第88回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和3年11月5日(金);午後7時~8時30分

<症 例><傷病名>
  上咽頭がん、全身多発転移
<発表者>
  座長は、矢野脳神経外科;矢野 正仁 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所:清水 建哉 コーディネーター
  ②症例報告
   旭町内科クリニック:森岡 明 医師
  ③訪問看護の経過について
   訪問看護ステーションSetsukO:所長 菊池 世津子 看護師
<症 例>
報告内容
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<議論の要点とコメント>

●大学病院からの早い段階での紹介で、在宅医療導入まで十分な期間があり、終末期には本人、家族との信頼関係もしっかり築けたたこと。

●主たる介護者である奥様への訪問看護のきめ細かい心配りが介護不安の軽減につながったこと。

●こころのケア的点滴について。

<職種別参加者数>

合計  71名
医師 10名 社会福祉士 2名
歯科医師 3名 ケアマネ 14名
保健師 6名 介護 5名
薬剤師 8名 その他 2名
看護師 20名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 医師
    「早めの介入」の重要性を改めて実感致しました。今後の外来診療において、気を付けたいと思います。微力ながら、周囲にも啓蒙していければと考えています。
  2. 薬剤師
    ステロイドのベネフットは短期で得られ、リスクは長期で顕著になることがターミナルの患者さんのQOL向上になっているのだと改めて思いました。胃腸障害の好発時期も3カ月と言われており、内分泌系の副作用プラス免疫系の副作用もそのぐらいなのかと考えると「いつ」「どのような患者」に使うべきかが納得できるように思われました。
  3. 薬剤師
    介護する側の気持ちで、患者さんの症状によって虚無感を感じることがあるということがわかりました。「妻は何もしてあげられないと訴える」ことは考えさせられました。「介護不安に対し医療的なことは医療従事者が、家族は本人の精神的支援の役割を担うことが中心であること」が大事だと思いました。
  4. 薬剤師
    今回の症例において、訪問看護ステーションSetsukOさんのご家族に対しての声掛けや介護に対する不安を汲み取る姿勢に大変感動しました。外来通院から訪問看護にスムーズに移行するにあたって、薬局においても、他薬局間、病院薬剤部との薬薬連携が改めて重要であると感じました。
  5. 保健師
    早い時期から本人、家族に関わり、状態に合わせた距離感で側にいてあげられることは、とても心強い事だったのだろうと感じました。病気と闘う力になったのではないかと思います。医療面だけでなく、精神面で支え、関わりの重要性を改めて感じることができる症例だったと思います。がんの治療をされている患者さんと接する中で、松山などの病院へ行くことは、治療への希望にもつながり期待も大きいのですが、治療ができないと言われ近隣の病院を紹介された時の精神的なショックや不安が大きいことをよく聞いたりします。その点で病院間の連携、人と人の繋がりはとても大事だと感じました。
  6. 看護師
    不安を抱える中での在宅での生活をたくさんの方々が支え、サポートして頂ける環境は、私も1人の住民としてとても心強く有難いことだと思います。経験不足、勉強不足を痛感していますが、支える側として色々な事例を通して、学びを深め実践につなげていきたいです。
  7. 看護師
    今回の患者さんも年齢が若く、関わり方をどのようにされたのかとても気になりました。かなり早い時期から併診していたようで、かかわる医療者と家族、本人との関係性ができており良かったと思います。在宅のスタッフの方々の力がとても重要だと思いました。あと気になっていたのが患者さんのお母さんですが、元気で本人さんの様子を見に行っていたのにワクチン接種後寝たきりになってしまったことです。急な家族の変化に、本人、他の家族も心配になったし、介護や支援する人が増えることになるので、そのあたりの生活や精神的状況の変化があったのかもしれません。
  8. 福祉用具専門相談員
    今回の症例で感じるのは、いつも考えているご本人、ご家族と自分の職種としてどう関わっていくかということです。福祉用具で身体の痛みを抑えるには限界を感じます。終末期にはやはり直接関わっている看護師、ヘルパーさんに頼ってしまいます。しかし、自分自身が利用者、家族様の気持ちに寄り添った声かけやサービスの提供が行えるよう、柔軟性と気持ちの引き出しを増やしていく必要性を忘れずにいたいと思います。
  9. 看護師
    早期から治療医療機関と地元のかかりつけ医との連絡が適切に図れた素晴らしい症例だと思いました。当院でもできるだけ早期から地元での併診をと取り組んではいますが、医療費の問題や患者、家族の思いや、主治医の考え等によりなかなかすすんでいません。こういった症例を出して、当院でも地元との連携を推進していければよいと思います。
  10. 臨床検査技師
    緩和ケア、しかも在宅となると臨床検査技師には現状関わる機会が殆どありませんが、お話を聞かせて頂くことで日常業務における患者様への対応に変化が出てくるのだろうと感じます。私の家族にも悪性リンパ腫で数か月入院し、幸いにも今は完全寛解状態となったものがおります。
    「死」と言うものを覚悟した人達は人生観が大きく変わることをその時痛感しました。緩和ケアに関わる人たちは症例を重ねるごとに人に対する思いやりの気持ちが強くなっていくのかなと想像します。今回のような症例ばかりではないと思いますが、私も何かでお手伝いが出来ないのかと思ったのが率直な感想です。
  11. ケアマネ
    ご本人のお世話を一生懸命されて頑張っている家族の姿を見て、支援者側は「本当によく頑張っている」と思いますが、当の家族は「何もしてあげられない」と言われることは多々あるかと思います。ご本人が、痛みに苦しんでいる姿を見てその症状を取り除いてあげることができたらいいのにという思いこそ、家族の辛さだと思います。
    「そばにいるだけでいいんですよ。」ちょっとした一言の大切さ。今回の事例に限らず、私たち福祉・医療分野で仕事をする者にも共通して通じる言葉だと思います。
  12. 介護士
    今回の症例の方は、僕とも同じ年代なので、とても身に思う所があります。
    でもこの方、ちゃんと病気と向き合い、戦ってきた。家族のふれあいや絆をすごく感じました。息子さんたちも不安の中、自分には何ができるだろうと考えてしまうのは、わかります。でも訪問看護師さんからの一言で楽になったと思います。
    そういう寄り添う事の大事さを感じました。
    訪問入浴でも寄り添えるケアができるようしていきたいと思います。
  13. 介護士
    今回学んだことは、「一言の大切さ」、医療は身体ケアを見るのではなく、精神的緩和に影響すること、治療方法にご本人様の意思決定を優先にすることです。
    最後まで尊厳を保持するということは、ご本人様の意思決定を大切にするということ。
    意思決定を大切にこれからの看取り場面で意識を持って関わっていきたいと思います。
  14. 医師
    病院主治医が「病院は患者家族にとってアウェイである」と意識することが重要で、早い時期から在宅医に繋げ併診したことで在宅緩和ケアへの移行がスムーズにできたことは今回の検討会でのポイントになったのではないかと思っています。本来、家にいればできたことも、病院に入院していると遠慮してできないという場面も多くあります。家族が泊まり込むこと(現在はコロナ禍のためそれはできませんが)の負担や面会者や面会時間、持ち込みの制限があるかもしれませんし、音などに気を遣うこともあります。
    家族が遠慮して、本来必要な看取りのプロセスやケアに十分参画できない可能性について病院医療者は常に気を配る必要があります。本症例で、息子さんたちとの面談で、「本人の希望通りにさせたい。病院にいても家に帰りたいとばかり言っていた。」(令和3年6月30日の記事)という発言が印象的でした。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006