第87回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和3年10月1日(金); 午後7時~8時30分午後7時~8時30分

<症 例>
  40歳代 男性
<傷病名>
  膵癌
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所:清水 建哉 コーディネーター
  ②症例報告
   伊方町国民健康保険瀬戸診療所:角藤 裕 医師
  ③訪問看護の経過について
   セントケア訪問看護ステーション:所長 松平 直美 看護師
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点とコメント>

●医療資源の少ない過疎地での多職種連携の考え方や在宅医療開始時のカンファレンスなどの意義について。

●「最期まで、家族と過ごしたい」ということこそ、ご本人の死生観であり、そこから在宅ケアの在り様を考えることの大切さについて。

●「町内に調剤薬局がなく、休日時の緊急処方薬の取り扱いについて。

<職種別参加者数>

合計  63名
医師 11名 社会福祉士 3名
歯科医師 0名 ケアマネ 15名
保健師 4名 介護 6名
薬剤師 8名 その他 1名
看護師 14名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 看護師
    今回の症例の患者さんがわりとスムーズに連携できたのは、もともと県立中央病院で角藤医師のことを知っていたので、相談がしやすかったことです。ご本人、奥様も在宅や地域の先生を頼ってくれたことも大きいのですが、やはり顔の見える連携が大切だと思います。事前に清水ケアマネにも相談していたのですが、早く連携をしなくてはならず、状況として治療を続けていく方向になっていたものの、予後に時間がないと感じたので、早く清水ケアマネ、角藤医師が対応していただいたことで、自宅で最期まで過ごせたのだと思います。訪看の方々も大変お世話になりました。本人、家族に寄り添って十分に対応して頂いたと思います。連携した後の様子が聞けれたことは、私自身の勉強にもなりました。
  2. 看護師
    皆様のお話の中に、在宅医療に携わる中で、在宅医と訪問看護の信頼関係がいかに必須であるのかを学ぶことが出来ました。
    以前、私も緩和ケアに携わっておりましたが、患者様がご逝去された後には、自責の念が強く残り、そのことが積もった結果、バーンアウトしてしまいました。現在は、管理の立場から仕事をしている中で、ターミナルケアについて考えております。この課題は、皆様共通のものであることを改めて知る機会となりました。
    ターミナルケアにおいては、ゴールが「人間の死」であることから、マイナスの面が多くなる傾向があるかと存じます。マイナスをなくしていくことはできないと思いますが、少しでもポジティブに考え、これからやってくる多死の時代に向けて、医療者である自分にできることを考えていけたらと思います。
  3. 薬剤師
    状態変化時の対応や痛みのコントロールにおいて、多職種の方の情報共有、連携し緊急対応できる環境作りが大切であると同時に、距離があり訪問するのに時間がかかるケースでの状態変化時の麻薬などの対応が課題であると感じました。
  4. 医師
    過疎地における在宅ケアの実践としてとても勉強になりました。八幡浜の連携が皆さんを繋いでいることを大変たのもしく思いました。この会はどこまで進化していくのか楽しみです。
  5. 薬剤師
    先生が往診に行かれて大変ですので、薬局が行かない理由はないと考えています。そのために待機携帯も持っています。また、処方箋については、やはり手書き処方箋が良いと考えます。そして、その連絡方法はスマホアプリの手帳(ヘルスケア手帳)などの使用も一つかと考えます。
  6. 薬剤師
    私が担当しているかかりつけの患者様の中にも伊方地域の方が何人かいますので、何かあった時、緊急時には何とかしてあげたいと思う一方で、平時については、オンライン服薬指導、郵送対応でなければ難しいように思われます。
    臨時の処方箋発行については、法令順守は担保しなければならないので、患者様宅に手書き処方箋を置いてもらうということは、薬剤師としては絶対にお願いしておきたいことです。この点は電子処方箋の導入で改善してほしいと思います。
  7. 薬剤師
    今回は40代男性で社会資源の少ない伊方町での緩和ケアを受けながら自宅で最期を迎えられた症例でした。デュロテップMTパッチやアブストラル舌下錠やノバミンの使用法について勉強になりました。
  8. 保健師
    今回も支援に関わられた医師、訪問看護師の発表はもちろんのこと、吉田様、太田様の奥の深いお話は、いろいろな角度からの視点、今後へのつなぎ等とても充実したものでした。
  9. 介護士
    コロナ禍の中、特に在宅希望が増えてくると思うので今回の症例もとても良い勉強になりました。ご本人様はもちろんご家族の方も電話一本で訪看さんや先生とつながっていると言う心強さもあったと思います。在宅ケアで少しでも不安が軽減できるようにしていきたいと思います。
