第77回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB開催
    八幡浜医師会館、八幡浜市保健センター、伊方町役場で放映
  2. 日時:令和2年12月4日(金);午後7時~8時30分
  3. <症 例>
      60歳代 女性
      卵巣癌
    <発表者>
      座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
      ①家族状況などの説明
       八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
      ②症例発表
       中野医院 中野 憲仁 医師
      ③訪問看護の経過について
       八幡浜医師会訪問看護ステーション所長 坂本 美恵子 看護師から

<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点とコメント>

  • 若い女性で、卵巣癌に起因し大量腹水貯留がご本人を苦しめた。腹水を除去することで食欲が回復しまた生きる希望となった。腹水穿刺について中橋先生から緩和ケアとしての腹水のコントロールについて、ガイドラインの要点をご教授いただいた(以下のPDFファイル)
    PDF「腹水穿刺について」ダウンロードしてご参照ください

  • 腹水量が増えることで腹筋の緊張による苦しさもある。このような場合モルヒネが奏功することがある。
  • 最初のカンファレンスでは、患者さんを取り巻くすべてのご家族と十分情報共有を図ることが重要。キーパーソンとなる方が誰なのかも把握しておくこと。
  • 愛媛大学産婦人科主治医、看護師からの入院治療中の様子や、ご意見をいただいた。
  • <職種別参加者数>

    合計  67名
    医師 9名 社会福祉士 2名
    歯科医師 2名 ケアマネ 12名
    保健師 3名 介護 14名
    薬剤師 8名 その他 2名
    看護師 14名 事務 1名

