第91回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 令和4年2月4日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  60歳代前半 男性
<傷病名>
  直腸癌、直腸癌全身転移、右外腸骨静脈血栓症、下肢リンパ浮腫、仙骨部褥瘡、2型糖尿病
<発表者>
  座長は、矢野脳神経外科クリニック; 矢野 正仁 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 ケアマネージャー
  ②症例報告
   四国がんセンター
   副看護師長 平岡 久美 看護師
  ③症例発表
   旭町内科クリニック
    森岡 明 医師
  ④訪問看護の経過について
   訪問看護ステーションいまいスマイル
    松本 千恵子 看護師
<症 例>
報告内容
(1) 第91回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料
(2) 症例訂正追加文書

<議論の要点とコメント>

●新規オピオイドの使い方

●多職種連携の情報共有ツールの利用の注意点と患者様への配慮について

●訪問看護の患者様とのコミュニケーション場面で工夫をし信頼関係を構築したことについて

<職種別参加者数>

合計  64名
医師 10名 社会福祉士 3名
歯科医師 1名 ケアマネ 12名
保健師 6名 介護 4名
薬剤師 4名 その他 6名
看護師 17名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    利用者様は一人ひとり違い、その人らしさを支える意味でもスタッフ皆が素晴らしかったと思います。また、グループラインはとても有難い情報源ですが、改めて取り扱いには気を付け、ケアマネとして最初にきちんと説明を行わなければいけないと痛感しました。
  2. 医師
    私にはとても皆様のようには接することはできません。患者ならパワハラ的な物言いも許容されるのでしょうか。介護者が涙を流すほど辛く、それが原因で辞められてしまっては地域にとって損失だと思います。
  3. 薬剤師
    患者さんは褥瘡が結構ひどいように思いましたが、糖尿病、高血糖の病態が背景にあったので治療が難しいところがあったのではないかと思いました。
    今回、訪問看護の方は患者さんとのやり取りが上手かったので見習いたいと思いました。頑固なところのある患者さんでしたが、患者さんが会社の社長をされていた背景から、患者とナースではなく、上司と部下のように関わり、自分の役割をうまく変えていました。その人らしさを如何に把握してご本人が気持ちよく、こちらもやりやすくすることは本当に難しいことだと思います。
    森岡先生の患者さんの心に寄り添った医療が素晴らしいと思いました。患者さんから「点滴をしたらしんどいのが少し楽になるのではないか。点滴をしてほしい」という思いに対して、点滴によりリンパ浮腫が酷くなる可能性があるので、点滴はしないが注射なら身体の負担を減らせるのではないかと提案された。患者さんの希望、考えを否定するのではなく、何ができることはないかと考えていらっしゃる思いが伝わってきました。
  4. 薬剤師
    コミュニケーションを図ることが難しい方に対する看護のアプローチがプロの仕事としてさすがだと思いました。「その人らしさを支える」という言葉がとても腑に落ちました。「自分の中に入れず」客観的に俯瞰することは、仕事として必要なコミュニケーションスキルだと思います。
    LINEはセキュリティーに問題があるとは感じていましたが、患者さんに対しては、不安、不振にならない気配りが必要だと勉強になりました。
    薬局でもトレーマレポート(紙・FAX)を嫌がる患者さんはよくいます。情報共有はお薬手帳に書いても問題ないレベルを私は目安にしていますが、医療のICT化で今後色々課題があるように感じています。目的のための手段であること、ソースを丁寧に説明することが必要であることが勉強になりました。
  5. 介護支援専門員
    一つの事例を通して、関係者等が皆で振り返りをして、次の利用者さん、患者さんへの対応を考えることができるのでとても参考になりました。また、人としての関わり方を深く考えることができました。
    専門的な治療方法の介入やお薬の使い方等とても勉強になりました。
    関わった人たちが同じ方向を見据えて話し合いながら介護を続けているが、情報の共有の仕方についても、本人の状況に合わせた対応が必要であると痛感しました。
  6. 保健師
    今回の症例は、若いこと、また抗がん剤等の治療を望まないことから、ご本人様の精神面での関わりにおいて、大変配慮が必要な方だったことがわかりました。しかし、訪看を中心に関係者が短い期間でもその人個人としっかり向き合い、家族を支えながら、最期を迎えることができていて、素晴らしいと思いました。数日前に森岡先生からご両親に向けて病状説明されたことは、ご夫婦だけでなくご両親へも残された時間を息子と共にすることに大変意味があったのではないでしょうか。
  7. ケアマネ
    訪問看護師の人間観察力が凄いと思いました。
  8. 保健師
    LINEは広く利用されているところですが、セキュリティーの関係でも使用上配慮が必要とされており、本来個人情報を多く扱う場面や医療と介護の連携においてはあまり適切ではないのではないかと考えていました。特定の方の氏名など出さないように配慮はしていても、個人が特定できる情報の記載が必要な場面も考えられます。直診の医師との情報共有に適切なツールを探していた時に、医療と共有する場合には医療機関で利用可能なレベルのセキュリティー対応ができるものというようになっていたこともあって、今回、谷水先生が提案されたように、地域で共通で利用できるツールについての検討が進められれば、圏域で使用するものとして庁内での検討や予算対応など進めやすくなると考えます。
    また、情報の共有には①支援をしていく中で、チームとして共有することが必須なものと②あなただから話したのよ、という利用者やご家族と、その場面で関わったメンバーとの関係性の中で成り立つ情報があると思います。②の情報が共有されることについては、当事者としては複雑な気持ちもあると思います。その時関わったメンバーの胸に秘めてよいものはそのままに、でもこれはメンバーで共有しておくべきと専門職として判断する情報は「あなただけ」と話されたという背景も含めて共有していくという配慮の中で生かしていくことが大切なのかなと思いました。
  9. 看護師
    病気と向き合う患者さんの思い、心理面等を様々な人の立場から意見が聞けて勉強になりました。
  10. 作業療法士
    今回の症例検討会に参加させていただき、対象者様の今までの人生や人柄・性格など、その人らしさを尊重しながら関わることの大切さを感じました。自分に照らし合わせてみたときに、どういった関わりができるのかとても勉強になりました。
  11. ケアマネ
    今回の事例では、その対象者の人となりに対して演じる(寄り添う)ことやチームのメンバー間の共有の大切さを改めて感じました。しかし、共有することに対して、説明責任を果たしていないと、それが支援に不利益な場面が出てきてしまうことも学びました。現在、様々な便利なツールが出てきました。しかし、その反面、リスクも生じてくると思っています。そのために、リスクマネジメントについてもしっかりと考えていきたいと思っています。
  12. 医師
    コーピングとはストレスフルな問題や状況により生じる苦痛や苦悩を、やわらげたり解決しようと考え行動したりする事です。
    がん医療における患者―医療者間のコミュニケーションは、患者さんがストレスの高い状況のなかで、医療者から伝達される情報が生命にかかわる内容含んでいることにより、さらにストレスが付加される場面も多くあり、医療者にとって難しいコミュニケーションのひとつです。
    今回の訪問看護の場面で、褥瘡処置を通じて患者さんの情動的なコーピングスタイルを上手に捉え信頼関係を築いていかれたことに敬意を表します。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006