第81回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和 3年4月2日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
70歳代 男性
<傷病名>
原発性肺腺癌、転移性脳腫瘍術後再発
<発表者>
  座長は、矢野脳神経外科;矢野 正仁 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会:清水 建哉 コーディネーター
  ②症例発表
   三瀬医院:片山 均 医師
  ③訪問看護の経過について
   訪問看護ステーションSetsuko所長 菊池 世津子 看護師から
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点とコメント>

●本人の訴え(呼吸が苦しい)と、客観的データ(SpO2は正常)の乖離をどのようにとらえ、対応すべきか。本人の訴えを受容し、ステロイドや塩酸モルヒネ(オプソやアンペック坐薬など)をうまく使う必要がある。

●「せん妄」の対応の仕方について。せん妄は「可逆性」と「不可逆性」の鑑別が必要で、可逆性せん妄であれば、原因の除去と対症療法としての抗精神病薬により対応を。不可逆性せん妄であれば、抗精神病薬とベンゾジアゼピン系薬併用により苦痛を緩和する。ただし、ベンゾジアゼピン系薬自体がせん妄の原因薬となることがあるので注意が必要。
等が議論された。

<職種別参加者数>

合計  81名
医師 11名 社会福祉士 5名
歯科医師 0名 ケアマネ 18名
保健師 7名 介護 14名
薬剤師 6名 その他 2名
看護師 16名 事務 2名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    今回の症例は、ご家族様の精神的な負担が強く有ったと思われる中、献身的に看取りをされたことがとても印象的で有った。ご本人も頭痛、体の痛みが有る中懸命に過ごされる様子を感じた。精神的神経症状に対して薬物使用の内容がとても専門的で勉強になりました。 いつも思う事ですが、十人十色のドラマが有り価値観、意向等詳しくアセスメントし対応する必要性を感じます。
  2. ケアマネ
    今回は、医療的な症状緩和についてがテーマのようで、息苦しさなど主観的な訴えとバイタルサインなどの客観的情報がイコールではなく、本人の訴えをいかに和らげてあげるかが重要であることを学ばせていただきました。
  3. ケアマネ
    認知症や脳に障害がある方などは、どこかに苦痛などがあっても、うまく痛みなどを表出できないことがあり、それによりせん妄などに繋がってしまうケースがあります。せん妄だけに捉われてしまうと、その本質が把握できないこともあることを改めて学びました。直接的に支援を行う立場ではないケアマネとして、一歩引いた立場で冷静に判断できる場合もあるかとも感じております。すこしでも気が付いた変化などを医療関係者にお伝えできるよう、今後も医療面についても含めて自己研鑽に努めていきたいと思います。
  4. 保健師
    一つの症例について、こういった症状についてはどのような対応が出来るのか、良いのか等、深く読み取って対応の仕方を学べたので大変良かったです。このように事例を積み重ねることで、ケースに対応する時、より良い対応ができるようになるのではないかと思います。
  5. 保健師
    事例の振り返りを関わった主治医や訪問看護さんと一緒にさせてもらうことで、かかわった関係者の思いや配慮したこと、又、ご本人やご家族の思いをどう受け止め、どうケアをしたかを聞かせていただき、とても勉強になりました。
  6. ケアマネ
    グループホームでは、まだ緩和ケアの看取りを行ったことはありません。介護ではできないことも多く、出来ることは少ないと思っていましたが、私たちにできることを考えさせられました。先生方のお話を聞けて勉強になりました。
  7. 薬剤師
    多職種の方々の見解が聞けて勉強になりました。薬剤師も緩和ケアに積極的に参加していく必要があると感じました。これからは、疼痛緩和で麻薬を使用するケースが多々生じてくると思います。麻薬の管理方法、使用方法、注意すべき副作用の初期症状等で力になれると思います。
  8. 社会福祉士
    亡くなる際に、褥瘡がなかったとありました。いかに手厚い介護をされていたのかが分かりました。不安はあったとのことでしたが、素晴らしいと思いました。
  9. 看護師
    行動・発言1つ1つにも理由や苦痛があることを今一度頭におき、医師と連携をとって苦痛軽減に努めていきたいです。
  10. 保健師
    いつも自分の足りない所に気づかされ、新たな発見があります。薬剤については、自分の苦手分野ですが、疼痛緩和には必要なことだと思いました。家族が何を大切にされてきたのか、どういう家族なのか、どうありたいのか。症状への対応の仕方はもちろん、その背景にある家族の在り方に思いを巡らせた支援についても考えることが出来ました。ご本人・ご家族と向き合いながら関わっていける支援者でありたいと思いました。
  11. 看護師
    BSCの患者に対して、夜間不眠の時に、モルヒネ(オプソ)を使用することが効果があることを学ぶことが出来ました。臨床で医師とも連携していきたいと思います。
  12. ケアマネ
    コーディネーター、主治医、訪問看護、それぞれの視点から発表していただき、とても積極的な検討会であったと思います。ケアマネージャーがどのように本人・家族と関わったのか、どのように支援者との連携を図ったのか、というところも教えていただけると良かったです。症状緩和についてや、がん末期の利用者・家族へのかかわりについても、とても勉強になりました。
