第54回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年10月5日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>80歳、男性
    <在宅医初診日>平成30年8月27日
    <訪問診療期間>平成30年8月27日~9月6日
    <傷病名>原発性肺癌、胸腺癌
    <病歴>
    2018年6月8日に嗄声にため近医より市立宇和島病院耳鼻科を紹介受診し、胸腺腫瘍と左肺門部腫瘍のため同院呼吸器外科を紹介された。
    胸腺腫瘍は径47㎜で左腕頭静脈浸潤があり、左肺門部腫瘍は縦隔リンパ節腫大を伴っていた。
    左反回神経麻痺、左横隔神経麻痺を認めた。
    喀痰細胞診で扁平上皮癌を認めた。左肺門部扁平上皮癌および胸腺癌と診断され、同年7月7日より化学療法・放射線療法が開始された。
    その後PS低下のため化学療法は中止され、放射線療法60Gyを終了した時点で8月24日退院となった。
    Best Supportive Care単独の適応と判断され在宅医療開始となった。

<発表者>
 八幡浜医師会・清水建哉コーディネーター
 市立宇和島病院・緩和ケア認定看護師・井上 幸子看護師

 から家族背景などについて
 三瀬医院:片山 均医師より症例経過について
 訪問看護ステーションひかり・矢野 和恵看護師より
 それぞれご発表いただきました。

<議論の要点>

  • 著明な食欲不振、倦怠感と注射・内服拒否に対する対応に苦慮した点について。
  • ステロイドの適応があるが、内服拒否された時の対応と考え方。
  • 診断時に、早い段階での在宅医との連携について。
  • <職種別参加者数>

    合計  59名
    医師 9名 社会福祉士 2名
    歯科医師 1名 ケアマネ 11名
    保健師 3名 介護 7名
    薬剤師 4名 その他 1名
    看護師 20名 事務 1名

      <アンケートから>
      以下に参加者からのメッセージをまとめました。

    1. 薬剤師
      人は生きたい・・・の言葉が有難かったです。本人、家族は、生きる可能性がゼロに近づいても、諦めきれないのかもしれないと思います。
      本人が生き抜くための選択肢を多く示すことが大切だと思います。
      薬剤師は薬を届けることができないので力不足を日々感じています。
    2. 看護師
      多方面からの意見が刺激になりました。
      経験を積んで緩和ケアのQOLを上げたいと思いました。
    3. 保健師
      本人、家族が病気の事を理解し(経過も含め)、在宅でよく看取られたと思います。奥様はもちろん、お子様のサポートもあっての事かと思います。また、本事例もチーム医療スタッフのサポートのおかげだと思います。栄養士さんもチームに入っていたら、栄養摂取など奥様の不安な気持ちのサポートになったかもしれません。
      以前、鍼で少し食欲がアップしたということも伺ったので、色々な方の知恵で少しでも楽に過ごせる時が持てればよいと思いました。
    4. 鍼灸マッサージ師
      今回の症例の腰痛について、仙腸関節機能障害と股関節周囲筋、特に腸腰筋・内転筋の過緊張も考えられる。
      PTが介入しているのであれば、そのようなアプローチを実施すると本人の腰痛がずいぶん緩和され、心を開くきっかけになったと思いました。
    5. 看護師
      スケールを利用していくことは今後使ってみたいと思います。
      我慢させないケアを心がけたいと思いました。
    6. ヘルパー
      ご本人が死を受け止めてはいるが、内服や注射を拒否されると苦しみが増すと思います。痛みの症状を 緩和できれば、ご家族も気持ちが楽になるのではないでしょうか。
      家に帰り思い通りに家族と過ごせたことで満足できたと思います。
    7. 看護師
      本人の希望にそった看護ができるように支援をするための連携が大切だと思います。
    8. 看護師
      今回の症例の患者様の訪問看護を実際に行い、服薬拒否や食事拒否を行う患者様の看護の難しさを実感しました。
      そもそも病院に対して不信感を持った状態で家に帰り、医療従事者や医療行為に対して拒否的であったのですが、ベテル病院の看護師からのお話であったように、本人は「いつ死んでもいい」と言われていたが、まだ治療に希望を持っていたと思われ、もっと本人に傾聴し本音を聞き出すことができれば良かったと思います。
      痛みに対しても、あと追いのようになった感じがあり、医者との連携の重要性を実感しました。
      ターミナルケアを今後行っていくうえで、症例毎に対応していけるよう日々学んでいきたいと思います。
      訪問看護で、入浴において躊躇することは多く、命を短くすることを怖がるのではなく、本人とそのことについて話し、医者の協力を得て、QOLを高める為に考える必要があると学びました
    9. 看護師
      緩和ケアではまず、患者さん及び家族の一番の希望を聞くことが大切で、様々な情報の提供をしながら ベストを尽くし、患者さんの言葉を聞き漏らさず一つ一つを聞き取る重要性を痛感しました。
    10. ケアマネ
      服薬拒否の中にある本人の本心、本音を分かってあげることは簡単なことではないと思います。
      今後関わることがあるならば少しでも寄り添い、気持ちを和らげてあげるよう関わりを持ちたいと思います。
    11. 看護師
      ご本人の性格が難しい方のようでしたが、振り返りで色々な方法やオピオイドの使用について等勉強になりました。
      また、痛みに対して客観的に判断する必要性や、スケールを用いて医者と共有できるように、訪問した時に適切な情報収集ができるよう声掛けたいと思いました。
      一つ気になったことは、入浴を希望されており「風呂もはいれない」「痛みもとれない」「自分の思った通りにならない」などと絶望的になられたのでしょうか。バイタルサインが安定している時に半身浴でもできると、本人の達成感があったのだろうと思いました。
      「どうしてしたくないのか」「どうしたいのか」本人の希望が聞けるように会話のスキルアップが必要だと思います。その人の辛さに共感して本人がどうしたいのかという気持ちを大切にしなければならないと思いました。
    12. ヘルパー
      今回の症例の方は、家に帰られて僅かな時間でしたが、本人もご家族の方も幸せな時間を過ごされたと思います。
      患者さんは家に帰っても、覚悟はできていても、希望は捨てないということをしっかり胸にとどめて、これからも寄り添った介護ができるよう頑張りたいと思いました。
    13. ヘルパー
      今回の症例の方は痛みの軽減の希望が大事だったのがわかりました。でも「家に帰りたい」というのは帰れて安心はしたと思います。次の希望が「自宅のお風呂に入りたい」に対して、訪問入浴の説明だけでもお伺いしたかったと思います。例えば、温泉が好きということであれば露天風呂みたいな感じで庭での入浴という方法も説明できたと思います。

    愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

    「えひめ在宅緩和ケア」

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    県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
    許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
    2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

    掲載許可番号
    d20190822-006