学系研究科看護学専攻 助教
●2023年4月 同 講師 現在に至る

最期まで安心して生活できる地域づくりをテーマに、実践に根ざした在宅ホスピスの普及に力を注いでいます。

    <講演要旨>
    講演では、在宅療養・在宅看取りを支える実践として、次の2本の柱が示されました。

  1. 臨機応変な対応に基づく希望実現
     本人・家族の希望は、病状や生活状況の変化によって変わることがあります。その時々の状況を丁寧に把握し、医療・介護・福祉の多職種が柔軟に支援内容を調整しながら、本人らしい生活や希望する療養環境の実現を目指すことの重要性が示されました。
  2. 予測に基づく苦痛緩和
     身体症状だけでなく、不安や介護負担、生活上の課題など将来的に起こりうる苦痛や困難を予測し、早期から支援につなげることで、本人・家族の安心につなげることの重要性が説明されました。先を見据えた関わりが、在宅療養の継続や納得できる看取りにつながることが共有されました。
     また、講演ではこれらの実践を振り返る仕組みとして、患者さんの死亡後に支援内容を自己評価できる指標が示されたことも大きな特徴でした。
     支援者が「本人・家族の希望をどの程度実現できたか」「予測的な苦痛緩和や支援調整が十分に行えたか」を振り返り、実践を評価・改善することで、次の支援へとつなげていく考え方が紹介されました。
     愛媛県では在宅死亡率の上昇(現在、八幡浜市が在宅看取り率・愛媛県下でトップ)など地域医療の変化も見られており、こうした評価と改善の積み重ねが、質の高い在宅医療・在宅緩和ケア体制の構築につながることが期待されています。
     今回の講演を通じて、地域で暮らし続けることを支えるためには、本人・家族の希望に寄り添いながら、先を見据えた支援と実践の振り返りを継続することの重要性を改めて学ぶ機会となりました。

