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在宅医療・ケアと心身医学~八幡浜在宅医療研究会の10年の歩み~

在宅医療・ケアと心身医学

~八幡浜在宅医療研究会の10年の歩み~

八幡浜在宅医療研究会を平成24年5月に立ちあげて今年で10年目を迎えました。立ち上げたときは、「多職種連携協働」という概念すらない状態で、それぞれの職種がばらばらに活動しているといった状況でした。今では、多職種が顔の見える関係になって「多職種連携協働八幡浜モデル」が確立してきています。

プライマリ・ケアの理念を基礎とした在宅医療・ケアの役割は、①在宅で療養される方に最適化した医療を提供すること、②予防的な医学管理を通じて入院のリスクを最小化すること、③最後まで住み慣れた場所で生活が継続できるよう支援すること、があげられます。これらの実現のために、令和3年11月現在で、18回の講演会と88回の在宅緩和ケア症例検討会(毎月第1金曜日)を開催してきました。

この10年を振り返って多職種で学んできた多くのことを皆さんがどのように感じているのか、また今後の取り組みの参考にするため、令和3年2月に八幡浜在宅医療研究会メーリングリストに登録している約100名の方々に、心身医学的な立場から本文の終わりに掲載しました15項目からなるアンケートを実施しました。85名の方からご回答をいただきました。その中で緩和ケアのトータルペインのうち「身体的な痛み」については多くの方が自信をもって関われているのに対して、「精神的な痛み」、「社会的な痛み」特に「スピリチュアルな痛み」に関してはまだまだ充分に対応することが出来ていないと回答された方が多くありました。

アンケート結果から見えてきたことは、それぞれの職種が患者様の生活全体を支援する時、制度上与えられた時間内でこなさなければならず、この視点からも多職種が情報共有し、それぞれの職種の実践内容の総和をふまえbio-psycho-social-spiritualケアの充実を図る必要があるということでした。そして、看取りに伴う心身医学的課題として、人生の最終段階にあるという共通認識を持つこと、それは、生活や人生を諦めることではないこと、支持療法、緩和医療が十分に提供できること、などに集約され、重要なのは運命を受け入れたうえで、それでも前向きに生きられる、そんな支援を提供できることであります。そのためには、心身相関を理解しながら、高度なコミュニケーションスキルに磨きをかけることが重要と思われました。

これらの結果と考察についての詳細は、2021年(令和3年)7月10〜11日(土・日)に開催されました第62回日本心身医学会総会(香川県高松市)四国地方会との合同企画・シンポジウム「地域における心身医療」で森岡がシンポジストとして講演しました。
発表スライドと講演の基礎となった多職種の皆さんへのアンケート内容とその集計結果につては、以下のURLに掲載しております。

在宅医療 ・ケアと 心身医学 ~八幡浜在宅医療研究会の 10 年の歩み~

在宅医療・介護に関するアンケート

<在宅医療・介護に関するアンケート>
1) 心身医学の用語について

①心身相関 という用語をご存知ですか?

2) 在宅看取りについて

① ご自身の経験から 終末期患者様を家で看取ることについて事例ごとに程度の差

はあると思われますが良かったと思いますか?

②在宅看取りについて、看取りまでの予測される患者様の状態変化について、事例ごと

に程度の差はあると思われますが、関わる他職種との情報共有など充分に連携できていましたか? 

3) 苦痛緩和について

① トータルペインの緩和:「患者様は全体的に見て安らかな事例が多かったですか?」

② 身体的痛み緩和:「患者様の身体的な痛みは和らいでいる事例が多かったですか?」

③ 精神的痛み緩和:「心の痛み苦しみは和らいでいると見られましたか?」

④ 社会的な痛みの緩和:「患者様の直面する苦しみは和らいでいると見られましたか?」

⑤ スピリチュアルペインの緩和:「患者様は死に際して心や魂の苦しみに救いがあると見られましたか?」

4)看護やケアについての素朴な疑問

①在宅で患者様の病気のケア以外に心や社会的なケアもする必要はあると思いますか?

②在宅でケアをする際に自分がすべきケア以外に患者様の心理的なケアをしていますか?

    ③在宅でケアをする際に患者様が社会的に役割を果たせるような支援をしていますか?

④病気を含めて、患者様の生活全体を支援しようとすると自身の与えられた時間内

で支援することは可能ですか?

⑥ 患者様が希望されても自分で適切なケアや声掛けが出来ないと思ったことがあ

りますか?(死にたい、お金が無いから支援が受けられない、家族や手伝ってくれる人がいなくて寂しい、

などの相談があった時)

⑥ケアを通して自分で解決できない問題に当たった時にどのように解決しますか?

また相談するのはどなたですか?

⑦ 自分のケアチームにおいて臨床心理士や心理学を学んだスタッフが居てくれれ

ばと感じた事はありますか?