第92回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和 4年3月4日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  50歳代後半 女性
<傷病名>
  乳がん、乳がんの脳転移
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック; 森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
   清水 建哉 ケアマネージャー
  ②症例発表
   矢野脳神経外科医院 矢野 正仁 医師
  ③訪問看護の経過について
   よつば訪問看護ステーション
    馬場 美奈子 看護師
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第92回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●残された予後について、本人への対応(告知)はどのように考えるべきか。

●本人の内面には周囲に見せていい悲しみと、見せてはいけない悲しみがあることを理解しながらかかわることの重要性など。

<職種別参加者数>

合計  58名
医師 12名 社会福祉士 1名
歯科医師 2名 ケアマネ 11名
保健師 5名 介護 3名
薬剤師 6名 その他 2名
看護師 15名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    生きる目標があるということは、人を強くすると思いました。娘さんの成人式を無事見届けられ良かったです。短期間の関わりで先生始め看護師さん、ケアマネ、皆さん大変だったと思います。
  2. 医師
    鎮痛剤の使用について、アンペック坐薬10ℊを定期的に用いてなかったので、血濃度からいえば定期的使用がよかったのか、または貼布薬の使用はどうだったのだろうかと思いました。
  3. 看護師
    訪問看護師ががん末期のケアとして、毎日、日に数回訪問し症状と合わせた対応をされたことで、本人、家族にとって安心して自宅で過ごせたと思います。
    1/1の20時の緊急訪問で、日頃行えなかった清拭を行ったことは、素晴らしいと思い、本人も次から受け入れる要素になったと思います。
    亡くなられた後の母親への配慮と包括への依頼もグリーフケアとして見習うべきこととして考えさせられました。
  4. 薬剤師
    今回の意見交換の中で、本人に対して予後、余命宣告はどうするのかという話がありました。残された時間について、患者本人がどれくらい理解しているのか、受入ができているかを知らないといけない。なぜなら理解次第で対応が変わるかもしれないからです。
    今回の症例では、娘さんの成人式だったが、目標とする日があればその日まで延命するためにはどういう方法があって、どうしていくかチームで話す必要があると思いました。
    今回たまたま訪問看護師と患者さんのお子さん同士が同じ高校で仲が良い同級生だったということもあり、そういった地域密着ならではの関係性のお蔭もあって、ただの医療者と患者という枠を越えてできる話もあったのかなと思います。
    娘さんの成人式の振り袖姿をみられて本当に良かったです。
  5. 薬剤師
    私が担当させていただいた患者さんでしたが、検討会で初めて知る事実も多くあり、自身の無力さを感じました。「ご不明な点あれば24時間対応します」とは言っていましたが薬の質問の電話が1度だけでした。私自身、初めてのがん末期の在宅患者でしたので、大きく貢献したいと思いましたが、薬の説明とセット程しかできなかったように感じます。今回の経験として、こういった患者の予後を想定し、困るであろう予測できる事象に対してより具体的な対応策の提示及び心情を汲み取ったコミュニケーションをできるよう行動しようと思います。患者や医師をはじめとする医療従事者に対して、薬局側からも適切な情報の配信をしなければならないと思いました。
  6. 作業療法士
    患者さんの心の強さや、成人式という一つの目標に対して、多職種で連携しながら支えている取り組みがとても勉強になりました。私自身も、これから患者さんにできることを模索しながら関わりを持ち、寄り添えるような支援をしていきたいと思いました。
  7. ケアマネ
    何はともあれ、一番楽しみにされていた娘さんの成人式を見届けることができて本当に良かったと思いました。
    今回、ご本人と訪問看護師さんが思わぬところで“ママ友”的な関わりができたことや、娘さんも同級生のお母さんが訪問看護師さんだとわかり相談できたことは、とても心強かったのではと思いました。ご本人も安らかに最期を迎えることができたのではないでしょうか。
  8. ヘルパー
    訪問という仕事の素晴らしさを実感できる事例でした。
    今回の事例では、ご本人様が看護師をされていたとのことで、自分で何でもできる強さを持った方で、「成人式を見るまでは元気でいないといけない」という目的を掲げておられました。
    コミュニケーションについて、ご本人様の置かれている状況や表情からどういう状況なのかを聞き出そうとしてしまう時がありますが、自分に置き換えると、自分の心の内を同業者に話できるかというとできないものです。プライドがあれば尚更、見せていい悲しみ、見せなくていい悲しみがあり、すべてにオープンでないと思います。
