第70回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜市保健福祉総合センター4階 会議室
  2. 日時:令和2年2月7日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  50歳代前半 男性
  #1、左臀部有棘細胞癌
  #2、肺転移

<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会コーディネーター:清水 建哉さん
  ②愛媛大学医学部付属病院
   形成外科 眞田 紗代子先生
  ③在宅主治医より症例報告
   矢野脳神経外科;矢野 正仁医師
  ④訪問看護の経過について
   訪問看護ステーション・Setsuko:菊池 世津子看護師から
  ⑤相談支援専門員からの報告
   相談支援事業所地域活動支援センターくじら
   相談支援専門員:櫻田 志穂さん
<症例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
<議論の要点とコメント>

Facebook「えひめ在宅緩和」より(許可をいただき転載しました)
吉田 美由紀 先生の御厚意に感謝申し上げます。
『今日は八幡浜症例検討会です!
今日は愛媛大学のDrも参加してくださっていました。
今日の症例は有棘細胞がん肺転移の症例でした。
数十年前に脊髄損傷となり自宅療養中に発病。
もろもろの治療の後、本人の強い希望で在宅療養を選択。
介護者は母親。
これまで母と2人で暮らしてきた。
退院を機に、介護サービスの導入を進めたかったが、必要ないとの返事…
在宅スタッフは、本人と母親の意向を尊重しながら関わった。
退院後、暫くして肺転移が進行。
ひどい咳が出始めた。
在宅医はリン酸コデインを処方。
しばらくすると呼吸困難感が出現し、在宅酸素を導入。
しばらくはSpO2の低下なく、自覚症状もなく経過した。
安定していると思っていた矢先、呼吸困難が増強し、座って布団を抱くようにかがまないといられない程苦しくなった。
オプソ(モルヒネの即効型水薬)の処方で、症状緩和。(モルヒネは呼吸困難感に効果があります)
しかしみるみる呼吸困難感が増強。
症状緩和が追いつかなかった。
ある深夜に緊急電話。訪問看護師が訪問すると見るに耐えないほど苦しがっていた。
訪問看護師は、不安いっぱいな母子を置いて帰れず、深夜から明け方まで滞在。
何とかやっとオプソを飲み、その後に、患者さんは息を引き取りました。
訪問看護師は、治療病院の連携室に細やかに患者の様子を報告していました。
おかげで治療の主治医は看取り直前に患者に会う事ができました。
そのとき、患者さんはすごく喜びました。
治療が終了しても、これまで治療に携わってくれた主治医とのつながりを感じることができ、とっても安心されたと思います。
これらの経過を発表したスタッフは皆、目に涙を浮かべていました。
もっと早くにモルヒネを導入していたら…
病状の判断が難しかった…
本人と母親はいらないと言ったが、ヘルパーなどのサービスを導入できていれば、少しでも楽にしてあげられたのでは…
フロアは鎮まりました。
関わっているその時、みんな全力を尽くしていました。
患者と家族を思い、精一杯関わりました。
発表を聞き、患者家族とって、こんなにあったかくて心強いチームはなかったのではないかと思いました。
今日、振り返る中で見えた課題、改善策が、患者さんからのプレゼントだとしたら、この経験からの学びを次に関わる患者さんへのケアに生かすことこそが、いただいたプレゼントへのお返しだと思いました。

今日議論されたこと
「モルヒネの導入の仕方について」
●咳の症状が出現した時に、オプソ(即効型モルヒネ水薬)を導入しても良かったのではないか。
●頸髄損傷で活動量が少ないため、呼吸困難感の自覚が生じにくい。在宅酸素導入の時期に、長時間効果のある徐放型モルヒネを導入するのはどうか。
●セレネースなどの精神安定剤を併用する事で、不安による呼吸困難感の増強を減らす事もできたのではないか?

「在宅サービスの導入について」
●頸髄損傷を受傷してから長年の間、親子で生活してきた背景を考えると、外部サービスが入ることが、負担になる事もある。これまでの生活を変わらず継続したいと思うかもしれない。介護生活が大変というより、気持ちの揺れの方が大変だったかもしれない。
訪問看護師がしっかり気持ちの揺れをサポートしていた。それで十分だったかもしれない。

「残された母へのグリーフケア」
息子の介護をする事が生活の全てだった。急に介護のない生活に戸惑う気持ちを語った母。でも介護の必要な息子を自分が看取った事に安堵する母の気持ちもあった。
息子がいなくなった今、少しの刺激で涙が溢れ出す。買い物にも一人で行けない。
これまでケアのスタッフが訪問してくれていた。今は誰も訪問してくれなくなった。
グリーフケアに伺い、そんな気持ちを聞くことができたそう。
心が癒えるまで、長い長い時間がかかりそうです。関わったスタッフが、「忘れてないよ」と、時々、連絡を入れていけると良いね。
そんな話し合いをしました。』

<職種別参加者数>

合計  59名
医師 8名 社会福祉士 4名
歯科医師 0名 ケアマネ 10名
保健師 6名 介護 4名
薬剤師 1名 その他 1名
看護師 24名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 看護師
    治療、入院から在宅緩和ケアへの切り替えがある中で、生活やご本人、お母様の意見を重視し、継続したケアがどのように行われたか知ることができました。退院後、支えてくださる方々の力の大きさを感じました。生活を支え、長期にわたっての支援、残された家族のケアを考えておられることにとても力強さを感じました。
  2. ケアマネ
    各専門職の方々が、どの時期にどの様な関わり方をされたか、どの様な考えを持たれたのかを分かり易く知ることができました。生理的、身体的な必要性だけでなく、本人や母親の気持ちを慎重しながら丁寧に関わられた様子を知ることができました。
  3. 看護師
    関わっていただいた医療関係者の方々と一緒に振り返ることができ、とても貴重な経験をさせていただきました。
  4. 相談支援専門員
    定期的に症例検討会が開催され、様々な職種で考える機会がある事を初めて知りました。自分自身の関わりの中でも改めてチームで支えていきたいと感じました
  5. 福祉用具専門相談員
    家族、母と子の繋がり、絆を強く感じ考えさせられる症例でした。本人の意志、家族の意志を尊重され、関わってきたそれぞれのスタッフの方々の思いが伝わってきました。残された家族へのケア、気持ちを支えることを色々な方向から考えることは、今後学んで、感じていきたいと思います。
  6. 看護師
    患者様との関わりが病院で長かったので、参加させていただきました。事故の詳しい背景、また退院後のスタッフの方との関わりを知れて感謝しています。
  7. ソーシャルワーカー
    急性期の病院から在宅へ移行して亡くなるまでの在宅スタッフのご苦労が伺え、大変参考になりました。在宅の方々と、これからもっと適切に繋いでいけるようにしたいと感じました。素晴らしいチームに支援いただけたこと感謝しています。
  8. ケアマネ
    グリーフケアがなかなかできにくい現状ですが、少しでも行っていきたいと思いました。田舎はできることが限られているので大変ですが、皆さんすごいチームワークで頑張っておられとても勉強になりました。
  9. 保健師
    サービスの入り方、本人、家族への関わり方は一人一人違うことを改めて考えさせられました。対象者の生活を大切に守りながら関わりたいと思いました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006