第73回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB開催
    八幡浜医師会館、八幡浜市保健センター、伊方町役場で放映
  2. 日時:令和2年8月7日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>
      50歳代 男性
      #1、左下葉小細胞肺癌
    <発表者>
      座長は、旭町内科クリニック;森岡 明医師
      ① 家族状況などの説明
       八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
      ② 症例発表
       三瀬医院院長 呼吸器内科:片山 均 医師
      ③ 訪問看護の経過について
       八幡浜医師会訪問看護ステーション所長:坂本 美恵子 看護師
      ④ ケアマネージャーからの報告
       居宅介護支援事業所 西安:門田 幸代 ケアマネージャー

<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

    <議論の要点とコメント>

  1. この症例では、兄弟同様に育ってきた従弟が献身的に最後まで尽くされ支えていく姿に、参加したスタッフから感動したとの意見が多かった。
  2. WHOのラダー方式の疼痛緩和法では、NSAIDsを当初使用してても、オピオイドを加えたからと言ってやめる必要はなく、むしろ併用するのが望ましい。
  3. 小細胞癌という癌の特性から、疼痛緩和にアブストラルなどの舌下錠を試してもいいのではなったか。
  4. 症例からうつ傾向を示す状態像があり、また骨転移に伴う神経障害性疼痛を思わせる痛みがあることから、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI):サインバルタ® などの抗うつ薬を試みてもよかったのでは。三環系抗うつ薬には点滴可能な種類もあるので、試みる価値はあると思われる。
  5. 骨転移による痛みに、ビスフォスフォネート系薬(ゾメタ®)もあるので場合によっては考慮しておく薬剤にあげられる。
  6. 新型コロナウイルス感染症流行期で、関東にいる弟が自由に帰省できなかったことは、コロナ禍の問題点として考慮しておく必要がある。

<職種別参加者数>

合計  52名
医師 9名 社会福祉士 2名
歯科医師 1名 ケアマネ 11名
保健師 2名 介護 2名
薬剤師 6名 その他 2名
看護師 16名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    今回の家族構成がかわっていたのでびっくりしました。ご本人様もまだまだ若いし、母親の気持ちを考えると想像がつかないくらい辛かったと思います。Aさん(従弟)がいたことは、ご本人や母親にはすごく良かったと思います。予後がわかった上で生活するのは、どうなのだろうと思います。もし自分がとなった時を考えると恐怖しかないです。今回も大変勉強になりました。
  2. 医師
    当院より緩和ケアを依頼した患者さんがどのように最期を迎えられたか詳細がわかり、疼痛の原因やコントロールなどについて、様々な意見交換もできて良かったと思います。
  3. ソーシャルワーカー
    当院から緩和ケアへ移行した方がどのように在宅で最後の時間を過ごされたかを知ることができました。また当院を受診されている間には知らなかった家族関係についても知ることができました。当院での患者さんとの関わりについて振り返ることができる貴重な時間となりました。
  4. ケアマネ
    若くしてがんを発症され、その看取りを主として、ご両親でもなく、配偶者でも兄弟でもなく、兄弟以上の関係である従弟が介護されている事例で、覚悟を持って支援されたと思います。ご本人のお母様も十分に対応ができないこともあるなかで、負担が大きくなることもあり、確認しながら寄り添い、支援者が関わっていたと感じました。これから、そのように寄り添える支援者になれるよう勉強していきたいと思います。そして、お母様の支援にも繋がり、一つの事例が終結しても、その繋がりがこれからも続いていくことを改めて感じました。
  5. 薬剤師
    がんに関する先生方の対応が勉強になりました。また、疼痛ケアに関しての勉強不足を痛感しました。事業所内でも事例を共有して今後の業務につなげていきたいと思います。
  6. 薬剤師
    今回の症例は、本人と従弟さんの意思疎通や信頼関係がとても感じられたので、在宅においてキーパーソンの存在が大切だと思いました。私も在宅に関わり初めたばかりなので、これから患者さんや患者さんの周りの方の希望を踏まえてケアを進めていけるよう勉強していきたいと思います。
  7. 医師
    今回の症例や吉田さんが言われたような直腸がんの排尿排便痛・会陰部痛には、仙骨ブロックがよく効く場合があります。簡単で、キシロカインを10㎖とか吸って持っていけば、在宅でもできますので、お試しいただければと思います。泌尿器科では、膀胱鏡の除痛で日々使っていますので、お役に立てそうならいつでもお呼びください。
  8. 保健師
    事例を通して、逝き方について学ばせてもらいました。本人、家族、関係者が今の事、今後の事までを支えていくことが理想だと感じました。すごく上手くいっている事例だと感じました。
  9. ケアマネ
    今回の症例は、実弟さんよりも従弟さんとの絆の深さが特徴的でした。看取りの支援に関わった時、色々なことを加味しながら関係者間で情報共有することの大切さを改めて感じました。
  10. 看護師
    疼痛コントロールは本当にむずかしいと思います。痛みの評価といっても人それぞれ痛みの感じ方が違うため、細かいアセスメントが必要だと思います。今回の事例の方は、話すこともでき、しっかりされており、従弟さんがずっと側に付いていて理想的な介入ができたと思います。訪問看護師の関わりも参考になりました。
  11. 看護師
    骨転移時の疼痛部位や痛みの種類の判断の困難さを感じました。「疼痛=麻薬」と思いがちですが、NSAIDをベースにするということがまずは基本であると学びました。坐薬も疼痛により使い分けることが必要であり、神経性疼痛には点滴も良いと知り勉強になりました。以前の症例検討会でも森岡先生より、鬱や倦怠感に対しての薬の説明がありました。今回も痛みだけでなく他症状にも目を向け、利用者様の苦痛が少しでも穏和できるよう、医師と連携していくことの大切さを再確認しました。
  12. 福祉用具専門相談員
    在宅緩和ケアコーディネーター研修の時も感じたように、本人にいかに寄り添うかが大事だと改めて思いました。今回のケースでは従弟さんがキーパーソンになっていましたが、これまでの経験からそのようなケースは殆どありませんでした。そのような関係性のある人に対して、どう寄り添っていくのか参考になったと思います。予後がどれくらいか、その間に会いたい人がいるなら「今」を伝える事も大事であり、また、その先に何を求めているのか知る必要性も感じました。
  13. ヘルパー
    在宅緩和ケアの患者さんが増えてきたのでとても参考になりました。「最期は自宅で」と思われる方が多くなり、実際に自宅に帰って容態が安定される方もおられます。往診や訪問看護も来て頂けてとても心強いと思います。今回の症例では、痛みの変化がキーポイントになっていたと感じました。痛みの場所、痛み方では何が原因かは判断しにくく、本当なら検査を受ければ原因も分かるかもしれませんが、在宅の場合、それが難しくなるのがとても残念です。痛みを取り除いてあげたいのに、原因がわからないと、充分には緩和できないのではないかと思いました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006