      <アンケートから>
      以下に参加者からのメッセージをまとめました。

    1. 薬剤師
      薬剤師の立場としましては、訪問薬剤師はおられたのでしょうか。内服のコンプが悪く、しかし、麻薬の効果もあるとのことで、外用の提案ももう少し早くできればよかったのではと思いました。
    2. 薬剤師
      腹水に関しては、従来は「治療を諦める」というサインだったようですが、少しずつ捉え方、考え方も変わってきていると思いました。前回の輸液療法の考え方においても、同じだと思いましたが、各々の心身ともに状態の見極め方が重要だと痛感します。やはり答えはひとつではないのでしょう。
      薬に関しては、痛みの訴えとは、難しいものだと痛感します。セルシン、デパスの使用の意義、時期を考えなければならないことを忘れずにいたいと思います。
      今回も年齢の近い人の症例で、どれ程の覚悟をもって自分の人生の終わりに向き合っていたのだろう、その人の周りの家族の方々の心情はいかほどだったのだろうと考えさせられます。ただ親子の形は数多く、色んな形があるのだろうと思われます。
    3. 看護師
      50才での発病死亡で3年半と長く辛い日々だったと思いますが、自宅で子供さんたちに見守られて幸せだったと思います。私は元病院勤務をしていて、酸素のために入院を余儀なくされていた時代で、その後、HOTで自宅で酸素を行っていて、また腹水穿刺を2ℓ~4ℓ、自宅で行える時代になり、それだけのために入院しなくてもよくなったこと、不安なく医療処置が行え、それをサポートする訪問スタッフの質の高さに感謝します。
    4. 保健師
      この症例を通してご本人様の強い意思が読み取れました。夫をガンで亡くし、病院で過ごしたこと、看病が大変だったことも含め、家族に迷惑をかけないという思いが伝わってきました。そんな母に対し、子供さんたちがどう関わったかについては、意見交換の中でも話がありましたがすごく興味深く聞かせていただきました。腹水を抜くことでこの人が当たり前の生活を亡くなる数週間前まで送れており、腹水穿刺はご本人様のQOLを高めさせるうえでも有効だったのではないかと感じました。
    5. ケアマネ
      50代後半というと私と同年代となります。もし、自分がこの症例の方だったら全てにおいて自分が決めることができたのだろうかと考えました。この方の実母はまだご健在であることを考えたとき、自分を生み育ててくれた母親に対して申し訳ない気持ちもあったのではと思いました。親より先に逝ってしまうことは辛いことだからこそ、自分の子供たちの前では弱さを見せずに最期まで母としての役割を全うされたのではないでしょうか。残された子供さんたちの中でお母様はいつまでも「肝っ玉母さん」として残っていくと思います。
    6. ヘルパー
      今回の症例は腹水穿刺が頻繁に必要な方でしたが、自宅で腹水穿刺を実施するような症例が増えてくるのでしょうか。従来は病院で実施されていたことが自宅で行われると考えると、我々介護職も様子観察等を含めてレベルアップが必要と痛感いたしました。また、介護職としてその方、ご家族が「どのような終末期を迎えたいか」に対してケアできるよう支援していきたいと思いました。
    7. ヘルパー
      私は知識不足により、いつの時期も水分補給は必要という間違った知識がありました。今回の検討会で、ターミナル期には水分補給を中止して、乾かす、枯らすという治療法があると知りました。先日、私の義理の父親も肺炎を繰り返しており、治療として1か月絶食していたことを思い出しました。
      現在は医療機関での死亡だけで約75%、介護施設や高齢者住宅で看取られるケースも少しずつ増え、これらを合わせると80%以上を占めていると聞きました。多くの人が「自宅で最期を迎えたい」と希望がありながら実態は、自宅で看取られるケースは全体の約15%にとどまっているのが実際です。
      コロナの影響で病院は面会時間の制限、面会者の県外からの遮断、人数制限がある中でできる限り希望であれば在宅での終末期を支援し、その人らしい最期を迎えられるように医師、看護師、介護士、ご家族との連携が大事だと改めて勉強になりました。
    8. ヘルパー
      特に印象に残ったのは、「自宅での生活には不安があるが支援者がいる。環境も整っている。何でも話せる先生がいる。」という本人の言葉でした。身体的には苦しいことも多かったと思いますが精神的には救われていると感じることも多かったと思います。たくさんの方がこのような環境で治療できるよう、私たちも在宅で支えていけるよう努力していきたいと思います。
    9. ヘルパー
      今回の症例では、ご本人がはっきり意思表示ができていて、今まで通りの生活を望んでいることが生きる証になっていたように思います。そのサポートをどうしていけばいいのかが難しいところがあったと思います。家族との関係性も大事なのがすごくわかりました。
    10. ヘルパー
      在宅でできる医療処置について、ドクターやナース等医療関係者の方々も果たしてこの処置、対応が正しいのだろうか?コーディネーターの方の思い、ご本人、ご家族様との関りや介入受入れの困難さ等、係る皆様それぞれがそれらを抱えながらも、ご本人様の生に対して重大な関心を寄せてご対応されていたことが伝わってきました。何が正解で何が正解でないのかはそれぞれの人として、またそれぞれの職種の役割と立場として、価値、倫理の違いが必ずあり難しいテーマだとつくづく感じます。援助の必要な方を通じて、その方への身体的、精神的サポートだけに留まらず、人の喜びや苦しみに寄り添い、生死を共に考えることができるよう、悩んだり、支えあったり、癒されたりする人間的な関係づくりを大切にして、ケアする人自身も自らを育て「人と人の関り」として「ケア」を考えてまいります。
    11. ヘルパー
      お母様急変時、ご家族も現状を把握できない状況に陥ったように思えました。訪問看護の導入も時期を考え、早め、早めの対応(ご家族も一緒に病気の理解、お母様の状況変化を把握、対応するために導入時の担当者会議には家族の参加)が必要だと思いました。病気をおもちのお客様、ご家族様の介護状況や健康状態にも配慮し、初めて介護を担う介護者へ生活全体を考えた介護指導、精神的な支援により介護負担の軽減が図れるような支援を行います。
