第76回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB開催
    八幡浜医師会館、八幡浜市保健センター、伊方町役場で放映
  2. 令和2年11月6日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  50歳代 男性
  胃癌、癌性腹膜炎、原発性肺癌
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
  八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
  ②症例発表
  谷池内科・胃腸科 院長:西野 執 医師
  ③訪問看護の経過について
  八幡浜医師会訪問看護ステーション 松平 直美 看護師から
  ④ケアマネージャーからの報告
  居宅介護支援事業所 西安 門田 幸代 ケアマネージャー
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

    <議論の要点>

  1. 胃癌の進行で食物の通過障害が出現。最後までご本人は点滴を希望された。がん緩和の経過中、終末期には一般的に輸液は控えるが、本症例では、輸液治療が最後までご本人の生きる希望につながっており、別の意味で心理的な緩和に輸液が効果的だった症例だった。そのような意味から、癌治療中に在宅緩和ケアを考慮に入れたポート増設も必要なのかもしれない。
  2. 本症例の方は年齢も若く、支えるスタッフも同世代であることから、コミュニケーションに工夫を要した。
  3. 点滴の静脈路確保が困難で支援時間が長くなることがしばしばだった。このような場合、患者さんにその旨お話しして、いったん点滴を断念することも重要。
  4. 三崎や伊方町の独居高齢者、生活保護の方の支援状況について。

