第53回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 平成30年9月7日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>69歳、男性
    <在宅医初診日>平成30年5月10日
    <外来診療期間>平成30年5月10日~6月14日
    <訪問診療期間>平成30年6月19日~6月30日
    <傷病名>肝門部胆管癌
    <病歴>
    平成28年11月 肝門部胆管癌と診断された。平成28年12月26日 拡大肝左葉切除、肝外胆管切除。術後化学療法ジェムザール⇒TS-1⇒TS-1+GEMを行ったが、腫瘍マーカー増悪し、その後の化学療法のレジメンもなくPSも低下してきた。
    平成30年4月3日、本人と妻にBSCの方向性が確認され、化学療法中止となった。
    癌性疼痛と考えられる腹痛および夕方の発熱(腫瘍熱疑い)を認め、カロナール内服、癌性疼痛はオキシコンチン30mgとレスキューでオキノーム散3回から4回で対応された。
    便秘が以前からあり、センノシド、大建中湯およびマグミットで随時調節。癌に伴う右胸水も認め利尿剤で加療開始となっている。
    県立中央病院主治医は予後は3ヶ月以内と考えている。
    しばらく通院継続し、通院困難となったら訪問診療による在宅緩和ケアの計画となった。

<発表者>
  八幡浜医師会・清水建哉コーディネーターから家族背景などについて
  旭町内科クリニック:森岡 明医師より症例経過について
  訪問看護ステーションSetsuko・菊池 世津子看護師より

    <議論の要点>

  1. 妻が医療関係者であり、薬物治療への理解もあった。
  2. ご本人は病気のことについて十分理解されており、時折悲嘆感情を見せられたが、最後まで気丈に振舞っておられたことが印象的だった。
  3. 最後の終末期に十分な疼痛や全身倦怠感、呼吸困難感の緩和が不十分な印象が残った。より良い薬物治療の方法について検討が必要と思われた。
  4. 一方で、娘親子が予定を早めて帰省し、2人の孫娘(小学生)に会えたことで、一定の心理的な緩和が得られたように思われた。

<職種別参加者数>

合計  59名
医師 11名 社会福祉士 2名
歯科医師 1名 ケアマネ 12名
保健師 5名 介護 2名
薬剤師 6名 その他 1名
看護師 18名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 薬剤師
    緩和ケアとは、その人が最期までその人らしくいるための手助けなのかもしれないと思いました。
  2. 保健師
    病状の経過に対するチームケアとして医師、看護師、ケアマネの役割の明確化が大切と思いました。本人、家族に対して医師、看護師、ケアマネがそれぞれどのような支援をされたか知りたいと思いました。
  3. ケアマネ
    家族の中に医学の知識をもつ専門家がいると、良い面と悪い面がある事がわかりました。
  4. 介護支援専門員
    奥様が献身的に介護されたようですが、ご本人が痛みと呼吸困難で七転八倒された様子を傍で見ながらの介護は、精神的負担がかなり大変だったと思います。楽な最期を過ごすことができればと思いますが、薬物治療の難しさを改めて感じました。
  5. 看護師
    実際の現場において、呼吸困難時の対応について難しさを感じていました。痛みはある程度軽減されても、呼吸に対しての訴えは、看護介入が難しく、今後勉強していく必要があると思いました。
    麻薬に対して拒否的な利用者様、家族もあり、看護師が使用ハードルを下げる役割を担うことが大切だと学びました。
    今後も利用者様の状態を細かく把握し、医師へ速やかに報告することで緩和ケアが十分に行えるよう努めたいと思います。
  6. 看護師
    呼吸困難感をどうやって取っていくのか。薬の使用のタイミングの難しさを知ることができました。
    短い期間の関わりの中で、寄り添う看護の大切さの事例発表を聞いて、寄り添うことで患者さんの信頼が得られることの重要性を学びました。
  7. 保健師
    患者様、ご家族にとって、医師を含めてよい関係性を得られる医療職の人との出会いはとても大切と痛感しました。その人らしく最期が迎えられたのは、医師、看護師等の関わりがあってこそだと思いました。
  8. ケアマネ
    最期まで自宅で過ごせたこと、本人より「延命はいらない」という言葉がでた時、家族とともに最期を迎えたことなど、本人も家族も自宅で亡くなることを受入れることができたのではないかと感じました。
    薬に対する知識について、詳しい情報が多くある事で、逆に家族が苦しむことがある事を教わりました。情報について、家族は自分が納得しやすい形で受け取ってしまい、実際と違う答えを出していたりする可能性もあり、その溝が不信感を生み、危険もある気がしました。
    初めの印象で良い医師と思っていただけることが後の支援への影響があると思いました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006