  10. 作業療法士
    患者様との関り方やどのような声掛けをしていくのかということの難しさを感じ、寄り添うことの大切さを学ばせていただきました。
  11. ケアマネ
    多職種による活発な意見交換がありとても参考になりました。医師、看護師、ケアマネからの振り返りを行うことで今後のケアに活かすことができるようになると思われました。また医療職ではない者にとっては病状の変化による対応などについての理解を深められる研修だと思います。
    医療・介護と協力しながら今後のケアに取り組むことができるようになればと思います。
  12. 介護士
    地域に必要な設備や対応できる事業所が少ない中で、みんなができる事を協力しあって、ご本人様の思いや家族の思いを大切にして、連携ができたと思いました。
    入浴介護も地域に必要なのは十分わかっているのですが、他事業所がなく、当所だけの対応しかないため、現状日々の件数も増えてきて、新しい方の受け入れがなかなかできなくて、悩んでいる所で、スタッフの採用を重点に何とか受け入れがスムーズにできる体制を作っていきます。
  13. 介護士
    生産年齢人口減少の中、地域資源にも限りがあり、看取りケア等についても十分な対応ができにくくなっている現状を地域で感じています。
    そのような中でも、お客様宅まで片道40分から1時間掛けてでもお客様、ご家族様の想いに寄り添える営業所、訪問看護八幡浜営業所のチーム力に感動しました。
    どうしても効率を求めてしまいがちになる自分の意識にストップをかけることができました。
    ・お客様の想い(意思決定)、ご家族様の想いの実現に立ち会う。
    ・お客様、ご家族様とのコミュニケーション力の必要性。
    ・尊厳保持。
    ・医療(主治医)との連携による安心感。
    ・アセスメントシートにお客様の想いを【 】をつけて記入する。
    等、沢山学ぶことができました。
  14. 介護士
    今回の症例を聞いて「動ける人が動く」ということの重要性を感じました。
    たとえご本人様やご家族様に近しい人じゃなくても動ける人が動くことでご本人様やご家族様への不安感の軽減や、安心感に繋がる事があるのだなと実感しました。
    いつも訪問看護だけでなく様々なサービスの導入のタイミングなどのご提案をさせて頂きますが、「今だ!」と思うタイミングが早かったり遅かったり本当にタイミングというものが難しいのだなと思いました。
    吉田さんが言われていた記録の残し方は訪問看護だけでなく様々なサービスに活かせる事だと思いましたので参考にさせて頂きます。
  15. ケアマネ
    四国の最西端、佐田岬半島に位置する伊方町の外れで、医療体制も十分整っておらず、社会資源も少ない中、自宅での看取りは大変だったのでは…と検討会が始まるまでは思っていました。でも、ご本人の「家に帰りたい」という意思からスタートした時点で、チームケアは始まり、関係者間で情報共有しあいながら短い関わりであったとしてもご本人や家族に寄り添った支援ができるのだと感じました。「最期まで、家族と過ごしたい」ということこそ、ご本人の死生観であったのでは…という話がありましたが、私もそう思いながら今回の事例を拝聴いたしました。
  16. 社会福祉士
    娘さん二人が母親のことを大切に思い、戸惑いながらも最期までみとることができて良かったと思いました。今回の事例では、他に同居する長女の夫や数回帰省した孫が、本人の見取りにどのように関わり、どのような思いがあったのかなと思いました。孫の帰省でサービスやケアマネの訪問がストップして、本人や家族は大変な思いをしたと記載がありましたが、孫の帰省は祖母に対する思いだったのか、他の理由があったのかも知れたら良かったです。
  17. 介護士
    地域の在宅医療・介護資源にも限りがあり、また近隣市町の資源も含めても十分とは言えない現状があることを感じました。症例検討会での同業他社からのアドバイスやエール、関係機関やそれぞれのサービスへの質問等を行い、それぞれの職種で担えることの把握や理解を深めることが大切だと感じました。症例の振り返りを行うことで、少なからず心に残っている「これで良かったのだろうか」という気持ちや気付き・学びを整理し、今後に活かしていきたいと思います。
  18. 医師
    私はもう20年以上も前、同じ地域で医療活動をした経験があり、角藤先生の症例報告を、当時のことをいろいろと思い出しながらお聞きしました。瀬戸診療所は私が退職後に新しく建設され、自治医科大学の先生方が赴任され若い力で地域医療に取り組んでいるとお聞きしていました。いつかはこの会で、佐田岬半島でご活躍される医療・介護・保健分野の先生方にお話をしていただきたいなと思っていましたが、それが実現してとてもうれしかったです。今後ともよろしくお願い申し上げます。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006