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専門家支配ということ

2014.9.30.認知症講演で取り上げた専門家支配について
専門家支配ということばがあります。サービスを選択し供給する権利が専門家にのみ認められている場合に,患者さんは画一化され体面や自尊感情の喪失を体験するといいます。
認知症で高次脳機能障害を患った患者さんは、周囲にはみえざる障害でありながら、本人もその自覚が薄れていくという特異な状況に置かれます。
したがってケアプラン、さまざまなサービスが専門家に委ねられてしまうという事態を否応なく招いてしまいます。しかも専門家ゆえの知識と善意が、そのパターナリズムを頑迷なまでに正当化しかねません。これを端的に象徴するのは、かつて横行した隔離と抑制でしょう。
支配の本質は、その人に見えない高みから、その人を見下ろすことにあります。「その人らしさ」の強調も、その人と私との 「自分たちらしさ」に目を向けない限り、見下ろすケアから自由ではありません。 「その人に、なにができるか」ではなく、「その人と、なにができるか」という水平の視点を大切にしたいものです。脳の症候学も、帰するところは「なにができるか」 を「その人と」と も に探す、ささやかな知恵で
あって欲しいと思うのです。