第74回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB開催
    八幡浜医師会館、八幡浜市保健センター、伊方町役場で放映
  2. 日時:令和2年8月7日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  90歳代 女性
  #1、膵頭部癌
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
   ①家族状況などの説明
    八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
   ②症例発表
    矢野脳神経外科医院 院長:矢野 正仁 医師
   ③訪問看護の経過について
    訪問看護ステーションSetsuko 所長:菊池 世津子 看護師から
<症 例>
報告内容
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<議論の要点とコメント>

  • 終末期に嘔吐が始まり食事摂取不能となった。水分補給のため250ml/日の輸液を実施。1回目は体調改善が見られたものの、2回目は逆効果(全身倦怠、痛みの増悪)だった。こういった場面での輸液の考え方について議論された。1回目の輸液については緩和ケアとしてはよかったのでは。輸液をすることの是非は、ケースバイケースで考慮すればいいのでは。むしろ、この症例では糖尿病の増悪に注意しながら、早い段階から少量ステロイド(例:デカドロン0.5mg2錠/日)を使用してもよかったのではないか。上部消化管の腫瘍による通過障害があるので、腫瘍の炎症をとる意味からもステロイドは有効と考えられる。
  • 早期の段階からアンペック坐薬などを置き薬的に配置しておくのもいいのでは。アンペック坐薬は痛み以外に、「しんどさ」や「倦怠感」をとることに有効。
  • 訪問看護は早い段階で導入しておくべきだった。「まだ、元気だから訪問看護はいらない」ということにはならない。訪問看護は様々な場面で重要な相談機能を発揮する。訪問看護の導入については、早い段階で家族にどう説明できるかがカギとなる。
  • 緩和ケア的手術療法の手段は病院入院時になかったのか。たとえば、胃・空腸バイパス術など。
    最近では、胃・空腸バイパス術の手術成績は良くない。むしろ十二指腸ステントを挿入することが現実的。
  • 病前から、患者様は社会福祉協議会への委託事業である健康クラブに参加されており、参加時に支援者としてかかわりを持っておられた畑山優江ケアマネージャー(保健師・看護師・社会福祉士)からの寄稿文を以下にPDFファイルとして掲載しました。
  • 寄稿
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    <職種別参加者数>

    合計  52名
    医師 10名 社会福祉士 3名
    歯科医師 2名 ケアマネ 11名
    保健師 6名 介護 4名
    薬剤師 3名 その他 3名
    看護師 14名 事務 3名