<職種別参加者数>

合計  59名
医師 9名 社会福祉士 2名
歯科医師 1名 ケアマネ 12名
保健師 3名 介護 7名
薬剤師 9名 その他 7名
看護師 13名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 歯科医師
    症例検討をお聞きし、現場にいる方が親身に一生懸命されていることを毎回痛感させられます。医学が理論上完全でない以上、いつも現場は取り返しのつかない場面を際限なく相手にし、手探りな時でもその時のベストを尽くすよう勇気をいただいています。歯科の分野はターミナルに関われる機会も少ないですが、いつかお役に立てるようにこれからも勉強していきたいと思います。
  2. ヘルパー
    今回の事例は、独居の方で生活保護を受けていた方です。家族の支援も少ない中でのサービス対応はとても難しかったと思います。それでも少しずつ家族や仲間たちの手助けができたのは良かったと思いました。サービスに入る側としては、この方の「生きる」という所を尊重できるような配慮がいると思いました。
  3. ソーシャルワーカー
    終末期における補液という難しい課題を抱えた今回のケースについて、様々な意見を聞くことができとても勉強になりました。当院から緩和ケアに移行してから、多くの方々と関わりながら終末期を過ごされたことが分かりました。なかなか知ることのない部分を知る機会になりました。
  4. ケアマネ
    私たちは経験を重ねてくると、今後どのようなことが必要になるかなど予想するようになってきます。今までの検討会でも幾度となく話が上がっている、見取り期の点滴の実施について検討課題に上がりました。今回、若い方でもあったためか、点滴をすると少しでもよくなると思う気持ちを持たれている方に対して、思いに寄り添い点滴を行ってこられました。若い力だけではないでしょうが、少しでも良くなるのではとか、楽になりたいなどと希望を持たれている方も多いです。もしかしたら、その支援の方法が間違っているかもしれないと思うことも多々あるかと思いますが、少しでも思いに寄り添っていけるかが大切になるのだと今回の事例で感じました。これは年齢に関係なく、関わるすべての方に「生きる望み」を持っていただけるよう、そして辛さを少しでも忘れていただけるよう、思いに寄り添っていけるような支援者になりたいと思いました。
  5. 福祉用具専門相談員
    今回は福祉用具スタッフの献身的な関わりが本人はもちろん、周囲の人たちへの好影響があったということに感銘を受けました。同じ福祉用具サービス事業所として、自分の利用者や家族に対する接し方を見直し、今後のサービス提供のあり方を考えさせられるものでした。
  6. 保健師
    一人一人の症例に対して丁寧に関わること、それぞれの立場で振り返りを行うこと、それを専門職が共有していくこと、とても大事だと感じました。とてもいい検討会だと思います。とても勉強になりました。第76回というのも驚きでしたが、一番驚いたのは、医師の参加です。熱心な先生がたくさんいらっしゃることです。今まで積み上げてこられた関係性だと感じますがとても心強いと思います。
  7. 医師
    フェントステープのレスキュー薬としてアンペック坐薬を使われたのは、とても良い対応だと思います。アンペック坐薬をうまく使いこなせると在宅緩和の疼痛コントロールの幅が広がりますので、今後も多用していただき経験値を上げてください。終末期はアンペック坐薬(10mg)2本/日でも良かったと思います。
  8. 薬剤師
    今回の症例の方は50才代でまだ若いこともあり、看護する側も支援する側も対応が難しいという気持ちはよくわかりました。独居でしたが最期は独りで迎えることなく、ご家族、友人等に囲まれた最期だったことは本当に良かったと思います。ご本人の希望で最期まで点滴をされたのは、今回の患者さんにとっては必要なことだったと思います。フェントステープの増量がはやく痛みの強さが伝わってきました。支援時間については、時間配分や支援内容(何を、どこを限られた時間内で支援するか)については、様々な負担もあると思うので、どのようにするのがベストなのか、これからも意見交換しながら良い方法があれば教えていただきたいと思います。
  9. 薬剤師
    がんの終末期に点滴量を減らすことは知りませんでした。もっと色々知識を身につけたいと思います。
  10. 薬剤師
    今回は色々な点でやさしさの連鎖だったように思いました。以前、薬局薬剤師として患者さんに対する時、自分の時間をどれだけ患者さんに使う覚悟があるのかと問われたことがあります。この時、息が詰まるように思ったことを覚えています。どのような病気であっても、体調の悪い時ほど、患者さんは時間を必要としているように感じています。点滴の継続にしても、フェントステープの管理にしても、患者さんの状態に応じて答えは一つではないのだろうと思われました。私は患者さんと同じ目線で、同じものを見て、ゆったりと横にいることしかできないです。ただ相手の人生、生き様を学ばせてもらう姿勢は失いたくないと切に思います。
  11. ケアマネ
    「同世代の方の支援の難しさ」は、自分と照らし合わせて感情移入するかもしれないからだと思います。それでも最期まで支援する側として「何をしてほしいのだろうか」「何かできることはないのだろうか」と常に考えながら支援にあたると思います。日程が固定されたサービスの利用では不可という現実がある中で、ご本人の「外にでたいなあ」という思いをケアマネと四国医療サービスの方が事前にシュミュレーションを行い、実現できたことは、まさにご本人の望む生活に寄り添った支援だと思います。もしかすると「チームケア」という視点を考えるときに娘さんやご友人の方たちもこの場に居合わすことができたら、ご本人にとって最高の思い出の1ページになったかもしれません。
  12. 看護師
    人生最後の時をどこでどんな人と迎えたいのか、本人の気持ちを聞き取り、一日でも長生きしたいと思う気持ちを引き出し、寄り添い、不安もありながら人生最後の誕生日を迎えられ、自宅で過ごされ、少し短かめではありますが本人は天寿を全うされたと思います。どんな生活スタイルの人でも一人の人としてお金のつながりだけでなく、人間として心のつながりをもう少し差し上げたかったと思ってなりません。
  13. 作業療法士
    ご本人に寄り添いながら、ご本人にとって何が一番大切なのかということを考え、私はどういったアプローチをすることができるかを考える良い時間となりました。また、多職種の方々の貴重な意見を聞くことができとても勉強になりました。
  14. ヘルパー
    入浴でも関わらせていただいたお客様で、自分たちが見えないところで多くの関係者の方が動き連携を取られていて、良い支援の形になったのではないかと感じました。また家族の方との交流も多く持っていて、少しは本人の不安も和らげることができたのではないかと話を聞いて安心したところです。
  15. ヘルパー
    初めの頃、訪問すると「今日は何も頼むことはないから帰ってや」「毎日こんでいいよ」と毎回言われていました。友人の方もよく来られていて買い物にも連れて行ってもらっていたので、私たちヘルパーの必要性がなかったようです。入浴も勧めましたが「自分で入る」と言われ、浴室の掃除のみ頼まれていました。日を追うごとに少しずつ変わっていき、毎日ヘルパーが来ることも受け入れていただき、食べたいものの買い物や手浴、足浴や清拭を行うことも希望されるようになりました。帰る時には「ありがとう」とのお言葉もありましたが、訪問時には不機嫌で話もしていただけないこともありました。私たちヘルパーは、ご本人様にとって何だったのだろうと思うことがありました。娘様の話やお写真を見せていただいたりすることもありましたが、ケア自体のかかわりが本当に少なく、自分の無力さを痛感しました。
  16. ヘルパー
    ヘルパーとして支援内容等、制限があるため不満があったのではないか、ヘルパーとしての支援内容の見直しはどうであったかと考えさせられました。医療的な内容が中心である検討会ではありますが、本人とヘルパーとの関わりが見えてないのが残念です。少しの時間ではありましたが関われて良かったと思いました。
  17. ヘルパー
    点滴を強く希望される方へ医療機関関係者の考えや利用者様の希望を踏まえての対応を教えていただき、支援させていただく周りのたくさんの方の連携が大切だと改めて確認できました。訪問介護でできることは限られていますが、できることを懸命に努めていきたいと思います。
  18. ヘルパー
    独居であり、不安や恐れがある中、ご家族や友人に見舞われ、最期まで自宅で過ごされたこと良かったです。限りあるサービスの中、ご本人の要望にできる限り応えられ、外出も叶えられ素晴らしいと思いました。コーディネーターやケアマネさんをはじめ、ヘルパーとして関わらせていただいたこと感謝いたします。
  19. ヘルパー
    今回のケースは、家族関係が複雑であったが、最期の関わりとしては、ご本人にとっては会いたい方には会えながら迎えられたことが素晴らしいと思いました。家族様が直接支援されるかどうかの聞き取りがなかなか難しいと思いましたが、確かにご本人、ご家族にとって直接ふれあうことでまた違った関わり、心のつながりになったのかなと思い勉強になりました。今回のケースの方も訪問入浴で訪問させていただきましたが、ご家族様の写真を飾られていたのが印象的でした。
  20. 医師
    在宅医療を継続するためには、病態に応じた介護力、看護力、療養環境が重要と言えますが、在宅で療養したいと願う療養者自身の明確な意思、意欲が前提条件です。そういった意味からも、がん緩和の経過中、医療者の立場からは点滴は原則控えるという価値観がありますが、このケースでは療養者の明確な意思があり、そのような意味から輸液療法を継続したことはよかったのではないかと思いました。多職種協働、地域連携、24時間365日の切れ目のないサービスによって支えられていることを実感した症例内容でした。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006