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認知症を治療するとは?

治療開始1年後の抗認知症薬の服薬継続率は半数に満たない
国民の2人に1人が罹患し、死亡原因の第2位を占める「がん」では、本人の意思を尊重し「在宅医療」や「看取り」の環境は整いつつあります。しかし一方で、軽度認知障害(MCI)を含めると65歳以上の約3分の1人が対象になる認知症においてはどうでしょうか?
がんと認知症、いずれも人生のまとめの時期において、本人にも家族にも多大な影響を与える”2大国民病”であるにも関わらず、認知症支援の在り方はずいぶんと出遅れています。

胃瘻などの医療技術の進歩が”天寿”より”長寿”を追究するなかで、意思決定が困難となった高度認知症状態では、最期は家族の意思が反映されることが多く、認知症の治療は「何のため」「誰のため」に行われるのか?自問自答することが時にあります。

近年、抗認知症薬が多数発売され、認知症治療は大きな進歩を遂げています。しかしながら、一方で、治療開始1年後の抗認知症薬の服薬継続率は半数に満たないとの報告があります(Watanabe N,Yamamura K,Suzuki Y,et al : Pharmacist-based Donepezil Outpatient Consultation Service to improve medication persistence. Patient Prefer Adherence6 : 605-611, 2012) 。
実際に、近医で早期から治療を開始していたにも関わらず、自己中断し、進行してから当院の「もの忘れ外来」受診するケースに遭遇します。

治療を中断した多くが「よくならない」からという理由です。これは治療の意義が充分に説明されていなかったことにあると思われます。「とにかく薬を飲みましょう」「薬を飲むことで進行を遅らせましょう」「とにかく続けましょう」という医療者側の言葉は、本人や家族にとっては「見えない”ゴール”」に向かって走り続けることを強いられているように感じるのではないでしょうか?42.195㎞マラソンも、ゴールがあるからこそ頑張ることができるのではないでしょうか。

アルツハイマー博士