第84回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和3年7月2日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
60歳代後半 男性
<傷病名>
膵尾部癌
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所:清水 建哉コーディネーター
  ②症例発表
   中野医院:中野 憲仁 医師
  ③訪問看護の経過について
   訪問看護ステーションいまいスマイル: 松本 千恵子 看護師
  ④調剤薬局の発表
   かみやま薬局:西 由佳理 薬剤師
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点とコメント>

●予後の判定に苦慮したことなど、病院主治医からの報告。

●在宅医療にかかわる薬剤師に期待されること。

●患者さんの態度や言動の裏に隠された社会的な痛みやスピリチュアルな痛みを理解すること。

●在宅医療を導入する段階で、医療費の限度額制度や予想される負担額などについてまず初めに提示しておくことの重要性。

<職種別参加者数>

合計  77名
医師 11名 社会福祉士 5名
歯科医師 1名 ケアマネ 17名
保健師 5名 介護 4名
薬剤師 11名 その他 2名
看護師 20名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 医師
    初めて参加しました。感激しました。内容の広さと深さが半端じゃなかったです。もっと早くから参加すればよかったです。ベテル病院の方、吉田さんのここまで突っ込んだ意見には驚きました。もし生前にこのようなカンファレンスがされていたら、どうだったのだろうと考えました。現在の八幡浜の訪問看護のケアカンファレンスは有名無実で、私は参加したことがありません。医師は無視されているのでしょうか。私は参加したいです。他の医療施設の場合はどうなのでしょうか。緩和医療や死について別の場所でも色々討論されることを期待します。
  2. 薬剤師
    今回の症例となった患者様は、かみやま薬局にお薬を取りに来られる方なので、薬局で話されていたことと、他の職種の方と話されていたことの違い等がわかって良かったです。薬局で得た情報を積極的にフィードバックしていく必要があると思いました。気軽にフィードバックできる場があると良いと思います。薬剤師としてどれくらい在宅医療に関わるかは今後も検討していく課題だと感じました。
  3. 薬剤師
    患者もしくはコメディカルの方々へ、どうすべきか問うのではなく、薬剤師ができることを提案し、かつ相手のことを考え行動することが重要と考えます。
  4. 薬剤師
    議論でもあったように、ジェネリックへの変更の推奨や残薬管理だけに留まらず、情報共有が重要であると改めて感じました。特に医師に話していないことを薬剤師には話せるということもあるので、そういった患者さんの声を聞き、より良い医療につなげることが医療連携の理想であると思います。
  5. ケアマネ
    私も地域から孤立し、サービス拒否、プライベートの話は一切しない、ましてや金銭的なことに関しては話してくれないといったケースを数件担当させていただいています。将来的な話もなかなか現実味がわかないようで、ある程度の話をするものの、なかなか理解が得られない状況です。今回の事例のように最期を迎えることで、実際に家族が困惑されることが起こる可能性も高く、最初が肝心であることを念頭に置き、自分の関わり方を変え工夫することで、ご本人様やご家族様へのご支援ができるようにスキルアップをしていかないといけないと強く感じました。「お金のことの説明もケアの一つである」という先生方のお言葉にはっとさせられました。目の前のことに一生懸命になりすぎず、ご本人様やご家族様のことに向き合いながらご支援していきたいと感じました。
  6. ケアマネ
    医療費や利用料の説明もケアの一部であることを、これからより一層実践していきたいと思いました。
  7. 看護師
    様々な角度や視点からの情報や気持ちがわかり、多職種との連携、情報共有の大切さを改めて感じました。金銭面での不安や負担の軽減につながるには、まずは自分が十分理解して知識を深めていきたいと思いました。
  8. 薬剤師
    お薬手帳については、手帳に記載されていない薬(OTCを含む)も確認するようにはしていますが、院内処方や入院時処方が記載なく困ったことがあります。患者さんには薬のヘタを貼っても構わないので教えていただけるよう頼んでいます。
    患者さんのご希望があれば薬局で情報を集約して「重複投薬等報告書」を提出することができます。手間のかかる報告書ではありますが、薬局のメリットも色々ありますので、必要な患者さまがいれば対応できます。薬局からの報告で減少に繋がった事例は、かかりつけの患者さんですべての処方箋を持ってきてもらえた患者さんで多いです。   在宅対応については、1回520円(月4回まで)で対応可能です。
  9. 医師
    どのように在宅診療が進められ、各職種の方が関係しているのかがよくわかり、今後の課題もみえ、有意義な検討会でした。
  10. 看護師
    事例について、多職種で話し合うことで、自分では考えられない方向から検討することができ、勉強になりました。「拒否する裏にある守りたいものを大切にする」という言葉が心に残りました。
  11. ソーシャルワーカー
    退院する時には、限度額でいくらくらいかかるとか、21,000円ルールについては説明しますが細かい収入状況、介護の予算などは確認不足だったと思います。多職種が関わることで様々な場面で本人の気持ちの揺れ動き、読み取る力など普段気付かない思い等も理解できました。
