第39回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成29年6月2日(金);午後7時~8時30分

    <症例>76歳、男性
    <傷病名>前立腺がん肉腫
    <発表者>
     八幡浜医師会・清水コーディネーターから家族背景などについて
     主治医・市立八幡浜総合病院:泌尿器科・武田医師より症例経過について
     病院看護師の立場から、緩和ケア認定看護師・大塚看護師より
     訪問看護ST・Setsuko・菊池看護師より それぞれ看護師の立場から
     八幡浜消防署・阿部救急救命士指導者:適正な救急車の利用の仕方について

「救急車の上手な使い方」をPDFで掲載しました。(クリックでPDFを開きます。)

それぞれご発表いただきました。

    <症例サマリ>

     平成28年5月尿閉で近医受診。PSAは正常範囲で、前立腺肥大症の診断で薬物療法を開始継続した。しばらくは薬物療法にも反応していたが、同年9月に尿閉が再発。手術療法の適応あり、市立八幡浜総合病院泌尿器科に紹介された。
     同年9月12日入院、翌9月13日に手術(HoLEP:ホルミウムレーザー前立腺核出術)実施。病理検査の結果は、carcinosarcoma of the prostate(前立腺がん肉腫)だった(確定)。
     この時点で明らかな転移はなく、病理結果を受けて追加手術「膀胱前立腺全摘術」(場合によっては、骨盤内蔵全摘術の可能性もあり)が必要と考えられ本人とご家族に説明された。主治医は手術療法の説明を詳細に説明したが、本人とご家族の決断がつかず経過した。
     手術について本人とご家族が決断する10月中旬、体調不良のため受診できなかった。11月に入って明らかにがん肉腫は進行肥大しており、手術療法の適応を失する段階まで進展。11月2日の時点で、緩和ケアへの移行となった。
     この時点で右臀部の痛みがあり、左精巣上体尾部に、母指頭大のしこりを蝕知した。痛みに対してカロナールから処方を開始。11月15日、オピオイドが追加処方された。11月18日介護保険での認定申請の依頼があった。
     本人の希望は、積極的な処置は希望せず最後まで自宅で療養したいとのことだった。急変時は、紹介元診療所で対応可とのことだった。11月18日に清水コーディネーターから、主治医からの指示もあり、訪問看護ST・Setsuko:菊池看護師に、在宅訪問看護の相談と依頼が行われた。
     翌11月19日(土)42℃の発熱があり、妻が救急車を依頼した。救急隊の判断で宇和島徳洲会病院に搬送された。肺炎と敗血症の診断で集中治療を受け11月30日同院を退院し市立八幡浜総合病院主治医に受診した。終日ベッド上で過ごす状態とのことだった。
     近親者の強い入院希望があったが、三男さんは自宅で看ますとのことだった。その後訪問看護師と市立八幡浜総合病院治療チームとの緊密な連携で在宅ケアを継続した。オピオイドの処方も工夫され、ほとんど痛みなく過ごされていた。
     12月10日(土)腹部膨満、バルンカテーテルから尿排出なく、救急車で主治医を受診した。カテーテルが引っ張られて肉腫に入り込んでおり排尿が妨げられていた。12月25日(日)膀胱タンポナーデで救急受診。
     バルン再挿入と膀胱洗浄に関して膀胱留置カテーテルを奥まで挿入して行う必要があった。その後、状態像は悪化傾向にあったが、症状緩和はほぼ良好に達成されていた。遠方在住の家族との対面もでき、平成29年の正月を大家族で迎えることができた。
     平成29年1月4日受診。それから、3日後の1月7日に穏やかに永眠された。

