第75回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB開催
    八幡浜医師会館、八幡浜市保健センター、伊方町役場で放映
  2. 日時:令和 2 年10月2日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  70歳代 男性
  #1、原発性肺がん、#2、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
<発表者>
座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
① 家族状況などの説明
  八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
② 症例発表
  三瀬医院 院長:片山 均 医師
③ 訪問看護の経過について
  八幡浜医師会訪問看護ステーション 所長:坂本 美恵子 看護師から
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

資料;COVID-19 陽性患者さんと接触した場合のリスク評価と対応
   以下のページをダウンロードしてご参照ください

https://asahimachi-gp-clinic.com/pdf/news/20200525.pdf

    <議論の要点とコメント>

  1. がんの発見当初から積極的な治療を希望されなかった。医療者側の視点から、化学放射線療法、QOLの改善にもつながる処置に対して同意が得られなかったことが残念である一方、本人の立場や価値観に沿うと、本人は自然なままの自分でありたいとの希望が強く、全く後悔はしていないのではないか。
  2. 大阪在住の子供さんたちが、新型コロナウイルス感染症の問題があり帰省できなかったことについて、今後在宅医療を継続するうえで感染拡大防止について検討が必要。
  3. 訪問薬剤師からの報告。吸入薬などがうまくできていなかったりした。また、内服薬の服薬アドヒアランス向上のためにこまめに服薬方法を変更しながら、また吸入薬の使用方法など丁寧に説明することで、アドヒアランスを改善できた。
  4. 患者さんと医療者・介護者で多職種連携で緩和ケアを実践するとき、こまめな情報共有でACPの実践につなげていくことが重要。

