第78回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
    八幡浜医師会館、八幡浜市保健センター、伊方町役場で放映
  2. 日時:ロロ00年0月0日(0);午後7時~8時30分
  3. <症 例>
      80歳代 男性
      #1、非代償性肝硬変(B型)、腹水、胸水
      #2、2型糖尿病 #3、高尿酸血症 #4、高血圧症 #5、心室性期外収縮
    <発表者>
      座長は、中野医院;中野 憲仁 医師
      ①家族状況などの説明
       八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
      ②症例発表
       旭町内科クリニック:森岡 明 医師
      ③訪問看護の経過について
       八幡浜医師会訪問看護ステーション:松平 直美 看護師から

<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

    <議論の要点とコメント>

  1. 看護師、介護士の立場からご本人、ご家族への支援について議論された。長い在宅闘病生活の中で、全身倦怠の軽くなるときや最悪になるときなど波にあわせた看護・介護内容に工夫を要した。特に「しんどい時」の底にある時、気にいった信頼関係のある方しか会うことができず、それができる環境を関わるスタッフ協働で構築した。
  2. 経過中、妻の言葉「元気になって嬉しいけど怖い」に隠された意味をくみ取る必要がある。「怖い」という言葉にはいろいろな意味があるけれど、けっして介護がしんどいという意味ではなく、「夫を失いたくない」という切実な思いがある。
  3. 肝性脳症に、昔から使用されているカナマイシンを試みることもある。
  4. 肝硬変の末期は経過や予後予測が難しく、家族などの介護者も含めて精神的な負担が大きいという特徴がある。早い段階で治療のゴールを話し合い、患者・家族の価値観に基づいた治療・ケアプランを立てていくことが重要と思われた。

<職種別参加者数>

合計  44名
医師 10名 社会福祉士 1名
歯科医師 1名 ケアマネ 8名
保健師 4名 介護 5名
薬剤師 5名 その他 2名
看護師 7名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    ご本人様が奥様に感謝の言葉をかけながら、最期は一緒に過ごされたこと、すごく素敵な人生だったと感じました。その人生を支えた先生やスタッフの皆様の連携と丁寧な関りがあったことで達成されたこと、とても勉強になりました。私もお客様との関りの中で「人は弱みを見せない」「いつも頑張っている」方々と出会うことが多々あります。「頑張りの中のちょっとした瞬間に本音が出る、これに気付いて一緒に歩むことも大切」というアドバイスが心に強く残りました。
  2. ヘルパー
    今回、現場で一番関わった方々がうまく連携できていて、感動的な症例だったと思います。ご本人の奥様は旦那さんの身の回りのことはすべて自分でしたいという自分の居場所、役割のようなものがあり、娘さんにも来てもらった時もあまり頼ることなく母親、妻としての役割を全うしていたと思います。退院時にはいつどうなってもおかしくないと言われていた方が、目標を見つけ意欲的になり、在宅で家族と一緒に過ごすことの大切さを感じました。ただ、奥様の、ご主人がいなくなるという恐怖を考えたくないという気持ちもわかります。奥様とヘルパーとの会話で、涙しながら相談されたと聞いております。その時に傾聴することで少しでも奥様の不安面を軽減できていたのならうれしいです。
  3. ヘルパー
    訪問入浴として何度か訪問させていただきました。ご夫婦そしてワンちゃんが喜んで迎えていただきながらケアをさせてもらったのが印象的でした。入浴車で帰る際は、いつも窓の方までこられ、手を振っていただいたご夫婦の笑顔は忘れないです。ケアマネとしても、今後対応させていただくことがあるような事例でもあり、皆様のご意見がとても参考になりました。
  4. ヘルパー
    ヘルパーとして身体的介護だけでなく、家族との関係性が大切であることがよくわかりました。一緒に日々を生きたような感覚にさえなりました。これから先もお客様とお客様の家族とのつながりを大切に支援できればと思っています。
  5. 福祉用具専門相談員
    本人が自分のことを受け入れながらも、そんな中でも「次の目標」を見出そうとされ日々を過ごされている状況の中、それに寄り添う家族様への寄り添いが今回は特に必要なケースではなかったかと個人的には思いました。本人はどこか達観したところがあったため、本人よりも妻へのフォローの必要性が高い印象を受けました。本人はもちろん、周囲の人たちへのケアの重要性を改めて感じました。
  6. 保健師
    ご本人、ご家族の気持ちに寄り添いながら支援を続けておられた様子がよく伝わってきて、人としての尊厳を守る看取りのあり方を学ばせていただきました。自分たちの地域でもこのような貴重な経験の共有、積み上げができる機会がいつかできればと思います。
  7. ヘルパー
    今回の事例は、期間が長く、ご本人の意思決定ができていた。また、ご家族もそれなりの覚悟ができていたような感じでしたが、でも実際に亡くなられると寂しいと思います。訪問入浴を使うタイミングが難しく、ターミナルの方法だと、1回とかで終わってしまうことが多く、入れなかったこともたくさんあります。だから私たちは頼まれたらすぐに入れるように心の準備はしています。
  8. ケアマネ
    今回の症例では、ご本人様やご家族様に寄り添うことの大切さを実感しました。ご本人様やご家族様に共感し寄り添うことで、情報収集を行うことができ、多職種との連携を行うことができるように思いました。また、医療との連携を行うことでよりご本人様の症状についての情報を知り、支援を行うことができたと思います。腹水貯留状況や対処、治療等についてのご意見を伺うことができ良かったです。
  9. 作業療法士
    今回の症例で、ご本人様やご家族様に寄り添うことの大切さや、会話の中の言葉からどのようなメッセージが込められているのかを考えながら、自分はどのように寄り添うことができるかを考える時間となり、とても勉強になりました。
  10. 薬剤師
    本人や家族の希望を尊重しつつ、生活に重点を置いて、できうることを考えて実行していく各分野のスタッフさんに感心し、尊敬します。
  11. 薬剤師
    患者さん本人の生活を支えるという森岡先生の意見は、大切だと思いました。医師、看護師、ヘルパー、環境整備をした業者さん、それぞれの視点で本人の生活を支えていて良かったと思います。奥様とヘルパーさんの関係がとてもよかったことに感心しました。
  12. 薬剤師
    最初から覚悟を決めておられた方の症例で、また一つの選択肢を学んだと思いました。生活を支えることに徹し、全体をゆったりと包み込みながら俯瞰することの大切さ、難しさを強く感じました。
  13. 医師
    「非がん疾患」の緩和ケアを考えるとき、身体的な苦痛・痛みに対応することはもちろんですが、社会的な痛み、心理・精神的な痛み、スピリチュアルな痛みに対応することが重要になってきます。本症例でも経過中、うつ気分・不安が強くなり、希死念慮が顕在化した場面がありました。これにどうやって関わり、より良い支援が実践できるかは、さまざまな症例を通して多職種連携で今後も勉強を重ねることが重要と思います。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

PDFを見る

県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006