<職種別参加者数>

合計 41名
医師 7名 社会福祉士 2名
歯科医師 1名 ケアマネ 8名
保健師 1名 介護 1名
薬剤師 0名 その他 1名
看護師 17名 事務 3名
心理士 0名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 社会福祉士
     地域包括支援センターでの勤務は昨年の12月からで、まだまだ色々な知識も浅く、在宅医療関係の話を伺ったことも今回が初めてに近いぐらいでした。看取りに関わったことはまだありませんが、八幡浜市でもがん在宅看取りの推移が上がっていること、全体で見ても高いことを知りました。チーム全体でうまく機能しないと在宅での看取りは厳しいということで多職種での連携が不可欠であるが、チーム全体で状況、状態等を確認し合い全員が認識できていることが大事だと思いました。今後、看取りに関わる場面があれば今回伺った話を生かし実践評価尺度の活用もしていけたらと思いました。
  2. 保健師
     良いケアが実践できたか評価できるツールがあることで成果を可視化でき、次に繋がるなと思いました。
     私も不安や恐怖なく安心して住み慣れた家で、地域で、当り前のくらしが続けられる、そういう地域にしていく一役を担えたらいいなと思いました。
  3. 事務
     介護保険制度が始まった当初は、個別なサービス提供に留まり、独善的で連携も不十分でした。しかし、講演を拝聴し、職種の垣根を超えた地域単位で支える視点へと進化していこうとしている現状を知り感銘を受けました。現場の努力が地域の理解を育み、26年間で在宅看取りが顕著に増加した成果は素晴らしいと思います。約10年ぶりに医療に携わり、意識を現在の、これからの方向性に沿って適応させていき地域医療の発展に貢献したいと思います。
  4. 看護師
     今回、在宅緩和ケアの実際を知ることができ、多職種での密な関わりが行えることで様々なプラス効果が見えており、病院勤務ではありますがとても勉強になりました。
     評価シートについては、院内での取組みにも取り入れたいと思います。本当は皆「自宅で最期を」が本心であると思いますが、病院で過ごさざるを得ない方々もおられるため、私たちが病院でも「ここで良かった」と思える看護提供を行っていきたいと改めて思いました。また、在宅医療の一部に病院連携をスムーズに行っていくことも私たちが支援できる一つではないかと思いました。
  5. 看護師
     私は在宅の勤務をしたことがなかったのでとても勉強になりました。
     家族とコミュニケーションをとり、多職種と連携をとり、患者にとって満足のできる在宅での生活はとても大事な事だと思いました。
  6. ケアマネ
     吉田先生のご講演を拝聴し、大変感銘を受けました。これからの地域での活動に対し大きな勇気と指針をいただける内容でした。吉田先生が八幡浜に関わって頂いてからもう12年が経過したようで、吉田先生、中橋先生、太田様には、長年にわたり毎月、八幡浜の地域の医療・介護従事者に対して多くの助言や提案、そして励ましをいただきましたこと、心より感謝申し上げます。
     12年前を振り返ると、当時は土日や緊急時の対応も十分とは言えず、在宅医療もまさに地域で手探りの中、皆で形を作っていた時代だったと思います。吉田先生から見れば、「なぜこうならないのだろう」と歯がゆく感じられる場面も多々あったのではないかと思います。それでも常に私たちの立場に寄り添い、分かりやすく丁寧にご指導くださり、時には厳しく、時には温かく励ましていただいたおかげで、現在の八幡浜の在宅医療があるのだと感じています。この10年余りで、私たち医療・介護従事者を取り巻く環境だけでなく、患者さんやご家族の状況、家族構成、行政の支援体制など、さまざまな要因が大きく変化しました。当時の自分たちが今の在宅医療の現状を見れば、きっと驚くほど変化していると思います。今回の講演では、これからさらに変化していく地域や患者さん、ご家族を取り巻く環境の中で、私たちがどのように向き合い、支えていくべきか、その大切な指針を示していただきました。おそらく10年後には、また全く違う環境の中で仕事をしているのだと思います。しかし、どれだけ時代や制度が変わっても、「患者さんが地元でどのように生きていきたいのか」という思いを大切にする姿勢だけは忘れてはいけないと、改めて感じました。
     今回いただいた学びと指針を胸に、これからも八幡浜の地域医療・在宅医療を支えていけるよう努力していきたいと思います。
  7. ケアマネ
     今回の研修を参加して八幡浜市の在宅緩和ケア看取りの現状や取り組みの成果を解りやすい、資料、データを頂き講義を受け大変参考になりました。
     「訪問看護」が在宅看取りを支えているのは元より、多職種連携による対応により、お客様へ納得、安心、満足した最後を迎えて頂ける為に今後もお客様と向き合い、寄り添うケアが実施出来るよう心掛けていきたいです。「訪問介護」による、ご本人、ご家族への支援が安心、安楽に繋がっている事を日々実感しており、実践評価尺度を今後チームで振り返り、カンファレンスに用いていきたいです。
     八幡浜医師会、在支診のDr、病院、行政、介護保険事業所等、全ての関係機関の意識や、志が現在の八幡浜市の在宅看取りの現状となり今後の「目指す姿」で有り続けられるよう微力ですが尽力していきたいと思います。
  8. 事務
     がん在宅死亡率がコロナなど特異な状況もあったが、ここまで増加しているのは看取りに関わる方々が日々努力されているからだと感服しました。
  9. 看護師
    お 当施設でも「看取り」を行なっていますが評価は行っていません。今後、スタッフ全員で話し合いを行う必要性を感じました。ナース間では評価を行いますが、ケアマネさんたちを交えて行うようにしたいと思いました。
  10. ケアマネ
     多職種連携という言葉をあらゆる所で聞きますが、今日の説明が一番分かり易かったです。トランスティシプリナリーという言葉は初めて聞きましたが、看取りに関わらず全ての人を支えるため必要なことだと思います。他の職種を知る事、繋がりを持つこと、そのために自分の力を高めることができるよう努力したいと思いました。
  11. 看護師
     症例検討会では様々な意見やかかわりの話は出てくるが、結局どうしたらよいかが不明瞭であると感じていました。本日の講演では、これらがデータ化され指標となるものができスッキリしたというか、整理ができたような気がします。職場でも実践評価尺度を活用し、スタッフの関わりの状況の把握や現場の状況を知ることができると感じたため活用したいと思います。
  12. ケアマネ
     データから見える在宅看取り率、大変興味深かったです。何より、八幡浜市の取り組みが評価されていることがすごく誇らしく思いました。多職種連携、顔の見える関係ができているからこそ、このような結果に繋がっていると思いました。今後も在宅緩和ケア症例検討会で学びを深めていきます。
  13. 医師
     看取り目的の入院施設として大変参考になる講演でした。ケアに対する評価や振り返りが充分にできてないため、今回学んだことを今後の業務に生かしていきたいと思います。
     在宅看取りをされたご家族からのチームに対する評価も可能であれば是非実施していただきたいです。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006