  12. 看護師
    在宅療養支援に携わらせていただくようになり、なかなかイメージがわかなかったのですが、一連の流れで発表、検討していただくことでよくわかりました。
    患者さん、ご家族の面談時の一言一言であらゆる考えを検討されて支援されていることに気付かされました。経済的なことや制度についての勉強もしたうえで的確な情報提供が必要だとわかりました。
  13. 社会福祉士
    本人の訴え、行動に隠れたニーズ(今回の場合は、金銭面の不安、妻への負担、今後の状況変化への不安)を引き出すことの大切さを改めて実感しました。
  14. 看護師
    急な訪問依頼で対応は大変だったと思います。今回のケースは、訪問看護は必要だったとは思いますが、利用に関しては、本人や家族の意思確認を行い、入るタイミングの検討を行い、もし本人が利用の必要性を感じられない場合は、利用しないという選択もあるのではないかと感じました。
  15. 保健師
    本人と関わったみんなの情報を合わせ、本人の思いがどうだったのかを考えていく中で、はじめは気付いてなかった本人の本当の姿が垣間見られたように感じました。やはり関わる者それぞれが持つ情報や考えを共有し、本人を理解し、関わり方について検討することは、本人、家族を支援していくうえで大切だと改めて感じました。
  16. 社会福祉士
    医療サービスを利用した時の所得に応じた返金についての仕組み等について、一度学ぶ機会があれば嬉しいです。
    本人に対して薬や在宅サービスの提案が積極にされており、本人の選択による看取りがきちんとできた事例ではないかと感じました。周りの声掛けに対して口調が強くなることがあっても、本当にしんどい時は「先生に連絡して」と言われ、本人なりに関わりの中で信頼関係が築けていたのだなと思いました。
  17. 作業療法士
    今回の症例検討会に参加させていただき、利用者の方にとって自分はどういう存在になれるのか、関わりの中で利用者様の悩みや、どういう感情をもっているのかを感じ取ることができるのか、とても難しく感じていましたが、多職種の方々の多方面からの考えを聞かせていただき、今後、利用者様と関わりの中での考え方を広げることができました。
  18. ケアマネ
    今回の事例では、訪問看護の導入のタイミングの難しさがありました。しかし、短い期間でありながらも、大好きな漫画本の話をしてくださったり、食事が摂れない中で、提案した氷を口にされていたりして心を許してくださっている姿がありました。また、グリーフケアで伺った際、「皆さんに協力してもらって最期まで自宅で過ごすことができました。ありがとうございました。」と奥様からお話を伺い、笑顔で迎えてくださったとお聞きしました。早い時期から支援に入れたら違った方向性にもなったかもしれませんが、ご本人たちにとって今回の支援導入のタイミングと皆様の支援が、素晴らしかったのだと感じました。支援導入のタイミングの大切さを勉強させていただきました。
  19. 保健師
    事例を読ませていただいたときは、正直「関わりにくそうな方だなぁ」と思いました。でも、症例検討会に参加して、この方の生活歴を聞き、どんなことを大切にして来られた方なのかを考えた時、全く違った人物像が浮かび上がってきました。サービスの入れやすい人、聞き分けの良い人が「関わりやすい人」になってはいけないと反省しました。
    また、今回、お金の問題ってシビアだなと改めて思いました。愛南町は県下で生活保護率が3番目に高い地域なので無視できない問題だなと感じています。
  20. ケアマネ
    今回の症例検討会では、薬剤師の方が初めて薬剤師としての関わりを報告されました。ケアマネと薬剤師さんとの連携では「(介護予防)居宅療養管理指導」が挙げられます。
    ケアマネは、サービスに関わる各職種からご本人の服薬状況や生活状況を情報集約し、主治の医師または歯科医師、薬剤師へ伝達することが大きな役割だと思っています。ご本人が安心して、正確に服薬できる体制を整えるためには一方通行ではなく、多職種連携をすることが必要です。「(介護予防)居宅療養管理指導」を算定していると、おのずと顔の見える関係つくりができ、きめ細やかにご本人の支援が行えると思います。
    また、栄養状態を確認するためにペットボトルの開閉を患者様にしていただく、という話をされていましたが、このようなお知恵もお聞きでき、ケアマネとしても参考になります。
    お薬手帳」は、ご本人に同意を頂き、拝見するのでご本人の見えるところで、主治医、薬剤師、ケアマネ、その他の職種が関わっていることを知っていただく連携ツールの一つになると改めて感じました。
  21. 医師
    トータルペインは身体的苦痛・心理精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルな苦痛の4要素からなりますが、それらの4つの要素が並列で存在するのではなく、それぞれが影響しあいながら痛みの程度が決まってきます。私たち医療者は、ややもすると身体的な痛みにのみ注目し、オピオイドやステロイドなどの使用方法などに注意が行きがちです。今回の症例報告で、患者さんの態度や服薬アドヒアランスが守れないことの裏に隠れたご本人の思いが、薬剤師との交流の中で明らかになっていく過程に多くのことを気づかされた思いです。身体的苦痛に対応するとき、実は精神的・社会的・スピリチュアルな背景が身体的痛みを修飾していることを常に考えておく必要があることを、あらためて気づかされた内容でした。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006