第83回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和3年6月4日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
80歳代 女性
<傷病名>
肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)、誤嚥性肺炎、慢性呼吸不全
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   居宅介護支援事業所:井上 英津子 ケアマネージャー
  ②症例発表
   三瀬医院:片山 均 医師
  ③訪問看護の経過について
   八幡浜医師会訪問看護ステーション 坂本 美恵子 看護師から
  ④ケアマネージャーからの報告
   居宅介護支援事業所:井上 英津子 ケアマネージャー
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点とコメント>

●NIPPVの適応と、導入にあたってのACPの進め方など。ACPは、何も在宅医療が始まってからのものではなく、それ以前からプロセスとしてすでに始まっていることを理解する必要がある。

●「非がん症例」「がん症例」にかかわらず、家族が在宅医に何を望むか、どんな風に過ごしたいか、を十分くみ取ることが大切。

<職種別参加者数>

合計  81名
医師 13名 社会福祉士 2名
歯科医師 3名 ケアマネ 20名
保健師 4名 介護 6名
薬剤師 9名 その他 3名
看護師 20名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 薬剤師
    終末期医療での医師、ケアマネの考え方を伺え勉強になりました。ご本人、ご家族にとって限りある時間の中で、物事を決定していくことは大変なことだと思います。医療・介護を受ける立場にとって、より良い選択肢を提示することが必要だが、難しい事だと思いました。
  2. ケアマネ
    肺非結核性抗酸菌症という病気について初めて知りました。コロナ禍における、サービス自粛及び訪問自粛について取り上げていただき、とても考えさせられました。肺の病気ともなると、コロナ感染リスクも如何に軽減しながら、日々のケアに入らなければならず危険との隣り合わせで、ご支援されていたスタッフの皆様のご尽力に頭が下がる思いです。書面だけで拝見するのに、「どれだけつらい思いをされたことだろう」と思いをはせていましたが、デイでのリハビリの様子を動画で流していただき、ご様子をうかがうことで自分の中で想像していたこととは違う様子で頑張っておられる姿であり、この方の生きようとする生き様を感じることができました。とかく「個人情報」と言われる世の中ではありますが、ご承諾を得ることができれば、画像でのご様子等も学ばせていただければと思いました。
  3. 医師
    今回の事例は大変興味深く、これからの緩和ケアのあり方(非がんの緩和ケア)を考えるすばらしい発表だと思います。
  4. 薬剤師
    今回の症例は肺非結核性抗酸菌症でしたが、クラリスロマイシンとエサンプドールに耐性があったとのことでした。薬剤師としては、いかに耐性菌を作らないか、抗生剤の適用使用に関わっていけるかが大切だと思いました。今回の症例の方のご家族が看取り介護を振り返って「3人の時間が過ごせたことは本当によかった」と仰っていたので最期をどう過ごすかということは重要なことで、在宅の必要性を感じました。また、私たちが終末期に関わる時間は短いものですが、最期の大切な時間をどのように支援するかが重要だと思いました。そのためにも本人、ご家族とコミュニケーションをとって、本人が今まで生きてきた歴史を知り、本人やご家族に寄り添った良い提案ができるかが大切だと思いました。
  5. 看護師
    ケアマネさんの利用者に対する関わりを知りことができ良かったです。ケアマネさんが一生懸命、家族さんに寄り添っている姿を知り、私たち看護師も精一杯関わり、連携を取りながら支援する大切さを学びました。また、呼吸器疾患の方のケアについて学ぶことができました。
  6. 薬剤師
    武田医師が仰っていた、在宅に送ったらそれで終わりではない。確かに私も思います。そのつなぎ目での、入院時、退院時の情報共有の重要性と、その後の経過もしっかり追っていくことが大切だと思いました。
  7. ケアマネ
    ケアマネとして担当になったその日からを見て、今後の利用者様の生活を考えるのではなく、担当になるそれ以前の、ずっとずっと昔からの利用者様の生活をアセスメントすることで、今後を一緒に考えることがとても大事だと感じました。日々の仕事でどうしても、医療の分野は、知識的にとても薄いので、利用者様が望む生活にするためにはどこに相談、どんな医療機関を活用すれば良いのか分からない。自宅で看取りとなる場合、利用者様、ご家族様の望む生活を実現するには、どの医師に相談すれば良いのか等もよく分かっていない。今後、医療分野の知識を共に、いろいろなことを相談できるよう病院等と繋がりを持つことが大変必要だと思いました。
