第90回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和 4年1月7日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  70歳代 男性
<傷病名>
  原発性肺扁平上皮癌、関節リウマチ、リウマチ肺、高血圧症、糖尿病、脊柱菅狭窄症
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック;森岡 明 医師
  八幡浜医師会居宅介護支援事業所
   清水 建哉 ケアマネージャー
  ②症例報告
   三瀬医院  片山 均 医師
  ③訪問看護の経過について
   セントケア訪問看護ステーション
    所長 松平 直美 看護師
<症 例>
報告内容
PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点とコメント>

●ACPを実践するタイミングについて。

●亡くなる前に「何でこうなったんだろう」と発せられた患者さんの言葉に、どの様な声掛けがよかったのか。

●多疾患併存の患者さんが亡くなられたときの死亡診断書の記載について。

<職種別参加者数>

合計  67名
医師 12名 社会福祉士 4名
歯科医師 2名 ケアマネ 12名
保健師 6名 介護 8名
薬剤師 4名 その他 2名
看護師 16名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 医師
    扁平上皮癌に対する化学療法がもっと多岐に渡ってもよかったのではないでしょうか。もっと別の化学療法があったのではないのかと思いました。
    即答できない問に対して、もっと具体的に質問の内容を問い、教わることの重要性を知りました。
  2. 薬剤師
    「何でこうなったんだろう」と独り言や愚痴も単に聞いてほしいだけの可能性もあると思いました。頷いて聞くだけでも本人は少し救われる気持ちになると思いました。
  3. 医師
    毎回事例検討の質が高くなっていることを実感します。毎回自分自身の勉強にもなっていて有難く思います。
  4. ケアマネ
    今回の症例は、ご本人の思いについての対応がとても勉強になったと思います。寄り添いながら頷きながら、手を握ったり、背中をさするようなことがその時自分ならできたのか、そのような雰囲気や表情でなかったら何もできなかったのか、と考えながら皆様のご意見を聞かせていただきました。
    現在、緩和ケアを行っている担当の患者様もいますのでその方の場合はどのような言葉、表情、思いを残されるか、しっかり受容的に接することができるようにしていきたいと思いました。
  5. ソーシャルワーカー
    自分が関わった方が、在宅でどのように過ごされたかがわかってよかった。症例検討会の中で出ていました「教わる」と「察する」というキーワードを意識して、今後も支援に関わらせていただきたいと思います。
  6. 看護師
    患者、家族の真のニーズを聞くことは、病院でも在宅でも難しいことが実感しました。自分自身も苦手な所なので今後も色んな症例を通して勉強していきたいと思います。
  7. ケアマネ
    私もがんの方で、亡くなる前日に「何でこんなになったんやろ」と全く同じ言葉での問いかけを経験しています。その時のことを振り返ったり、自分自身で検討したりと深く考えることができました。私も「辛いなあ」ということしかできませんでした。
  8. 保健師
    患者様の声掛けについて、色々な意見が聞けて勉強になりました。このような場面を取り上げて症例検討会で報告していただくと関係者間で共有できるのでありがたいです。
  9. 看護師
    訪問看護師さんが「何でこうなったんだろう」という患者さんの一言に、どう声掛けしてよいか迷われていましたが、私も同様の経験を何度もしてきました。何も言えなったこともあり、「どうしてそう思われてるのですか」と聞いたこともありますが、結局正しい答えはないように思います。
    患者さんの言葉にどのような思いがあったのかを考え、寄り添えることが何より重要なことではないかと思うので、まずそのことを振り返られたことがすごいと思いました。
  10. ケアマネ
    「なんでこんなことになったんやろ」現実に戸惑い、落ち込むご本人に対して私たち支援者は、いつの場面でもどんな言葉をかけてあげたらいいのだろうと悩んでしまいます。でも、今回の意見交換のなかで、ご本人の戸惑っているその言葉を拾い、なぜそう思われるのか「教わる」のも良し、ただそばにいてそっと体をさすってあげながら寄り添ってあげるのも良し、正解はなくその場の雰囲気に応じてご本人が穏やかな時間を過ごすことができるように私たち支援者は関わっていけばいいのだという助言をいただいたので、これからの支援に活かすことができそうです。
  11. 医師
    慢性心不全、慢性呼吸不全等がん以外の看取りも悩みどころが沢山あるようです。
  12. 医師
    日本におけるスピリチュアル・ペイン研究者の一人である村田久行先生(京都ノートルダム女子大学特任教授)は、スピリチュアル・ペインを「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」と定義し、さらに人間の存在が、時間の中での存在、周囲との関係の中での存在、セルフコントロールすなわち自律できる存在によって成り立ち、これらの存在が死によって脅かされることによりスピリチュアルな苦痛が生じると指摘しています。今回の事例で、亡くなる前に「何でこうなったんだろう」と言われた患者さんの言葉の背景には、その言葉を発するまでにさまざまな思いがあったことだとと思います。それらを察しながら言葉がけをすることにベストな回答はないでしょう。コミュニケーションの場面でノンバーバル(非言語コミュニケーション)な部分、その態度や姿勢にも「話を真剣に聴いています」というメッセージを込めなければならないでしょう。患者さんのそばに座り込む、核心に話が及んだ時には、患者により近づきその距離を縮め、時に手や肩に触れるなどが有効でしょう。以下に参考論文を記載しておきます。URLをクリックすると論文を参照できます。
    村田久行先生の論文
    PDF「終末期がん患者のスピリチュアルペインとそのケア」(外部サイト)

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006