    <議論の要点>

  1. 日本で18例目となるめずらしい症例であった。
  2. 治療チームが緩和ケアチームとしての役割も果たし、訪問看護ステーションとの連携でご本人とご家族を支えた。
  3. 経過中救急車で搬送されたエピソードがあったことについて。
    ソーシャルワーカーの立場から、病院からの退院時「妄想」と言われるくらい何かあったとき誰に連絡をすれば問題が解決し、救急車を呼ばずに済むかをご家族に想像・理解してもらえるように説明している。
    今回、清水コーディネーターに主治医から相談があった翌日に、肺炎を発症し動転した家族が救急車を呼んでしまった。カンファレンスなどで、多職種と家族との情報共有の機会を持ち救急車を呼ぶ意味について話し合うことが重要。
  4. 本症例のように、尿閉の時、泌尿器科的な特殊な医療処置が必要になった時の連携方法について。
  5. 八幡浜消防署から説明のあった救急車の適正な利用に関連して、アドバンス・ケア・プランニング(将来の意思決定能力の低下に備えて、患者さんやそのご家族とケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合う課程(プロセス))で、救急車の中での心肺蘇生と関連して、DNAR(患者さん本人または患者さんの利益にかかわる代理者の意思決定をうけて心肺蘇生法をおこなわないこと)について。

<職種別参加者数>

合計  65名
医師 8名 社会福祉士 4名
歯科医師 2名 ケアマネ 20名
保健師 2名 介護 7名
薬剤師 0名 その他 0名
看護師 20名 事務 2名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 歯科医
    初めて参加させていただきました。端の方で少しずつ勉強させていただきます。ありがとうございました。
  2. 歯科医
    いつも大変お世話になっています。急患の対応で遅れて申し訳ありません。皆様の温かいチーム医療のひとつひとつにとても勉強になりとても勉強になり、また反省点もありました。心から感謝いたします。
  3. 保健師
    消防署からの資料をいただきたいです。
  4. 看護師
    今回は病院から在宅に移行する際のご家族の関わりを学ぶことができたように思います。病院でも在宅と連携する際に活用できればと思います。
  5. 看護師
    日本で18例目、疾病の理解や治療も不明な症例、学ばなければならないことはありました。いつも訪問看護では何ができるか知識を深めること以外、ケアはその時出来ることを思案実施することのみで特別なことはできません。半分ケア半分傾聴迷いながらケアとご家族とのかかわり信頼関係を持つことなど大切なことを実感しました。
    救急車の役割も改めて知ることができました。病院で実施されている最新の治療システム、連携できる医療体制を作るための緩和ケアがその発信場所になるといいと思います。
  6. 看護師
    前立腺がん肉腫と特異な症例で、本人家族との関わり経過がよく分かりました。
    空調が効かずとても暑かったです。ほどほどの調整ができたらと思います。
  7. ケアマネ
    初めて参加させていただきました。ケアマネとして経験浅く今後たくさんの事例に係ると思います。ひとつひとつの事例をケアとしての関わり方家族との関わり方を学んでいきたいと思います。今日は勉強になりました。有難うございました。
  8. ケアマネ
    色々な機関や人たちとの関わり方を知ることができました。今後係わりの参考にさせていただきます。
  9. ケアマネ
    稀な症例でありましたが限られた時間のなかで信頼関係を構築され、ご本人だけでなく家族の不安な気持ちに寄り添い多職種で係ってご本人の希望通り家で過ごされたことがよかったと思います。
    急変時、救急車を要請せずあらゆる想像力で無駄のない効率的な方法でキチンと線をつないでおくことが大事だと思います。
  10. ケアマネ
    処置の難しい利用者の対応を聞かせていただけとても勉強になりました。有難うございました。
  11. ヘルパー
    難しい問題だと思います。利用者さん本位で連携が取れることが一番なのだと思いました。
  12. ヘルパー
    今回初めて研修に参加してみて初めて聞く病名で驚きました。前立腺にも肉腫ができると思いませんでした。肉腫になると余命が短くなるためやはり奥様などキーパンソンとなる人を中心に周囲の支えがとても大切なことだと思いました。自身も最近祖母の看取りを経験して痛感しました。今後もヘルパーとして働くことで利用者中心に家族の心のケアにも注意して支援していきたいです。
  13. 事務員
    曜日、時間帯別に存在する救急搬送の一覧とその理由を知りたい。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006