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高血圧ガイドライン:JSH2014をめぐって

「日本人間ドック学会、健康基準を緩和」は事実誤認
日本人間ドック学会などが「健康」とされる範囲を緩和した新基準を発表したかのような一部報道がありましたが、同学会はそうした事実はなかったとのことです。報道は「基準範囲」と「疾患判別値」を混同し誤解を与える可能性があり、私たち医療現場ではいささか患者さんが混乱しており、過去に脳梗塞の既往のある高血圧症の方が降圧薬は一度やめてみたいなどと言われたりする事例が多くなりました。
基準範囲とは、国際的に認められている方法で、一定の条件を満たすいわゆる健康人(基準個体)をある集団から抜粋し、その試料を検査して測定値を得て設定するものです。すなわち、今回の調査対象約150 万人の中から、既往歴、現病歴、検査値などで異常がないとされた個体を選別し、その後に他の関連検査項目における異常値の有無で二次除外を施行したものです。その数は検査項目で異なりますが、最終的には約1 万~1 万5 千人の健康人の集団の検査値です。
これに対し、健診などに使用される臨床検査の判断値は、基準範囲とは異なり疾患の疫学的研究によって得られた成績を基に、専門学会などで設定されたものです。
したがって両者は互いに異なるものですが、一般的には基準範囲イコール正常値あるいは疾患判別値と理解されるケースがしばしばあります。そのため、基準範囲が一人歩きし、疾患の診断や治療に影響を与える可能性があります。 ここで設定した基準範囲はあくまで上記定義に基づいて、人間ドック受診者の検査データを用いて予防医学的な観点から設定したものである事をよく認識する必要があります。