<職種別参加者数>

合計  53名
医師 7名 社会福祉士 1名
歯科医師 2名 ケアマネ 12名
保健師 3名 介護 6名
薬剤師 6名 その他 3名
看護師 12名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 薬剤師
    薬局薬剤師として、知識の幅、深さも必要であることは言うまでもありませんが、キーパーソンの性格、理解力だけを把握して投薬指導するだけでは足らない事が多いのではないかと感じました。今回の場合、吸入薬、内服薬の指導を最初から多くの時間を使い、繰り返し指導することができれば少し違った結果になったのかもしれないと思うと同時に、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師の必要性を強く感じてしまいます。同じ人が繰り返し話しかけることで相手の体調変化や理解の程度も推し測ることもできるのではないかと考えます。患者さん、その家族に心を開いてもらえるまでには時間を有するのは当然覚悟しなければなりませんが、時間が多く残されていない時こそ、そのような関わり合いは大事になるように思われます。家族全員の希望、思いに添えることなどできるはずのないことでしょうが、皆の思いの折り合いがつくところが想像できる観察力、人間力が必要だと痛切に感じます。「自分の心身ともに余裕がないとできないよ」とある方に教えていただいた言葉が心にしみます。すべてを受け入れて導くことは難しいと思います。
  2. ロロロ
    コロナ禍での在宅対応や、本人だけでなく家族との距離感も経過を見るうえで重要になってくると感じました。薬や医学的な内容を追って読み進めていましたが、利用者、患者さんの会話からその人の心情変化などを見ていくことで、本人家族にとっても納得の得やすい治療につながるのだろうと思いました。
  3. 福祉用具専門相談員
    ご本人様が生きてこられたこれまでの人生に寄り添ったり、その人生観を汲み取ったりすることまでなかなかできないと、私はいつもこの症例検討会を聞いて思っています。私は福祉用具でしか支援できないため、直接的に接する機会が少ない中で、どのようにその方と接することができるかと考えたとき、その方の生き方を知ることができれば少しでも寄り添うことができるのかなと、今回の症例で感じました。自分よりになってしまいがちな福祉用具選定についても改めて考えさせられる内容でした。
  4. ヘルパー
    コロナが騒がれる中で、ご本人と家族との思いがとても辛かったことだと思います。最後は息子さんの顔を見て引き取られて、ご本人はものすごく頑張ったと思いました。また、息子さんも一目見られて良かったと思いました。人の命とは、すごいなと思うことができ「自宅(家)」という所の大事さ、家族の絆も感じることができました。
  5. ケアマネ
    コロナ禍での帰省については、本当に難しく感じています。色々な制限がある中で少しでもご本人やご家族の思いが叶えられるよう支援を考えていきたいと思います。
  6. ヘルパー
    コロナ禍、帰省できず会えないことを思うととても辛いです。
  7. ケアマネ
    今回の症例の方は、70歳代という若さもあり、自己判断で物事を考え行動されるイメージを感じました。家族様もご本人の意思を尊重し支援される姿勢がとても心を打たれました。コロナウィルスの影響もあり帰省されるタイミングはとても難しく、子供さんもとても辛い思いをされたと思いますが、最後顔をみられたことは、ご本人、ご家族ともにとても大切な時間だったと思います。
  8. 福祉用具専門相談員
    今回の症例では、自分が福祉用具で関わらせていただいた事例でした。ミーティング開始前に生前の取材動画を視聴させていただきました。訪問時には本当によく笑っていただき、ベッドの搬入時にも体は辛いはずなのに色々な話を、声を振り絞りながら話してくださいました。「ありがとう。ありがとう。声が出ないけどごめんよ・・・」と両手を合わせて気持ちを伝えていただきました。福祉用具の依頼を受けた当初から、病院は嫌いで治療をなかなか受けないと伺ってはいましたが、資料を見ていると服薬を中心にしただけの在宅生活、COPDで最終段階まで在宅酸素も受け入れてない状態で呼吸苦はかなりの辛さだと感じます。ご本人の意思がまっすぐで強い信念をもって生きてこられた方だと感じました。仕事や家族をとても大事にされていたのでとても印象深い利用者様でした。関わったスタッフへの信頼も厚かったのだと思います。本日は自分自身の振り返りと反省点も見え、これからの利用者様との関わり方を考えることができました。
  9. ケアマネ
    今回の症例はテレビで拝聴しました。症例検討会で取り上げていただいたので、より深くこの事例について考えることができました。毎回、太田さんの視点に気づかされます。今回も、支援者側が「残念に思う」という振り返りをされた時、果たしてそれは患者様もそう思っているのだろうか。その人その人の歩んできた人生を考えた時に、人生の岐路はその人自身が選択している。それは過去の歩んできた人生が影響し、未来を想像して選択しているのだという視点に気づかされました。テレビ放映で何度も手を合わされ感謝されていた姿が目に焼き付いています。きっとその通りなのだと思います。
  10. 保健師
    この方のそれまで生きてきた人生、人となりを知ることは、本人、家族を支援するうえで大変重要になることを感じました。また、関わりがある方を支援者として取り込むことで、本人、家族の意向の確認がスムーズに行えるのではないか。この症例を通して勉強させていただきました。
  11. ケアマネ
    貴重な症例を学ばせていただきありがとうございました。「寄り添うか」「我慢するか」今私が担当させていただいている患者様にも、検査拒否の方、治療拒否の方がおられ悩んでいます。「○○したらもっと生活がこう変わるのに・・・」と思い、色々話し合いをしていますが、ご本人様はなかなか納得されなかったり、私自身ももっと、ご本人様の思いに寄り添い、ご本人様が望む人生を歩めるように支援させていただけるよう、価値観や考え方をトレーニングしていかないといけないと強く感じました。今回の症例は、海に生きた海の男らしい生きざまで、とても温かいご家族に支えられていて皆様の関わり方に感動しました。
  12. 保健師
    その方の生き方や大事にしていることを尊重することが大切だということを考えされられた症例でした。
  13. 看護師
    本人の気持ちを尊重する、またその本人の気持ちを理解しての家族のサポートのあり方。またコロナ禍で遠方にいる家族への対応やその家族へのサポートの重要性、家族の気持ちを汲み取り病院でできること、一方、家でしかできなこと。結果、今回の症例のご本人、ご家族は良かったとしても、今後考えなければならない課題が多く含まれている症例だと感じました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006