  8. 介護支援専門員
    非がんのケースではありましたが、今回のお話の中で、どんな生活を送りたいか、終末期に入ってからの過ごし方、どう過ごすのか、普段から本人、ご家族の想いや考え方を聞いておくことで、治療の方向性なども変わってくることを感じました。本人の元気な時から関わることも多いので、日ごろから本人や家族と話をしたり、どんな生活を送ってきたのか聞いたりして、終末期のケアが必要になった時、よりよいケアにつなげていくようケアマネとしてできることをしていきたいと思います。
  9. ケアマネ
    この在宅緩和ケア症例検討会では、同時進行で支援者が関わり始めるケースが多いのですが、今回のケースは、井上CMが最初にご本人の担当CMとして関わっている点が、今までのケースと異なっています。急速な経過をたどるがんとは異なり、認知症の進行がある中で時間をかけてご本人とCMは信頼関係を築いてこられたと思います。ご本人・家族の希望や大切にしていることを尋ね、共感し、理解することはいい支援をしていく上で、とても大切であること、後から追いついた支援者側も関わりの期間の短さにこだわらず、親子関係の歴史、ライフヒストリーを知ることでより良い支援が提供できることを学びました。
  10. 社会福祉士
    娘さん二人が母親のことを大切に思い、戸惑いながらも最期までみとることができて良かったと思いました。今回の事例では、他に同居する長女の夫や数回帰省した孫が、本人の見取りにどのように関わり、どのような思いがあったのかなと思いました。孫の帰省でサービスやケアマネの訪問がストップして、本人や家族は大変な思いをしたと記載がありましたが、孫の帰省は祖母に対する思いからだったのか、他の理由があったのかも知れたら良かったです。
  11. 福祉用具専門相談員
    今回の症例では親子の関係、絆といった部分が大きなテーマとなりました。特殊な病例でもありましたが、介護力という視点からでは知識が豊富とは言えませんが、姉妹がお互いで最大限支えあい、母への感謝の思いが痛いほど伝わってきました。コロナの影響がありお孫さんの帰省のたびにサービスの提供ができず関わられたスタッフ、事業所様も、もどかしさを感じていたと思います。その中にあって在宅で最期まで、ご家族で過ごされた時間は大切なものになったと思います。自分も今後、その大切な時間をどう作っていけるかを考えさせられました。
  12. ケアマネ
    私の担当の方もNIPPVは「こわい」とのことで「外してくれ」と指示通り実施できず、楽になるためにどうしてと疑問でしたが、他にも同じような方がいることを聞いて納得できました。
  13. 作業療法士
    今回の症例検討会に参加させていただき、患者さまの終末期に関わることの重要さを感じ、これまでどのような生活をされてきて、家族様とのこれまでの生活史も含めて、自分がどのような関りができたかとても悩みました。検討会の中での多職種の方々の意見がとても参考になり、自分の考えの幅を広げることができました。
  14. ケアマネ
    私たちが関わり始めてからではなく、今までの生き方、生きた歴史を知ることの大切さを再度確認させていただきました。また、ご本人やご家族の姿を通して、私たち支援者も成長させていただくことや気づかされることもたくさんあります。そのような経験を次からの関わりに繋げていけたらと思っております。新型コロナウイルス感染予防のため、訪問できない時期もありご苦労もあったかと思います。これからもこのような状況が発生することも予想されます。私がケアマネとして関わることとなった場合、訪問できないからこそ、よりご家族が疲弊していないか、不安が強くなっていないかの確認をいつも以上にして行きたいと感じました。
  15. 医師
    患者様の死が近いことが予期されるとき、実際に死別を経験する以前から家族が悲嘆を感じるとする「予期悲嘆」という概念があります。患者様の死別過程に直面した家族が、心理的ストレスを抱えるのは想像に難くありません。このような予期悲嘆が想定されるとき、医療スタッフはどのようにケアを提供すべきかが常に問われています。今回の非がん症例では、井上英津子ケアマネージャーが在宅医療導入前より関わり、家族の思いもよく理解されており、適切なケアの提供、医療の提供が計画的に実施されました。片山先生、坂本看護師の適切な判断で医療的処置もタイミングよく行われ、ご家族の安心度は高く、「予期悲嘆」もかなりの部分軽減されたのではないのでしょうか。「がん症例」にはない、新鮮な症例報告でした。勉強になりました。ありがとうございました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006