第40回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 平成29年7月7日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>85歳、女性
    <傷病名>胃癌、肝転移
    <発表者>
      八幡浜医師会・清水建哉コーディネーターから家族背景などについて
      主治医・矢野脳神経外科・矢野正仁医師より症例経過について
      訪問看護ST・Setsuko・菊池世津子看護師より

それぞれご発表いただきました。

    <症例サマリ>

  1. 既往歴:高血圧、脂質異常症、貧血
  2. 病歴:平成X年3月17日貧血精査にて西予市民病院を受診。
    胃癌、肝転移(StageⅣ )と診断。
  3. 手術不能にて4月13日よりTS-1投与開始。以後4週服用、2週体薬を続ける。
    平成X+1年8月24日 胃ステント挿入
    平成X+2年1月5日 TS-1終了
    平成X+2年1月7日 右不全麻痺出現、脳転移を疑われ入院。脳出血と診断。
    2月21日までリハビリし退院する。

○在宅医の診療経過

診察日 診療形態 活動(PS) 疼痛 食欲.食事 嘔気・嘔吐 その他
2月23日 外来 車いす(2) (-) 普通食 (-) カンファ
3月4日 訪問診療 伝え歩き(2) (-) 普通食 3/1に少量嘔吐 下肢浮腫
3月18日 訪問診療 伝え歩き(2) (-) 普通食 (-)  
4月8日 訪問診療 ベッド上(3) (-) 食欲低下 3/25多量嘔吐  
4月22日 訪問診療 ベッド上(3) (-) 食欲低下 4/18.22嘔吐  
5月6日 訪問診療 臥床(4) (-) 流動食のみ 嘔気(+) 黄疸。腹水
5月20日 訪問診療 臥床(4) 圧痛あり 流動食のみ 5/16,19,22 黄疸。腹水
5月25日 緊急往診 死亡 5/23;腹痛 絶食 嘔吐 5/24オプソ

問題点;嘔吐に対する対処について
末期に麻痺性イレウスを考えサンドスタチン持続皮下注を行ったが効果は不明、より良い対処方法は?

    <議論の要点>

  1. 症例は、胃癌であり、経過中の嘔吐はイレウスによるものか否かについてアセスメントする必要があったのではないか。
  2. 一般にイレウス状態になる場合、大腸がんなどの下部消化管の閉塞による場合が多く、胃癌の場合は上部消化管であり、胃・十二指腸の閉塞に原因した嘔吐と考えるのが妥当ではないか。
  3. しかしながら、サンドスタチン治療で、嘔吐が減少するなど一定の効果あったこと、家族やご本人がサンドスタチン治療を受けることで、精神的な安心感を得ることができた。
  4. 治療のポイント

    1)機械的な完全閉塞の場合、手術の可能性を考える。ただし、予後、全身状態、癌性腹膜炎の有無などを考慮し、必要であれば外科医にコンサルトする。本症例では、予後や全身状態から手術適応はなかったと考えられる。

    2)嘔吐が大量の場合、とりあえず胃管を挿入することを考慮する。

    3)嘔吐量が多い場合、腹水が貯留している場合、輸液量の減量を考慮する。

    4)腫瘍、炎症による痛みの場合、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、オピオイドを、蠕動痛があれば抗コリン薬を投与する。

    5)完全閉塞で腸液が多い場合、サンドスタチンの投与を考える。

    6)デカドロンなどのコルチコステロイドの可能性を考える。

    7)イレウスの悪性サイクルの病態

(総合診療ブックス;誰でもできる緩和医療;医学書院より)

消化管閉塞が起きると、腸管の拡張が起こり、腸管内腔の表面積が増大し、腸液の分泌の亢進が起こる。するとさらに腸管の拡張が起こり、悪循環となる。そして腹痛などの症状が出現する。サンドスタチンは腸液の分泌を抑制することにより、この悪循環を断ち切ると考えられる。

<緩和ケア医療におけるサンドスタチンの用法・用量>
進行・再発癌患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善:オクトレオチド(サンドスタチン)として1日量300μgを24時間持続皮下投与する。なお、症状により適宜増減する。

<職種別参加者数>

合計  72名
医師 9名 社会福祉士 3名
歯科医師 1名 ケアマネ 14名
保健師 5名 介護 9名
薬剤師 4名 その他 4名
看護師 21名 事務 2名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 薬剤師
    医療機関の相互の連携がとても大切だと感じました。ありがとうございました。
  2. 看護師
    毎回多職種の方々との関わりを考えさせられる時間です。
  3. 看護師
    上部と下部どこに閉塞があるかということに着眼すること、着眼することでアプローチ方法の違いを学ぶことができました。
  4. 看護師
    多職種のサポートの現状や努力、またアドバイスを聞かせていただき今後に役立てたいと思いました。
  5. 看護師
    今回の症例で訪問看護に於いて患者さんに対しての対応、細かく指導して下さり有り難うございました。
    介護者に対してのコミュニケーションの仕方など大変勉強になりました。
    Dr、訪問看護師、ヘルパー、ケアマネとの連携を密にすることが大事であることも勉強になりました。
  6. 看護師
    在宅ケアにおける訪問看護での対応の大切さがわかりました。
  7. 不明
    ザ、チーム在宅という症例だったと思います。
  8. 看護師
    腹水がある時はモルヒネを使って、嘔吐があれば服用でなく坐薬を使うなどモルヒネの使い方、Drの考え方がよく分かり勉強になりました。ご主人や家族との関わり、ヘルパーさんの声掛けなど顔をなじみになる事の重要性、ヘルパーさんの声掛け言葉かけとても勉強になりました。
  9. ケアマネ
    ヘルパーさんの関わり印象深かったです。
  10. ケアマネ
    看取りの現場での実体験の現状が書面より感じることができたことと同時に訪看さん仕事に頭が下がる思いがしました。
  11. ケアマネ
    普段あまり聞くことができない医療情報を聞くことができ大変勉強になりました。
  12. ヘルパー
    寄り添うことの大切さ、自分たちの役割を再確認することができました。
  13. ヘルパー
    医療について詳しく学ぶことができたので良かったです。
  14. ヘルパー
    医療について詳しく学ぶことができたので良かったです。
  15. 作業療法士
    実際訪問リハビリで関わらせていただいた患者さんでし多職種の方々の係わりが聞けてとても勉強になりました。作業療法士として、本人、その家族の方とどの程度まで関われるのか今後の検討課題として励みたいと思います。
  16. 事務
    次回の時には、訪問看護の経過の内容に実際にあったヘルパーさんの詳しい対応の仕方や心情等も載せてもらえたらいいです。さまざまな意見があり患者様の対応を考えさせられました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006