第58回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成31年2月1日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>74歳、女性
    <傷病名>甲状腺乳頭がん、多発性肺転移
    <発表者>
      ①医師会コーディネータ¬ーより家族背景などについて
       八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
      ②在宅主治医より病状経過について
       三瀬医院・片山 均先生から
      ③在宅生活の経過について
       八幡浜医師会訪問看護ステーション・松平 直美看護師から
    <症 例>
    2009年7月、甲状腺乳頭がんの診断で甲状腺亜全摘術を施行された。その後、2010年2月に両側多発肺転移を認めた。放射線療法(内照射)や化学療法を継続したが副作用のため治療の継続が困難となり、2018年8月1日から在宅緩和ケアを主体に在宅療養となった。
    当初は、予後は在宅療養開始後2~3週間ではないかと推定されていたが、在宅での平穏な環境と疼痛や呼吸困難に対して主治医の薬剤の工夫や多職種スタッフのケアの工夫で予後の延長が診られ、同年10月9日、永眠された。

    <議論の要点>

  1. 疼痛、不眠、不安などの症状コントロールについて。
  2. 2∼3週間の予後と考えていたが、予想外に生存期間が延長した。ご家族が献身的に看護・介護されていましたが、ご本人、ご家族ともに療養期間が長くなることに伴う精神的負担を軽減するために適宜病状説明や方針の修正を行うなどの対応が重要と思われた。

<職種別参加者数>

合計  53名
医師 6名 社会福祉士 1名
歯科医師 2名 ケアマネ 14名
保健師 5名 介護 4名
薬剤師 2名 その他 1名
看護師 17名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 看護師
    精神的ケアは難しく、ただ傾聴するだけではなく、気分転換ができる何かを見つけることも必要だと思いました。また、本人と同様、ご家族への関わりやケアも大切だと実感しました。
    辛い思いに対してこちらが思いを共有し「辛いよね」と言葉に出して伝える事も大事であり、今後のケアに活かしていきたい。
  2. 看護師
    薬を飲む事=生きる事であり、薬を減らすことの大変さを知りました。
    疼痛スケールを使い、オプソ使用前後の評価を行いたい。
    身体的な疼痛なのか、スピリチュアルペインなのか、しっかりアセスメントしたいと思います。
    無念さを傾聴すること(受け止めること)が受入れの第一歩であると思いました。
  3. 介護士
    スピリチュアルペインは調子が良い時に出てくるので、夜眠れなくなることもあります。ご主人の献身的な介護を受けながらも不安が大きくなっていたようです。やはり、カンファレンス等により多職種でご本人の思いを傾聴し支えていくことが重要だと思います。
  4. 看護師
    在宅医療・自宅で看取るためには本人、家族や医療関係者を交えてカンファレンス、病状、体の変化が起きることにどう対応したらよいかなど、納得するまで話し合い、寄り添って見守り、話し相手になれることが大切だと思います。
    在宅医療を24時間体制で守ってもらえる安心感が、最後まで最高の人生を終わらせたと思いました。
  5. ケアマネ
    本人のしんどさ、辛さを本当に分かってあげられているか。どう接したらよいか難しいと思います。
    鎮静することの意味や方法を考えることが大事だと思いました。
  6. 看護師
    緩和ケアの方の訪問看護に関わった時に、声掛けに戸惑うことが多くあり、そういう時の会話方法(答え方)を聞けたので今後実践しようと思います。
    日々の仕事のなかでも気を付けていきます。
  7. 保健師
    医師、訪問看護師、ケアマネ、コーディネーターなどの連携を図るこのモデル事業が継続し定着して、この地域で在宅療養ができるのは本当に有難いと思います。
    「薬=生」「不安がある人に余命を伝えるとより不安にさせる」「死ぬことを考える時は少し余裕がある時」など細かい本人の気持ち等知ることができました。
  8. 保健師
    患者さんの思いを受容してあげること、代弁してあげること、そのような関わりも大事であることを気付くことができました。
    本人が何を考え、どう過ごしているか、関わりを通して関係者が引き出していけたらいいと思います。そのためにもスタッフ間の情報共有が必要だと思います。
  9. ケアマネ
    私自身、まだ看取りのケースに関わることが少なく、どのように声をかけたらいいのか悩むことも多くあります。先生や看護師の関わり方等を聞かせて頂き、実際に傍らで見させて頂きながら、少しでも不安が軽減してあげられるようにしたいと思います。
    専門用語の使用や、受容や共有(認める)の大切さも改めて感じました。
  10. 薬剤師
    患者さんは医療者に対して、各々見せる表情、感情が違っていることからその情報を交換し合える場所が大切だと思われました。
    私にとって、忘れる事のできない患者さんとなっております。そして、今でも後悔の思いが残っています。何が正解なのか全くわからず、今も考え続けて、時折涙をためていた眼を思い出してしまいます。本当は減薬の方は話を持って行きたかったのが本音なのですが、それを言ってはならない時もあるのでないかと思いました。
    こうして忘れずにいることが、患者さんへの恩返しになれば良いと願っています。
  11. 介護士
    ご本人の苦痛がある中で家族の思いや辛さがあった、またご本人も家族も命ということに向き合ってすごく頑張ったと思いました。
    余命が最初2週間ぐらいだったのが、2か月も伸びたのは、在宅(自分の家)だからなのではないかと思います。意外に家に帰ると元気になったりするので、やっぱり在宅はいいと思います。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006