第十九回 八幡浜在宅医療研究会開催しました。

2022年(令和4年)12月9日午後7時00分~午後8時30分、八幡浜医師会館に星の岡心臓血管クリニックの藤井 昭先生をお招きして、「心不全の緩和ケア」と題してWeb配信の形式で講演会を開催しました。

<藤井 昭先生の資格、御略歴>

<資格・学会指導医>
●日本内科学会総合内科専門医
●日本循環器学会認定専門医
●日本不整脈心電学会
 認定不整脈専門医
●日本不整脈心電学会認定
 ICD/CRT認定医
●日本内科学会指導医
●心不全緩和ケアコース(HEPT)
 指導者資格取得

<御略歴>
●2003年4月1日 ~ 2004年 3月31日
 愛媛大学医学部附属病院 第2内科研修医
●2004年4月1日 ~ 2008年4月10日
 独立行政法人国立病院機構愛媛病院内科医師
●2008年4月11日 ~ 2010年3月31日
 国家公務員共済組合横須賀共済病院
 循環器センター 内科医師
●2010年4月1日 ~ 2015年3月31日
 愛媛大学大学院
 循環器呼吸器腎高血圧内科学 大学院医員
●2015年4月1日 ~ 2017年3月31日
 ブリガムアンドウィメンズ病院
 (アメリカ ボストン) リサーチフェロー
●2017年4月1日 ~2020年3月31日
 愛媛大学大学院
 循環器呼吸器腎高血圧内科学 助教
●2020年4月1日 ~2020年9月30日
 喜多医師会病院 循環器内科部長
●2020年10月1日~2021年7月31日
 医療法人ゆみの
 のぞみハートクリニック国内留学
●2021年8月1日 ~
 星の岡心臓血管クリニック 内科 医師

心不全はコモンディジーズであり、特に心不全患者が急増する心不全パンデミックの中では、地域医療・介護の場で末期心不全の患者への治療や支援、緩和ケアを提供する機会が増加しています。

近年、有望な心不全薬の登場や有効なインターベーションの増加など心不全の治療の進歩は目覚ましいものがあります。一方、超高齢者の心不全患者が増加するなかで、併存症のマネジメント、フレイル対策や栄養管理などの重要性が知られるようになり、高齢者の心不全患者のマネジメントが注目されています。

そして2010年に「循環器疾患における末期医療に関する提言」(日本循環器学会)が発表されて以降、心不全の緩和ケアが注目されるようになり、2016年に厚生労働省の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」で心不全の緩和ケアのあり方のワーキンググループが開かれ、国の会議で初めて心不全の緩和ケアについて議論されました。2018年には末期心不全患者が緩和ケア診療加算の対象に追加され、がん以外の疾患が診療報酬上初めて緩和ケアの対象として認められることになりました。

このような時代を背景に、八幡浜在宅医療研究会が主催する八幡浜在宅緩和ケア症例検討会が2022年11月で100回目の開催を迎えることから、これを記念して「第十九回八幡浜在宅医療研究会講演会」を企画することになりました。 藤井 昭先生の講演内容(PDFファイル)と講演抄録を以下に掲載しました。

PDF 心不全の緩和ケア
<講演抄録>
多死社会を迎える日本において緩和ケアが注目されております。緩和ケアとはがんの領域を中心に発達してきましたが、生命を脅かすすべての疾患で提供されるアプローチであり疾患に限定されません。そのため世界的にも非がん領域に対する緩和ケアが注目されています。

高齢化が進む日本は心不全パンデミック時代を迎え、心不全に対する緩和ケアへの早急な整備が求められています。

心不全においては、がんと異なり、最終段階において最期の時まで改善の可能性があるため、心不全に対する治療を継続する必要性があります。われわれかかりつけ医は心不全患者の最終段階を診るために心不全治療と緩和ケアを統合し提供することが求められます。

心不全は増悪と寛解を繰り返すため正確な予後予測は困難であることに認識し、適切な心不全治療を行うとともに、患者、家族、医療者を含めた周囲の人々で経過を共有し、見直しを繰り返しながら末期に至るまで患者の意思決定を支援し全人的苦痛に対処する過程が重要と思われます。

<職種別参加者数>

合計  117名
医師 11名 社会福祉士 3名
歯科医師 2名 ケアマネ 21名
保健師 10名 介護 2名
薬剤師 9名 その他 9名
看護師 44名 事務 6名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    今回在宅医療研究会講演会に初めて参加させて頂き、専門性の高い内容の講演をして頂き有難うございました。心疾患のケースの看取りのタイミングや緊急性の高い状態に対応等とても勉強になりました。セントケア訪問看護のスタッフも多く参加され、食い入るように画面を見ながら携帯で写真を撮りながら講義を受けられておられました。研修資料も後日アップして頂く事になり有難うございました。
  2. 介護支援専門員
    利尿剤の服用等について、医療の専門的な事はよく理解することが出来ませんでしたが、心不全を患う利用者さんは事業所内でも何名かおられ、やはり入退院を繰り返しておられます。正しく病気について理解し、しっかりとアセスメントを行うことの大切さを改めて考えさせられました。適切なケアマネジメンができ、少しでも安楽な予後を過ごして頂けるよう、精進したいと思います。
  3. 医師
    心不全専門医が訪問診療をしていても、看取りのタイミングは難しく、搬送先でなくなるケースが少なくないことを知り、非専門医でも心不全の終末期に関わることを必要以上に恐れなくてよいと感じることができました。
  4. 在宅医療業者
    心不全の再入院予防について、特にうっ血解消する利尿薬の作用機序から使い方など勉強になりました。
  5. 在宅医療業者
    在宅での心不全患者の緩和ケアについて、様々な分野の方が連携を取り、協力することが重要だということが分かりました。在宅医療業者としてどのようなお手伝いができるのか、考えていきたいと思います。
  6. 在宅医療機器業者
    心不全の緩和ケアについて、興味深く聴講させていただきました。

    改めて多職種連携の重要性を再認識でき、弊社の業務の中でも携われることがあるのではと思い、勉強させていただきました。弊社でもがん緩和ケア用のシリンジポンプから、栄養ポンプまで緩和ケア用のレンタルメニューを取り揃えており、より一層地域医療に貢献していきたい、と強く感じました。

  7. 在宅医療業者
    私ども業者の立場からは、心不全の緩和ケアに関して未だに関与が薄い分野となります。在宅医療機器のレンタル事業に取り組んでいる弊社として何かお役に立てればと考えております。
  8. ケアマネ
    私にとって難しい内容も多々ありましたが、先生の講演はとても聞きやすく、頭に入り易かったです。今後もがん、非がんに限らず、末期患者様の治療や支援、緩和ケアでお手伝いできる機会をもてたらと思っております。
  9. 在宅医療業者
    在宅での心不全患者の緩和ケアについて学ぶことができてとても良かったです。初めて聞くことばかりで難しいところもありましたが貴重な経験でした。
  10. 看護師
    心不全合併のがん患者さんも多く、とても勉強になりました。
  11. 医師
    高齢化が進むにつれてがん以外に心不全や腎不全、認知症など多疾患併存状態(multi-morbidity:マルチモビディティ)の方が増えています。死亡診断の場面で果たしてこの方はがんで死亡したのか、心不全が主たる原因だったのか、悩ましい場面があります。そのような視点からも、たいへん勉強になりました。ありがとうございました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006