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八幡浜在宅医療研究会講演会と在宅がん緩和ケア検討会を振り返って

医療システムの崩壊から再生へ
現在わが国では、世界に例を見ない速さで高齢化が進行しており、2005年には65歳以上の高齢者人口は全人口の約21%を占め、2013年には、高齢者人口が全人口の25%を超える「超高齢社会」に世界で初めて突入しました。
また、わが国の年間死亡数は現在110万人前後ですが、2038年にピークを迎え170万人を超えると予測されています。 私たちが医療活動をするこの八西地区はすでに超高齢社会に達しており、八幡浜市では最近10年間500人前後で推移していた年間死亡者数が平成23年には570人と増加してきております。
超高齢社会では、①多死の時代を迎えるということ。②認知症を含む慢性疾患や癌をもつ超高齢者の増加。という2つの側面があります。 高度経済成長時代に病気の検査・治療法が確定し、寿命も延び多くの方々が80歳・90歳まで生きることができる時代を迎えた今、在宅医療の現場にいて「生老病死」という人が生まれ死に至るまでの流れの中で「死は自然なもの」という死生観に変わる必要があるように感じています。
近年医療崩壊が叫ばれていますが、これはおそらく超高齢社会を迎え疾病構造が急性期疾患から慢性期疾患に変化して、現在の病院医療を中心とした医療システムでは現状に対応できなくなったため、医療システム自体が崩壊しているということではないでしょうか。 別の見方をすれば新しい医療システムの再生・再編のプロセスと捉えることができます。このことはキュア(治療医学、病院医療)からケア(予防医学、在宅医療)へのパラダイムシフトが求められているということではないでしょうか。 このような時代背景から、この八西地域での多職種連携で機能する在宅医療のあり方を、地域で展開される医療・介護・福祉に従事するすべての皆様にお集まりいただき、在宅医療についての技術的な話題も含めて勉強会を定期的に開催することを提案し、第1回の勉強会を平成24年6月29日に開催しました。第1回勉強会から 第7回講演会(平成26年10月30日開催)まで多くの医療・介護・保健分野で活躍されるすべての専門職の方が参加されました。 この間、国の在宅医療推進補助事業として八幡浜医師会に国からの補助が予算化され、現在補助事業としての講演会を定期開催することが可能となりました。
またこの事業とは別に、平成26年4月より松山ベテル病院の中橋先生、四国がんセンターの谷水先生のご指導で、在宅がん緩和ケア推進事業として、症例検討会を月1回開催してきました。第1回から第4回までは、松山ベテル病院の在宅症例について勉強しました。第5回から第8回までは八幡浜で取り組んだ在宅症例について振り返り、問題点を抽出、それについての解決法など実践的な内容で多専門職の参加で検討してきました。
WHO(世界保健機関)は1982年に癌制圧計画を拡大し、次の3点を提唱しています。
①がんの予防、②早期発見と根治的治療、③癌の痛みの治療と緩和医療
③は根治的治療の進歩にもかかわらず、癌患者さんの大多数が死亡していく現状が当分続くことへの対策であります。 1960年代にイギリスで始まったホスピス運動は、緩和医療を世界に知らしめた意義深い活動でした。当時のシシリー・ソンダース先生の活動は有名です。
緩和医療とは、治癒が期待困難なとき、生命を延長させることを目的としてではなく、患者さんとその家族に専門家チームが継続的に実践する包括的ケアであります。その目標は、患者さんと家族の双方の日々の生活の質を、可能な限り高めるために患者さんの身体的、心理的、社会的、スピリチュアルなニードを充足し、遺族となってからも必要に応じて、家族への支援に取り組むことです。
ホスピスに関連した、100前後の研究報告によると、癌終末期には癌性疼痛、呼吸困難、胸水、腹水、全身浮腫、嘔気・便秘などの消化器症状、全身倦怠感、抑うつなど、症状の数は3から18(平均は10)にわたっています。それぞれの症例で現れた症状にどのように対応するか、まだ8回の検討会でしたが多くのことを学んできました。
今後も月1回検討会を重ねていく予定です。是非、多くの先生方に参加していただきそれぞれのお立場からご指導していただければ幸甚です。