第89回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和 3年12月3日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  70歳代後半 男性
<傷病名>
  前立腺癌
<発表者>
座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所;清水 建哉 ケアマネージャー
  ②症例報告
   中野医院 中野 憲仁 医師
  ③訪問看護の経過について
   八幡浜医師会訪問看護ステーション;所長 坂本 美恵子 看護師
  ④訪問介護・訪問入浴
   セントケア八幡浜
    沼田 美幸 介護福祉士
    片岡 聖  介護福祉士
<症 例>
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<議論の要点とコメント>

●中部地方に在住の方で、退職後趣味のスポーツを楽しんでいたが、前立腺がんを発症し治療されていた。自己判断で時々治療を中断。背景には治療医とのコミュニケーション不足があった。歩行困難になってから八幡浜に帰省、在宅緩和ケアの導入となった。

●歩行機能の回復を希望されているのなら、脊椎転移巣への放射線治療も考慮してもよかったのではないか

●介護スタッフのかかわりで、最後まで生活場面でのQOLを維持できたことは、今後の緩和ケアを考えるうえでおおいに参考になった。

<職種別参加者数>

合計  67名
医師 8名 社会福祉士 4名
歯科医師 2名 ケアマネ 14名
保健師 4名 介護 11名
薬剤師 7名 その他 0名
看護師 16名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 保健師
    今回のケースでは、ご本人の望む最期を迎えられ、家族や関係者とともに歩まれた様子が感じられました。「支援する」以上に関係者が温かく見守りことで過ごせる時間の大切さを感じました。
  2. 薬剤師
    本人の気持ちにストレートに関わっていけるケアが大事で、そのうえで医療の色々な提案も大事だということがわかりました。
  3. 看護師
    4月に予後半年と告知され、本人さんの意思決定で自分で選択した予後をすごされ、納得して病気と向き合い余生を送られたのだと思います。
  4. 薬剤師
    今回の症例では、終末期を穏やかに過ごされており、ヘルパーさん、ご家族が柔軟に対応していた面がより最期まで穏やかに過ごすことができたのだと感じられました。
  5. 医師
    人を看る在宅チームの力を改めて認識できました。
  6. 薬剤師
    今回の患者さんは、ヘルパーさんとの関係性が良好に築けていたように思いました。ヘルパーさんが状態変化を認識され、他職種との連携もスムーズだったと思います。本人さんの性格や妹さんとの信頼関係、ヘルパーさん達の関わり方が上手くいって在宅で過ごせたことはよかったと思いました。
  7. ケアマネ
    本日の症例では、ご本人様と介護スタッフとの関係性が良く、大好きなコーヒーを2回も飲みに行けたりして、とても前向きな姿勢がすごいなと思いました。予後宣告された時、ご本人様は意思の強い方ですけど何かの不安とか絶望とかが無かったのかと思いました。やっぱり最期は生まれた故郷に帰りたいと思ったのですけど、長野県での生活も忘れられない環境だったから、妹さんが遺骨を長野に持っていき、友人とお見送りされたのは感動致しました。
  8. ケアマネ
    今回の事例は前医の処方した薬に対してやリハビリに対する不信感を抱えられたまま、八幡浜に帰られ最期までご自宅で過ごすことができた事例でした。支援された皆様がご本人の発言(せん妄など)や自己決定に寄り添い、その気持ちがご本人やご家族に通じ、信頼していただけたからこそ穏やかな生活が最期まで送れたのだと感じました。ヘルパーさんの支援が中心となり支援が進んでいきましたが、不安なこともたくさんあったかと思います。それでも安心して支援が行えたのは、中野先生や医師会の訪問看護の皆様が傍にいてくださったからだとも感じました。今回の事例を通じて、連携することの大切さを改めて学ぶことができました。
  9. 介護士
    多職種連携により、患者様の目的を理解し、ご本人様だけではなく家族の精神的ケアに努め、在宅での介護負担軽減と家族間の残された時間を楽しく過ごせたケアに感激しました。病状の進行から、状態に合わせながらの薬の投与については、亡くなった後では正解かどうかは聞くことができませんが、ご本人様の痛みに耐えながらの生活をご家族様が支えて行くには大変なご苦労が想像できます。ご本人様の最後まで自分の生活スタイルに意志を持ち、秘境に行かれてコーヒーを飲まれたり、意欲を持ってリハビリをされた姿を想像すると、最後まで全うされたのではないかと思います。
    訪問介護、訪問入浴は状態によっては、数回しか提供できないサービスだと思いますが、ご家族様への対応についても非常に大切なことで、そこに関わるスタッフさんのコミュニケーション力と状態に合わせた入浴方法に在宅サービスを担っていることの素晴らしさ、他職種連携の素晴らしさを再認識しました。
  10. 社会福祉士
    終末期の緩和ケアの過去の事例と比較して、最後まで医療面のケアの必要性が最小限だったため、ヘルパーさんがメインの支援の事例でした。看護師ではなくヘルパーが訪問することで、「終末期のケアに入る」という形ではなく、「日常のケアに入る」という形で、本人も家族も自然な形で予後を過ごすことができたのではないかと感じました。
    事例資料の報告を読んで、ヘルパーさんや訪問入浴のスタッフの方が自然体で接してくださったおかげで、知人や親せきの子がやって来て手伝ったというような関わり方のイメージを持ちました。本人のQOLを尊重できた支援だったと思います。
  11. ケアマネ
    今回の症例検討会で改めて介護の力の必要性を感じました。また、家族関係の良さ、ご本人の性格が良くわかり、自己決定力、告知に対しての理解力、家族の介護力等ご本人らしく最期を迎えられる必要が整っており、支援の方向性などスムーズに事が運べておられ、担当ケアマネ様の調整も素晴らしいと感じました。私もケアマネとして今回の症例等を参考にさせていただきながら適切な支援ができるよう精進したいと思います。
  12. 介護士
    今回は患者様と波長が合い、結果、よい看取りができたように思います。今後も患者様に合わせてケアを目指します。
  13. 介護士
    まだまだ直接、医療関係者の方々と関わることが少ないので今後少しずつ勉強していきます。
  14. 介護士
    第一に患者様のことを考え行動しなければならないと思いケアに入りました。そこに介護者の家族様がいらっしゃれば日々の会話で、どのような気持ちで、どうされたいのか等汲み取り関わっていけたらと思います。少しでも寄り添っていけるようにとケアに入っていきます。
  15. 介護士
    今回の事例では、自分たちも関わったこともあり振り返りに良い機会になったと感じました。本人様の穏やかな様子が印象的で、事例で話されていたような言動がなかったこともあり驚く面もありました。今回の事例を通して普段の多職種との情報共有の大切さも感じることができました。
  16. 医師
    在宅医療は、患者・家族を中心として、医師、訪問看護師、ケアマネージャー、薬剤師、リハ専門職、 作業療法士、言語聴覚士、ヘルパーなど、様々な職種が関わりチームを形成しています。在宅医療の現場では日々、さまざまな問題が発生しますが、各職種の特性を考慮に入れながら、チームで対応して行くことになリます。 今回の事例では、ヘルパーサービスの力が患者様の日常生活支援におおいに力を発揮され、精神的、社会的ケアに大きく貢献した事例でした。勉強になりました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006