    多くの情報を知ろうとせず、ご本人様の目的を他職種で共有すること、またご本人様の状態が急変しご家族様の感情に混乱が生じた時には、ご本人様の目的を尊重し代弁できるようコミュニケーションを図って行きたいと思いました。
  9. ケアマネ
    今回の症例検討会の内容はまだ50代と若くして看取りをされたケースで、私と年も近く、私の奥さんも看護師でも有り考え深くお話を聞かせて頂きました。気丈に振舞われ最後まで自己決定や病状に向き合う姿勢はとても立派だと思いました。ヒアリング、モニタリング等ケアマネとして緊張する場面は何度かあったかと思いますが、素晴らしい最期を迎えられた事に感銘を受けました。点滴治療についても医師の判断もニーズに沿った対応でとても良かったと思います。今後緩和ケアを行っているお客様の対応の参考になりました。
  10. 保健師
    本人・家族に関わる上で「本人の病識」や「予後の説明」は重要だと思っていましたし、病識は確認すべき、予後は説明すべきだと思っていました。でも、今回参加して、必ずしもそうではなく、本人や家族の目標は何なのか、その思いに答えるためにはどうしたらいいかを考えることが大切だと思いました。
    先日、看取り期の方で、町外病院から自宅に戻るお手伝いをしました。町外病院相談員からは、「本人には『今は治療するタイミングではないので、まずは痛みをとることに専念しましょう』と説明していて、治療再開することを目標に頑張っておられます。家族へは『抗がん剤治療することで副作用が強く出る可能性があるため、痛みをコントロールしながら、今の状態を維持したほうが良い。』と主治医から説明しています。疼痛管理のため麻薬増量、食欲低下のため点滴再開、腹水・下肢浮腫も出現している。本人も『転院か自宅なら自宅がえぇ』と言っている。帰るなら今しかない。」と聞きました。家族の方も「できるだけ本人の意向を尊重したい。本人が帰ると言うなら自宅で受入れます。」と話されたため、病院相談員とも相談しながら、福祉用具や介護タクシーを手配し、地元で往診・訪看の準備を進めました。が、退院前日、「やっぱり家は心配です。一度転院して、良くなってから自宅に連れて帰りたい。」と家族から相談があり、地元病院から、なるべく家族と過ごす時間を確保できるよう個室で対応するとお返事をいただき、急遽、地元病院へ転院という形になりました。その都度、家族・訪看・往診医・相談員・福祉用具事業所と相談しながら、対応したつもりでしたが、家族の不安を払拭しきれず、本人の希望は尊重されたのか、不甲斐なく感じました。緩和ケアの研修を受けたことで、病院から相談されることも増え、がん末期の方に関わる機会もかなり増えましたが、力不足を痛感しています。今後も症例検討会に参加して、色んな方のご意見をお聞きできたらと思います。
  11. 保健師
    ご本人に余命の見通しを伝えるかどうか、今回のように医療職の場合と一般の方では対応も異なり、伝える、伝えないは本当にケースバイケースなのだろうと感じました。
    今回の症例では、娘さんの成人式を迎えたいというひとつの目標に向かい、主役であるご本人、家族、また関係者がともに目標に向かい支えていけたこと、在宅で最期を迎えられた理想に近いかたちだと思いました。
  12. 福祉用具専門相談員
    世代が近い女性利用者だったこと、ご本人が元看護師という事もあり、ご自身の状態やこれからどうなっていくのか、その過程も理解されていたのが、良い面でも悪い面でもありました。
    成人式を娘さんは帰省するまで状態を知らせていないので、どうやって話すべきかをご本人とお母さんが迷われていたのも印象にあります。
    福祉用具を搬入したとき、今まで自分が看護師として病院に勤務していたので、同業者同僚には弱っていく姿を見せたくない。看護師としてのプライドがある。と話されました。年末にケアマネより急激に立てなくなった。トイレの移乗も困難になった。との相談の連絡があったのですが、ベッドから動かせないので紙パンツで対応する事になり、福祉用具ではあまり対応できなかったのが残念です。短期間ではあっても、娘さんやご家族で最期を迎えられたのが、ご本人の希望が叶ったのだと思います。
    亡くなられた後に、ご主人とお話をしましたが、在宅でも手厚い介護サービスをして貰えるのだね、介護に困ったことがあればまた相談します。と話されました。
    先生の予後をどう伝えるかは、やはり難しいです。用具を回収するのも、ご本人やご家族の希望を断ち切ってしまう気がして、契約を終了しても回収を遅らせる場合もあり、なるべく最期は単位数を看護やヘルパーに充ててもらいたいとも思います。
  13. 医師
    本人が大切にしていることを確認する際に気を付けなければならないことがあります。終末期に何らかのイベントを企画して思いで作りをすることがあります。その際、「終末期の方に何かしてあげないと」という焦りの気持ちから、無理に思い出づくりをすることです。
    思いで作りも、「過去」「現在」「未来」を軸に本人の意思を確認し、最善の医療、最善の療養方法などを考える必要があります。このような視点からも、今回の事例では、娘さんの成人式を迎えたいというひとつの目標に向かい、周囲の家族・スタッフの配慮・支援が自然に進んでいきました。ドラマチックな経過に感動しました。ありがとうございました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006