    12. ヘルパー
      私事ではありますが、数年前に90歳の祖母が乳がんを患いました。祖母は認知症です。術後の病院生活では点滴の管を嚙みちぎろうとしたり、離床することなど毎日でした。病院での生活が困難な為、自宅で叔母が主介護者として今も頑張ってくれていますが、山の中に自宅があることもあり、利用しているサービスは限られています。今回の症例とは程遠い内容ではあり申し訳ありませんが、今回参加させていただいたことで祖母が何を思い、何を感じ、何をしたいかを考える為のとてもよい機会をいただきました。ご本人だけでなくご家族様の「想い」に一緒に向き合い、一緒に考え、一緒に行動に移すお手伝いはできると思っています。病気を患われている方のみならず、私たちが関わらせていただくすべての方にとって最善が何なのかなど、お一人お一人に常に向き合う姿勢を忘れずに行きたいと改めて考えるきっかけになりました。
    13. 福祉用具専門相談員
      今回の症例は、自分が福祉用具の面で関わらせていただいた利用者様でした。ベッドセット、手すり、車いす等を搬入し関わらせていただきました。搬入から4日程度の間で短期間でしか関わられなかった状況でしたが、亡くなられた当日、お昼前に清水CMより、マットレスが固いので柔らか目のマットへ交換依頼の連絡を受けたのですが、瀬戸・三崎方面の担当者会で移動中であったために直ぐに対応できず、瀬戸からの帰りに他の利用者様が急死し、お通夜のため早急にベッド他の用具回収依頼も飛び込み、同僚の営業員に八幡浜市内でマットレスを搬送してもらって夕方の搬入になってしまった状況でした。翌日、清水CMから昨晩亡くなられたとの連絡を受け、そのときに少しでも早くマットの交換ができていれば痛みを軽減してあげられたのではないかと、心苦しくなったことを思い出します。今後に活かしたいと思います。
    14. ヘルパー
      症例検討会資料に「ご本人が夫の介護で大変だったので、子供には迷惑をかけたくない気持ちがあった」とのことで、子を思う母の気持ちが理解でき、母としての役割を全うしたいという気持ちが伝わってきました。今、息子さんたちはどう思っているのか、ご本人は何か後悔していることはなかったのか等、後になって考えます。この方は、腹水穿刺をして身体が楽になれば、やりたいことをやれるというプロセスを大事にしていたと思います。私は、家族に貢献できるという幸福感を得られていたのではないかと思います。
    15. ヘルパー
      訪問入浴の中でも体重の測定をご依頼いただくこともあり、今回の腹水でなくても、一つの変化として気づきの一歩になるので、今後注意していきたいと感じました。また、最期のタイミングの関わり方も言動に注意し、本人、ご家族様との間で少しでも良い時間を作ることができるような関わり方も身につけていきたいと思いました。
    16. ヘルパー
      ご家族との関りでは、色々と考え深い症例で勉強になりました。腹水穿刺をすることで、カレーを作り、食べることができて、良い緩和ケアだったと思います。残されたご家族様は、多分、後になって思い起こすこともあるのだろうと思います。
    17. ヘルパー
      ヘルパーの支援がなかった事例でしたが、腹水穿刺をすることによって、痛みがなくなり食欲が出てくるということで緩和されているので良かったのではないでしょうか。通院ではなく自宅にて腹水穿刺ができていたら、また変わった緩和ケアができたのではないでしょうか。
    18. ヘルパー
      サービス事業所として精一杯のサービス提供をすることはもちろん、改めて一回のサービスの重さと役割について考えさせられました。地域が一つになり、よりよい介護、医療を提供するために取り組むことで、更にお一人お一人に寄り添うケアができることは、素晴らしいことであり、またぜひ参加させていただきたいと思います。
    19. ソーシャルワーカー
      在宅生活をサポートしてくださった皆様と顔を見ながらケースの振り返りをさせていただき、多くの学びを得ることができました。入院中は「できたら自宅で腹水穿刺をして欲しい」と希望されていたので、もう少し訪問診療、訪問看護等在宅サービスについて伝えることができていたら、また違う形となっていたかもしれないこと、これまで頑張って治療してきた本人の気持ちや、家族に対しての気持ちももう少し丁寧に伺えたら良かったと思いました。これからの支援に活かしていきたいです。
    20. 看護師
      担当していた患者さまの在宅での過ごし方等が聞けまして、退院後の様子を知ることができ良かったと思います。
      今後同様の処置が必要な患者さまの時には参考にしていきたいと思います。また、家族看護については再度熟考したいと思いました。担当の患者さまのご家族は、普段の入院時から病棟に来られることも少なく、現在の新型コロナ蔓延禍で面会禁止になっている中、十分に家族への関りができていなかったと感じます。今後在宅療養になられる患者さまの家族についても、連携が図れるようにしていきたいと思いました。また改めて学びがありました。
    21. 医師
      腹水穿刺は、頻回なら留置カテが頻回な穿刺をしなくて済みます。刺し入れ部の感染はほとんどみられません。カテーテルにside holeを開けておけば、フィブリンが周囲について出ないのを防止できます。私は20Fr~18Frに三方活栓をつけて止めます。

    愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

    「えひめ在宅緩和ケア」

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    県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
    許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
    2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

    掲載許可番号
    d20190822-006