      <アンケートから>
      以下に参加者からのメッセージをまとめました。

    1. 福祉用具専門相談員
      今回の症例は、医療面での訪問看護の大切さを知らされました。ご本人に告知していない状況でのスタッフの関わり方と対応は困難であったと感じました。
      ご本人が元気で動けている、まだ必要ないといったことは、自分の職種でもご本人から言われることが多いと感じます。家族様の不安を取り除くことができ、ご本人の安全を確保する早期対応の関わりは、自分の対応にも繋げていきたいと思います。
      今回の家族様は、在宅での看取りをごく普通にされておられ、長男のお嫁さんとの関係もとてもよかったのだなと思います。お孫さんにも囲まれて過ごす在宅生活が、ご本人、ご家族の意向だったと思います。
    2. ケアマネ
      今回、未告知のまま支援が進むという中で、訪問看護の導入の難しさを感じました。ただ、早期に導入することでメリットもたくさんあり、看護師さんが訪問することで、不安が軽減することなどを伝えるとともに、役割をしっかりお伝えしていく必要がケアマネにはあることがわかりました。それにはご本人やご家族に信頼してもらっていないとできないことでもあり、普段からのお付き合いを大切にしていきたいと思います。
    3. 臨床心理士
      難しいケースだと思います。患者さんが余命を宣告されるのを嫌がっていたことを、もしかするとご家族の方はご存知だったのではないでしょうか。私は母に、もし癌だったら教えてほしいかと聞いたことがあるのですが、それは怖いと答えていました。ですから、ご家族の意思、そして、健康クラブでの活動を楽しみにしているご本人の意思を尊重した、よい看取りの報告だったと思います。
    4. 福祉用具専門相談員
      どなたかの意見にあった「本人のケアではなく、家族のケアになってしまうことがある」というのが、自分のなかにもあるように思えてドキッとさせられました。自分の都合で対応してしまっているところもあり、今後の自身の業務のあり方を見直す良いきっかけになったように思います。
    5. ケアマネ
      今回のケースの方に訪問入浴で行かせていただきました。最後の入浴になりましたが、入浴中の気持ちよさそうな表情で「ありがとう」というお言葉を頂いたのを覚えています。ご家族様からも「こんな風にお風呂に入れるとは思わなかった」と喜ばれているのをみて訪問させていただいてありがとうございましたという気持ちになりました。検討会で色々な意見が出ましたが、ご本人様、ご家族様はとても満足された最期を迎えられたと思います。
    6. 介護士
      今回の事例にはヘルパーの関わりがなかったのですが、呕吐の後の口腔ケアをどこまですれば良いのか知りたいです。緩和ケアの終末期になるとヘルパーとしてできることは限られてくるため、家族様との繋がりを大切に、お話を傾聴できればと思います。また、訪看さんへ繋げられるよう点滴、薬の服用時の変化など学ぶべきことがたくさんありました。
    7. 介護士
      訪問入浴を利用して本当に満足された様子で、ご家族様も喜んでおられたようです。ご家族が自分達で看たいと思う気持ちもとてもわかります。途中で訪看さんが入ることになりましたが、お元気な時に導入することでステロイドも早く使い、吐き気も無くなったのではないかということもわかりました。ただ、ご家族、ご本人の意向で賑やかに幸せに過ごし、本当にいい看取り方をしたのではないかと思います。
    8. 介護士
      家で看取りたいとのご家族の温かい思いが伝わってきました。最後まで自宅ですごせたこと、よい看取りだったと思います。早い段階での医療導入の必要性もよく理解できました。
    9. 介護士
      家で看取りたいとのご家族の温かい思いが伝わってきました。最後まで自宅ですごせたこと、よい看取りだったと思います。早い段階での医療導入の必要性もよく理解できました。
    10. 介護士
      今回の症例に関しては、ご家族様の関わりが多く、在宅での支援というところでは良い内容だったと感じます。ご家族、本人の思いを聞き取った支援で、振り返ると「ここはこうした方がよかった」と悩むこともあるかもしれませんが、こまめな面談や電話訪問、医師とのやりとりなど、細かな点まで調整連絡していることに有難さを感じました。看取りの段階で、様々な思いが皆の中にあると思いますが、ご家族やご本人の思いに目を向けることの大切さを感じることができました。
    11. ケアマネ
      早めの訪問看護の導入の有用性、本人への告知について、コロナ禍での入院に対する状況の変化など、興味深く学ばせていただきました。
    12. 保健師
      家族の意向のもと在宅でのケアが進んだ事例だと思います。本人は、日常生活の中で、住み慣れた家で仲の良い家族に囲まれ人生をまっとうできたのではないでしょうか。家族以外の友人、知人達との関わり、健康クラブへの5月の参加は本人の生きる力に繋がったのではないでしょうか。健康クラブへの参加、訪問入浴など、その時々の状況を見極め、取り入れていくことはこの方のQOLという点でとても大事だと感じました。
    13. 保健師
      新居浜市も今後緩和ケア事業を開始しようと検討しており、大変参考になりました。包括支援センター職員として、緩和ケアの必要なケースの相談実績が少ないのが現状のため不安も多いですが、今回、地域の開業医や訪看、その他の多くの機関が関わり、看取りを実施した事例検討は大変勉強になり、医師の専門的な意見交換やそれぞれの職種の立場からの意見は、多職種連携として相互理解に繋がっていくものだと感じることができました。また、新居浜市ではまだ開始していないこともあり、コーディネーターの役割など十分理解できていないところもあり、新居浜市としての体制を検討していく必要があると感じました。
    14. 作業療法士
      私自身は作業療法士という立場でどういった関わりができるのかということをとても考えさせられる時間となり、とても勉強になりました。自分は作業療法士として患者様や利用者様に寄り添いながら関わりを持っていけるように心がけていましたが、本人様や家族様の気持ちを考えながら何が一番大切なのかを考えることの大切さを改めて感じました。
    15. ケアマネ
      今回の症例は、家族の献身的なサポートのある中で、本人には最期まで未告知を通した事例でした。支援者側は専門家として今後起こりうることを予測できるため、訪問看護の導入も元気なうちから入れておく方が良かったのでは、というアドバイスがありました。私たちはとかく本人や家族の意向のまま、サービスの受入れを拒否されたら、その時が来るまで待つことが多いのですが、その方たちが飛びつきそうな情報提供を絡ませながら説明することの大切さを学ばせていただきました。そのためには、私たちもサービス事業所の特性をより深く知識として蓄えておくことが必要だと思いました。

    愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

    「えひめ在宅緩和ケア」

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    県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
    許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
    2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

    掲載許可番号
    d20190822-006