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オーラル・フレイルと認知症

平成28117日(日)、
「愛つばめ会研修会」歯科の立場から升田勝喜先生の講演を聴講して

「オーラル・フレイル」とは、直訳すれば「歯・口の機能の虚弱」ですが、これは、千葉県柏市における大規模健康調査(縦断追跡コホート研究)等の結果から出された、歯・口の機能の低下を表す新しい考え方です(東京大学高齢社会総合研究機構:辻哲夫教授、飯島勝矢准教授ら)。

この研究において、高齢期において人とのつながりや生活の広がり、誰かと食事するなどといった「社会性」を維持することは、活動量、精神・心理状態、歯・口の機能、食・栄養状態、身体機能など、多岐にわたる健康分野に関与することが明らかになっています。この「社会性」が欠如していくと、低筋力や低身体機能などの「サルコペニア」(加齢性筋肉減弱症)や低栄養などによる生活機能の低下を招き、ひいては要介護状態に陥ることが懸念されています。

歯・口の機能低下は、加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)や運動器症候群(ロコモティブシンドローム)の前兆とも考えられ、「オーラル・フレイル」の予防がひいては、全身の健康に寄与することもわかってきています。

平成28117日(日)、「愛つばめ会研修会」(私も認知症専門医の立場から講演させていただいたのですが、)歯科の立場から升田勝喜先生の講演を聴講させていただきました。講演内容で強く印象に残ったのは、機能する義歯の作成でサルコペニアから脱却し、経口摂取可能となる中で、認知機能の顕著な改善を示した多くの症例をご紹介されました。私にとっては非常にインパクトのあるご講演でした。内科医の立場から、認知症ケアを指導するとき、BPSDの対応に目を向けることが多く、これまであまり口腔ケアに注意を向けることが正直なところ希薄だったことを反省させられました。

栄養面からみると、歯・口の健康への関心度が低いと、歯周病や齲蝕を放置して重症化を招き、歯を喪失するなどして口の中の機能が低下していきます。結果、滑舌が悪くなったり、食べることができないものが増えたりして、食欲低下やバランスの良い食事を摂ることができず、噛む力や舌の動き、食べる量が低下し、低栄養、代謝量の低下、サルコペニアを引き起こす要因となり、ひいては要介護状態に陥ることとなります。

まさにフレイルティサイクルに陥ってしまうことになり、認知機能の低下に拍車をかけることになります。

そのため、ささいな歯・口の機能の低下を軽視しないことが大切です。このわずかな歯・口の機能の衰えは、身体の衰えと大きく関わっているのです。

「オーラル・フレイルの予防」のためには、「社会性」「バランスの良い食事と歯・口の定期的な管理」「運動」、この3つを維持することがサルコペニアの予防になり、健康長寿につながります。

そのため、特に歯科の観点からは、歯周病やむし歯、歯を失ったときに速やかに治療を受けることはもちろん、定期的に歯・口の健康状態をかかりつけの歯科医院で診てもらい、健康状態を保つことが大切です。

(一部、日本歯科医師会ホームページより引用・改変;http://www.jda.or.jp/enlightenment/qa/