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抗認知症薬による薬物療法を始める前に

抗認知症薬による薬物療法の基本的な考え方
2015年5月24日付けの私のブログで、ポリファーマシーについて記述しました。

http://blog.asahimachi-gp-clinic.com/?month=201505
 2015.05.24 Sunday
ポリファーマシー;高齢者の複数医療機関受診の問題点
複数の医療機関にかかることで生じる患者さんの不利益

物忘れ外来を受け持っている立場から、初診高齢者の方で複数科の受診によるポリファーマシー状態の方が多くおられます。物忘れからくる服薬アドヒアランスの問題(服薬忘れや過剰服薬など)から、なるべく服薬数は最低限度の数に、しかも1日1回で完結する服用内容になるよう工夫をしています。

処方薬剤数と認知機能障害の可能性について検討した文献を紹介します。
認知症診療で気を付けていることは、抗認知症薬を投与する以前に、薬剤に起因する認知機能障害の可能性について検討することです。

薬剤起因性の認知障害は決して稀ではありません。特に抗コリン作用がある薬剤は、認知機能障害が出現しやすいです。また薬剤数が多いほど認知機能障害のリスクが高まります。

Larsonら(以下に文献名を記載)によれば、薬剤数が2~ 3剤では2.7倍に、4~ 5剤では9.3倍に、6剤以上では13.7倍に上昇すると報告しています。最近は副作用の軽い薬剤が次々と上市されているため, この数値をそのまま当てはめることはできませんが、抗認知症薬を投与する前に、可能な限り併用薬剤数を減らすことは重要です。

Larson EB,et al:Adverse drug reactions associated with global cognitive impairment in elderly persons.Ann lntern Med, 107:169-173, 1987,