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近代ホスピスの母と言われているシシリー・ソンダース先生について

近代ホスピスの母:シシリー・ソンダース先生
平成26年4月18日第1回在宅緩和ケア症例検討会が開催され、聖べテル病院の中橋先生、西久保先生に症例提示とレクチャーをしていただきました。 最後に私が、近代ホスピスの母と言われているシシリー・ソンダース先生について紹介しましたが、十分な説明になっていませんでしたのでこのブログでシシリー・ソンダース先生について改めて御紹介します。
セント・クリストファー・ホスピスの創立者であるシシリー・ソンダース先生は看護師でした。腰痛がひどくて、当初はソーシャル・ワーカーのようなことをやっていたそうです。その後、39歳で医師になり、1967年(48歳)にホスピスを開設し、2005年に亡くなりました。「近代ホスピスの母」と言われています。
彼女は具体的に何をしたのでしょうか。セント・クリストファー・ホスピスの前にもホスピスの原型はありましたが、このホスピスで一番特徴的なのは「モルヒネの積極的使用による疼痛コントロール」です。科学的根拠に基づいて痛みをコントロールしたのです。また、身体的な痛みのみならず精神的な痛みを重視して、いわゆる全人的苦痛(total pain、total suffering)というアプローチを始めました。すなわち、cure system一辺倒の状態からcare systemを導入する必要性を説いたのです。 彼女は「私が癌の末期になったときに望むのは、牧師が話を聞いてくれたり祈ってくれることでもないし、精神科医が何を聞いてくれることでもなくて、正確に痛みの原因を評価、診断して、治療してくれること」だと言っています。要は、身体症状の緩和がいかに大事かを語っているのです。精神症状があるときには、必ずベースにある身体症状がきちんと緩和されているかを評価することが重要です。まず身体症状を緩和するのが大事だということです。
画像に、シシリー・ソンダース先生が唱えたホスピスの5原則を示しました。まず、患者を一人の人格者として扱うことです。これは最近の医学教育では当然のことと思います。我々が研修医の頃は、人を診ずに病気を診る、患者というよりは病人、病人の持っている病気を診るという風潮がありました。その他、苦しみを和らげる、不適切な治療はしない、家族のケア、死別の悲しみ(いわゆるグリーフケア)、チームワークを挙げています。今では当然のことばかりですが、当時としては非常に画期的なことを言っていたのです。