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ポリファーマシー;高齢者の複数医療機関受診の問題点

複数の医療機関にかかることで生じる患者さんの不利益
個人が特定できないように若干内容を変えています。
症例1は、84歳男性。先日、物忘れを主訴に受診されました。 心原性脳梗塞の既往があり、またCOPDで在宅酸素療法中の方です。前立腺肥大症もありました。肝機能障害(原因については不明)も指摘されていましたが、当院の血液検査では肝機能は正常範囲でした。
脳神経外科、呼吸器内科、肝臓内科、泌尿器科、当院を加えると5医療機関を通院することになります。 服薬薬剤も優に15種類は超えて服用していました。 確信を持った幻視があり、画像検査を参考にして、レビー小体型認知症が考えられましたが、あまりの服薬数が多く、当院では積極的な薬物療法は遠慮しました。むしろ、医療機関を一つに絞り、専門的な見立てが必要になった時は、かかりつけ医の判断で専門医に紹介するといった方向性をご家族にお示しし、これまで関わりの長い呼吸器内科のドクターに手紙を書きました。
複数の医療機関にかかり、それぞれの医師から処方され、いつの間にか大量の種類の薬を飲むことになった患者さんが増えています。このような多剤大量の薬剤服薬状態をポリファーマシーと言います。
症例2は、昨日、当院への紹介で「うつ病ではないか」とのことで来院された方(72歳女性)です。
やはり10数種類の薬を服用していました。主訴は、「とにかく1日中眠たい、めまい感、頭痛」でした。消化器内科、呼吸器内科、整形外科、などから、痛みにリリカ(むしろ頭痛や、めまいの原因になりうる)、呼吸器内科で理由は不明ですが、1日中眠たいという訴えがあるのに、ベンゾジアゼピン系薬のエリスパンが毎食後に処方され、紹介元の先生からは、他薬との相互作用で眠気が起きることのある降圧薬が処方されていました。
これらのことが、患者さんの現在の状態を引き起こしている可能性を紹介元の先生にお手紙を書きました。
これらの事例は複数の医療機関にかかることで生じる患者さんの不利益が生じないよう配慮すべきことを物語っています。 現代人、とくに高齢者は複数の疾患を持っており、生命維持に欠かせない薬剤は中止できませんが、中止が可能な薬剤は極力整理するべきです。 医療や介護現場で活躍される皆さんは、このようなケースに遭遇し疑問を持ったことはありませんか?