  13. 作業療法士
    本人様の思いを聞きながら、家族様とのこれまでの生活や気持ちを読み取り、何が一番大切なのかということを考えることの大切さを感じることができました。今までの自分自身を振り返りながら、これからも利用者様と向き合っていきたいと思います。
  14. 社会福祉士
    治療期から関わらせていただいた症例で、本人が本当に強く希望され、八幡浜に帰られた症例でした。帰られてからの生活、奥さんの介護状況、他のご家族の支援状況、その時々に何を思われながら、どう終末期を自宅ですごされたのか、気になっていました。今回詳細にそういったことをお聞きでき、本当に在宅に帰ることができてよかったと思いました。  伊方から妻の実家に帰ることを決めるまで、何度もご本人と話し合いをして、奥さんと何度も電話でやりとりをしたことを今でも覚えています。その時もエアコンをつける場所やベッドを置く場所など、細かいところも本人に確認していた奥さんの姿から、在宅に帰っていかに力を注がれるか想像ができました。BSCになり、退院直前にはせん妄や失見当も見られ、より厳しいICを主治医から受けられました。それでも、帰れる日を迎えられてよかったと奥さんをはじめ、ご家族みんながおっしゃっていました。  そういった状況を思い出しながら症例検討会に参加させていただきました。中橋先生や吉田さんのご意見も大変勉強になりました。
  15. 医師
    脳転移、癌性髄膜炎の症例は実際に経験したことがなく、間接的ではありますが経過を知ることができてよかったです。
  16. 薬剤師
    終末期の薬物療法について学び直しをする必要性を感じました。添付文書や医薬品集では分からない使い方、そのメカニズムなど学び直します。
  17. 介護福祉士
    利用者様と接するうえでバイタルなどデータに目が行きがちになる時もあるが、データは一つの目安にして会話も傾聴を行いながら本人の医師を一番大切にしようと思いました。 ただ支援を行ううえで難しい部分があるため納得して頂くまで説明し出来る限り利用者様の想いに近づけるような関係性作りが一番必要と感じました。
  18. ヘルパー
    自分ができること、気付きの視点を持つために参考になるご意見をいただきました。最期までより良い在宅生活を送る上で、お役に立てるようにするためにどうかかわっていくべきか、考えさせられる機会となりました。
  19. その他職員
    分かってはいても実際に現場に立つとどこまでご家族様やご本人様に踏み込んで良いものか分からない部分が出てくるのを今回の症例を聞いて再認識しました。口では簡単に「お客様に寄り添って」「ご家族様に寄り添って」と伝える立場にありますが現実とのギャップが生じてしまう事を勉強させて頂きました。ご家族様が「自分達で出来る」と思っていることに対してサービス側から何が出来るのか、今後は現場の方々と一緒に考えて行きたいと思います。
  20. ヘルパー
    今回の症例では、緩和ケアになってから数か月あり、ご本人や家族の苦労がわかりました。家族は、とても親身にケアしていたと思います。つらい時や苦しい時には、訪看さんや主治医の先生やケアマネさんからのお声はとても励まされたと思います。訪問入浴でもただお風呂に入れるだけでなく、ご本人さんの様子や家族さんの心情をお聞きできればと、いつも気にしています。今後も寄り添えるケアができるようにスタッフとも共有していきます。
  21. 医師
    せん妄の捉え方についていろいろな意見が聞けて良かったです。せん妄の理由は、言葉にできない身体の苦しさがどこにあるという考え方にならって、臨床で遭遇したせん妄に対応していきたいと思います。
  22. 社会福祉士
    支援中に家族に介護技術の助言をして関わることができ家族の自信や安心感につながっている良かったのではと思いました。支援者側の介護技術の知識の勉強の機会もあれば良いと思いました。
  23. 訪問看護
    訪問回数を制限された中、電話訪問での介護支援をされたことは本人家族にとって心強かったと思います。呼吸困難感という主観的症状に対しては早めのモルヒネが有効で不安感や不眠の防止にもつながる事を学びました。また認知症や脳疾患により自分で症状をうまく伝えられない方には暴言やふみんとして出現してしまう事もあると聞き実際の現場でも念頭においておきたいと思います。今後の利用者や家族様が穏やかな最期を迎えることが出来るよう他職種の方との連携が重要と感じました。
  24. 看護師
    主観的データや客観的データのうち外野バイタル安定していても主観的な事を改善してあげることが大事ということが新たな学習できて良かった。訪問看護でも他人が来ることの疲れや気遣いがあること、私もしてあげたい、やってあげたいの気持ちが押し付けにならないようにしなければならないとハッとしました。
  25. 薬剤師
    緩和ケアではまず身体の苦痛を取ることが大事であること。身体の苦痛が怒り不眠せん妄に繋がっていることがあるという事が分かり勉強になりました。
  26. ケアマネ
    私も、この家族はなぜ、ヘルパーの支援をずっと拒否されたのだろうか・・・と疑問に思っていました。Setsukoさんの話から、亭主関白だった?夫を最期まで看取ることは妻としての役目、そして娘さんは最期の親孝行として受け止めていたのでは…と思いました。
    コロナ禍の中、病院は面会禁止で会えなかったり、会えたとしてもリモートであったりで触れ合うことなく亡くなるケースが多い昨今、こうして自宅で命を全うすることができたことは本当に良かったと思います。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006