第51回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年6月8日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>75歳、男性
    <傷病名>胸腺癌
    <発表者>
      八幡浜医師会・清水建哉コーディネーターから家族背景などについて
      三瀬医院:片山 均医師より症例経過について
      八幡浜医師会訪問看護ステーション・坂本 美恵子看護師より
       それぞれご発表いただきました。

    <症例サマリ>

    平成29年10月くらいから顔面浮腫、体重増加、呼吸困難が出現。それまでは特記すべき体調不良等なく、かかりつけ医もなかった。
    平成29年11月11日に市立八幡浜総合病院受診。12月27日に両側胸水、前縦隔腫瘍を指摘された。平成30年1月17日精査目的で松山赤十字病院に紹介転院された。SVC(上大静脈)ステント留置後に酸素化悪化、血胸あり、人工呼吸器管理、右胸腔ドレナージ行う。平成30年1月31日、抜管後右頸部リンパ節生検実施するも胸腺癌の確定診断はつかなかった。
    平成30年2月6日ドレーン抜去するも2月11日酸素化悪化あり、C02ナルコーシス、胸水増加のためNIPPV装着,ドレーン再挿入し管理開始。
    平成30年3月2日炎症反応上昇、膿胸疑いのため抗生剤点滴開始。鼻カニュラ酸素1L/分にて酸素化保たれた。
    平成30年3月中旬 本人妻より在宅医療について八幡浜医師会訪問看護ステーションに問い合わせあり。
    平成30年3月20日 松山赤十字病院退院支援看護師より連絡あり。
    平成30年4月7日退院。片山先生が在宅主治医となり在宅医療開始となった。

    <議論の要点>

  1. 症状出現時にはすでにかなり進行していたことがうかがわれるが、対症療法を実施しながらの精査だった。化学療法、放射線療法が検討されながらの退院で、在宅医療が導入された。
  2. おそらく治療医は、まだまだ抗癌治療で延命効果が期待されると判断されていた。したがって、予後の説明など不十分なままでの退院となった。
  3. 在宅での経過中、急変し在宅11病日目で八幡浜総合病院へ救急搬送されたが回復することなくお亡くなりになった。
  4. 中橋先生より、病状を家族やご本人がどのように理解していたのか、余命についての話は十分にされて認識していたのか、今後化学療法などするのかどうか明確に方針がさし示されていたのか、など重要なポイントが話し合われていなかったのではないかなどなど多くの疑問が残る。
  5. 病院側の意思統一にも疑問があり、十分に在宅医療が導入される素地ができたうえでのことではなかったように思われる。
  6. 臨床倫理の4分割表を利用した整理を日常的に実施する事が必要ではないか。
  7. 今回はこれらの意見が出され、がん緩和ケアの基本的な思想にもつながる議論がなされました。

<職種別参加者数>

合計  61名
医師 10名 社会福祉士 2名
歯科医師 1名 ケアマネ 15名
保健師 6名 介護 5名
薬剤師 2名 その他 1名
看護師 17名 事務 3名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 保健師
    本日の事例は実家の近くの方でした。幼い頃から知っているご夫婦だったので、グリーフケアでの奥様の言葉がイメージできました。近所の者としても、本人や家族が安心して逝ける対応や環境づくりを頂き感謝です。この事業を利用できて本当に幸せだったと思います。
    ただ、今までのケースもですが、やはり早期発見、早期治療が第一で、高齢になってもがん検診のすすめを推進したいです。
  2. 介護士
    今回の事例は特別な感じがしました。でも最終的には本人も家族様も納得されてよかったと思いました。主治医や訪看さんの対応が大変だったのに、本人や家族様に不安を感じさせないように対応したのが良かったと思います。
    大変勉強になりました。
  3. 介護支援専門員
    病院内での連携ができておらず、ご本人、ご家族の意思決定のプロセスがはっきりしないところで支援していくのは難しいと思います。
  4. 看護師
    患者様がスムーズに医療機関へ受診、入院できるように、また医療機関から退院、転院することができるように、改めて地域連携室について考えさせられました。
    症例検討会での吉田さん(ベテル病院)は、体験されたことを分かりやすく話されるのでいつも勉強になります。
  5. 事務員
    実際の体験や症例検討会に参加して聞く話で、常々疑問に感じる連携室の設置ですが、必要性や職務権限の範囲はどのようになっているのか、システム等分かりやすいものがあれば教えて欲しいと思います。
  6. 医師
    コーディネーターへの依頼時や状況変化した時に連絡できる雛形などはあるのでしょうか。作成されたら良いと思います。
  7. 看護師
    病院、連携室、訪看等、他職種間の連携の重要性を再確認しました。特に退院から最期まで時間が短い方では、連携がスムーズに行かないと在宅での患者様家族が過ごす時間が有意義なものにならないと感じました。
    訪看として、在宅で患者様の思いや意思(治療方針や延命等について)を充分に理解し、それを家族や病院側に伝えていくサポートとしての役割の必要性を痛感しました。
  8. ケアマネ
    意思決定のプロセスが大切だという事、本人と家族の意見をどうやって確認していくのか。プロセスの重要性を学びました。
  9. 保健師
    清水コーディネーターの家族訪問の内容、ドクターの説明の様子、本人らの言葉を使って報告して頂き、状況がイメージしやすかったです。短い時間の中で、家族と深く関わっていただいたからだと思います。
    今回は主に意思決定がテーマでした、保健所でも対象者に対し防災カードを作成します。その時に、もしものとき(災害時)どのような治療をするかも書きます。今回の学びを作成時に活かしていきたいです。
  10. ケアマネ
    最新の状態での意思をサポートすることの難しさ。
    しかし、その大切さをいつも勉強させて頂いています。
  11. 看護師
     本人の気持ちの確認なしでのケアはありえません。
     思いをよく聞き取ることが大切である事を再確認しました。
  12. 保健師
    本人、家族の病状理解、緊急時の意思決定、治療方針(本人が本当はどうしたいのか等)等について、在宅側の支援者としての強みを活かした関わりの重要性について学ぶことができ、大変勉強になりました。実際の関わり、支援に生かしていきたいです。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

PDFを見る

県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006