第50回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年5月16日(水);午後7時~8時30分
  3. <症 例>71歳、男性
    <傷病名>右肺門部肺癌
    <発表者>
      八幡浜医師会・清水建哉コーディネーターから家族背景などについて
      旭町内科クリニック:森岡 明医師より症例経過について
      八幡浜医師会訪問看護ステーション・松平 直美看護師より

それぞれご発表いただきました。

    <症例サマリ>

    <既往歴>

    平成14年胆のう摘出(胆石症)。平成16年躁うつ病、その後被害妄想や嫉妬妄想が出現し、非定型精神病の診断で精神科通院治療を継続した。薬物治療で精神科的には寛解しており、日常生活においては全く支障はなかった。当時より、主治医森岡が糖尿病、高血圧症について内科的に関わった。平成21年8月、早期大腸癌が見つかり、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection;内視鏡的粘膜下層剥離術)にて治療。大腸癌の再発はなかった。

    <病歴>

    糖尿病、高血圧症で外来通院中、平成28年1月の定期的胸部レントゲン検査で、右肺門部腫瘍を認めた。県立中央病院へ紹介。右肺門部肺癌の診断で治療が開始された。平成29年7月に治療に反応しなくなり、右胸水も増量。8月7日、緩和ケアを主体に在宅医療の導入となった。

    <平成28年3月~平成29年8月7日まで外来通院>

    この間、県立中央病院にも通院し、短期入院を繰り返しながら化学放射線治療、輸血などを実施された。その後、抗癌治療が無効となり、在宅緩和ケアとして関わることになった。癌発見時より、精神科からの処方も当院で包括的に処方することになっていた。

    <議論の要点>

  1. 在宅での経過は緩やかなもので、ゆっくりとした時間が過ぎた。臨終1週間まえくらいより容体が急速に変化し、平成29年12月27日午前5時10分にお亡くなりになられた。
  2. 経過中、呼吸困難感やがん性疼痛についてはほぼ完全に緩和できた。
  3. 訪問看護ステーションと旭町内科クリニックの看護師のきめ細かい看護がなによりもご本人・奥様のスピリチュアルな側面での支援になった。
  4. 平成16年から主治医として関わってきた患者さんで、気心も知れており性格や家庭での生活ぶりなどは十分知った患者さんだった。その点でも医療者と本人・ご家族との信頼関係がとれており、医療者側もストレスをそんなに感じず関わることができた。
  5. 長期に一般診療外来で関わってきた患者さんのケースでは、癌を発症したとき、在宅診療の場で癌治療医やコ・メディカルスタッフとの連携がとりやすく、患者さんも安心できるのではないだろうか。

<職種別参加者数>

合計  57名
医師 7名 社会福祉士 2名
歯科医師 1名 ケアマネ 12名
保健師 6名 介護 5名
薬剤師 5名 その他 1名
看護師 17名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 薬剤師
    薬局として何をすべきか、試行錯誤の毎日です。
    患者さんの話を聞く事から始まり、本音で話をしてもらえるよう努力する事より始めています。
    短い時間の関わりとなるため、薬の知識の提供だけでなく、普通の何気ない毎日を自然体で過ごしていただける事を目標として努力して参ります。
  2. ヘルパー
    息子さんが葬儀会社に勤務され、在宅緩和ケアの理解があり、信頼される森岡先生に診療して頂いたことで安心できていたのだと思います。
    安定期が3カ月あり穏やかな最期の時間が過ごせたようなので良かったです。
    在宅緩和ケアの大切さを感いました。
  3. 看護師
    緩和ケアの中では長期の症例ではありましたが、家族との関わり、グリーフケアでの家族の言葉などとても重みがありました。
    在宅酸素の使用を嫌がる患者さんを奥さんと工夫しながら配慮されて関わられ、本人、家族との関わり、暖かい温もりのある関係作りができていたのだと思いました。
  4. 看護師
    薬に対して、医者がどの様な意味で使用するのか理解した上で、患者さまに薬の説明を行うよう気を付けようと思います。
  5. 保健師
    かかりつけ医の大切さ、関係機関との連携について再考しました。
    本ケースの場合は、長男さんの体験が結果、カギになったと思うし、主介護者の良い支えになったと思います。
  6. ケアマネ
    今回は患者さんやその家族さんがスタッフの行動や評価をされた事で、お互いの信頼感が生まれ、最後までうまく進められた症例ではないでしょうか。
  7. 看護師
    生活の中に介入する時、違和感を与えない技術が大切と学びました。
  8. 看護師
    身体のケアの必要性はもちろん、関わり方や声掛けの方法によっても、利用者の気持ちや看取りへの方向性が変わることもあるので、トータルケアの必要性を考えていきたいと思います。
  9. 看護師
    日常の中に違和感なく溶け込む、本人が何を大切にして過ごしてきたのか、今後、私自身も大切にしながら、他職種と連携しながら支援していきたいです。
  10. ヘルパー
    今回の症例では、特に家族の支えの大きさを学びました。本人も病気と闘い、奥様は長男さんの支えもあり、一緒に闘ったのが良かったと思います。
    家に帰られ、夫婦一緒に散歩ができるまでになるのは、すごいと思いました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006