第93回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和4年4月1日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  80歳代 男性
<傷病名>
  食道癌、食道癌の多発肝転移・リンパ節転移・肺転移
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック
   森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 コーディネーター
  ②症例発表
   中野医院 中野 憲仁 医師
  ③訪問看護の経過について
   訪問看護ステーションいまいスマイル
    松本 千恵子 看護師
  ④支援経過と全体の流れ
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 コーディネーター
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第93回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●地域特性、地域の文化を考慮した支援の在り方について。

●独居高齢者への地域包括支援の考え方から、近隣住民へのアプローチの在り方。

<職種別参加者数>

合計  53名
医師 7名 社会福祉士 4名
歯科医師 3名 ケアマネ 9名
保健師 3名 介護 6名
薬剤師 4名 その他 1名
看護師 15名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ヘルパー
    今回、アセスメントについて学びました。精神的・身体的・環境的な要因を知ることに取り組んでいますが、その方の文化的な面も知ることが必要と思いました。
    その方の生活文化や地域環境を知ることで、近隣の社会資源やインフォーマルな面を支援に組み込むことができる。一方、その方の支援に関係機関が介入することで、生活文化が無茶苦茶になってしまうことあります。アセスメントに文化的な面を知る作業を取り入れ、生活文化に馴染んだ関係機関とサービス調整を行い、適切な支援が提供できるよう努めていきます。
  2. ヘルパー
    今回の症例は介護サービス事業所がというよりは地域の力が大きい看取りではないかなと感じました。ご家族様からすれば近所の方のお言葉は辛いことや、迷惑だったかもしれませんが「ご本人様を思ってこその関わり」が地域にあったからこそご自宅で最期を迎える事が出来たのだと思います。
    ご自宅で最期を迎える方にご家族様が居ても居なくても、地域や家庭内に必要な人である事をしっかりと示す事が介護のあるべき姿だと思っています。八幡浜市という地域ならではの関わりかもしれませんが、介護サービス事業所のみの関わりだけではこの方はご自宅で最期を迎えられなかったのではと感じました。
  3. ケアマネ
    今回の症例の方は住居地での話し合いから、関係者への相談支援もある中、最終的はご本人の意向や現状をしっかり把握されながら、ご本人らしい最期を迎えられることができた素晴らしい症例でした。サービス導入後、関係事業者がしっかり連絡、調整をされ急変の対応もされていたと思います。
    また感想の話し合いの時に清水様より、ケアマネに対してのご意見を頂き、医師を始め関係者より「ケアマネが育ってきている」というお言葉を頂き、自分の事のようにうれしく思いました。認知して頂ける存在になれるよう今後も頑張っていきたいと思います。
  4. 社会福祉士
    今回の事例では、地域性から地域の方が本人の支援に積極的に関わってくださっていましたが、本人のことを思うあまりに、家族に対してプレッシャーを与える状況も多々見られたようでした。その都度、地域の方に対して、支援者側が在宅での看取り支援の説明をして理解を得ていただいていましたが、本人に対しての支援以外の部分の働きかけが大きかった事例という印象です。
    この事例を通して、地域で在宅での看取りを支えていくために、地域住民に対して八幡浜市の看取り支援についての啓蒙活動の必要性を感じました。また、この検討会の数日前に初回訪問をしたお宅にて、いずれは夫を在宅で看取る気持ちを持たれている奥様と話をした際、「最期まで家で看るつもりだけど、どうしたらいいのかわからない」と不安に話され、訪問診療や訪問看護など、医療や介護保険のサービスを利用して最期まで自宅で過ごすことが可能であることを伝えると安心された様子でしたが、「支える地域住民」だけでなく、「本人・家族」に対しても、在宅での看取りについての情報提供の必要性を感じました。
  5. ケアマネ
    地域で暮らしていく中で、今までのご本人の暮らしがあり、それがその方にとっての生活リズムになっています。専門職が入り込むことで、「こうした方が楽になる」「こうした方がいい」などと思い、提案してしまうことがあります。しかし、その提案により、今までの生活が崩れてしまうこともたくさんあります。ご本人たちの生活ペースの中に、私たちがどのように入り込むかを考えていくことが重要なのではないかと考えさせられました。特に看取り期の中では短い期間になる場合が多く、その方の生活をどのように支えていけるか、これからもしっかりと寄り添っていきながら支援していきたいと思いました。
  6. 作業療法士
    今回の症例検討会に参加させていただき、地域住民の方々との繋がりや、コーディネーターの方々の仕事内容も含め理解を深めることができ、とても勉強になりました。また、対象者の方に対して、日常と変わらない生活をしていただくことの大切さをあらためて感じました。
  7. 薬剤師
    今回の症例は、看取り期間は短かったが激しい症状変化はなく、食道がんの衰弱死でした。日常通り、本人にとって違和感のない生活を続ける支援ができたという意味で理想的な在宅の症例だったのではないかと思われます。
    地域性があり、患者本人と近所に住む地域の方との関わりが強かった。多くの場合、個人情報のため家族以外まで関わるのは敬遠されがちだが、近所の方が支援の輪の中に普通に入っていることが印象的でした。その地域のことをよく知る訪問看護師がいたため地域の方を排除するのではなく引き入れることが普通だと考えられたのは大きいと思いました。
    今回も医療従事者と患者さんの信頼関係が築けており、専門職が連携をとって家族に適切な具体的な情報を伝えられたのではないかと思います。ケアマネージャーの近所の方との調整が素晴らしいと思いました。
  8. 看護師
    色々な事情がある方がおられることが認識できました。近所の方を鬱陶しい存在と思わないで、個人的な情報源だということを少しでも意識して対応していきたいと思いました。
  9. 医師
    地域包括支援の考え方では、訪問介護、訪問看護、短期入所サービス、通所系サービス、グループホームや小規模多機能型居宅介護などはフォーマルな地域資源ですが、一方家族会や認知症サポーター、市民後見人、民生委員、近隣の住民などはインフォーマルな地域資源と位置付けています。今回の事例では、本人は独居で大洲に住む次男夫婦が主たる介護者で、パートの予定をやりくりしながら次男妻がほぼ毎日様子を見に来て身の回りの世話をされていました。近所の方から「こんな弱った人を一人で置いておいてどうするの?」という言葉に悩まれいったんは大洲に引き取る準備もされましたが、本人の意向を尊重して八幡浜の自宅での生活を支えられました。地域包括支援の考え方を近所の方に関係するスタッフが働きかけ、けっして一人で放置しているのではないこと、住み慣れたご自宅で終末期を多職種・家族で支えていることを理解していただくよう努めて、インフォーマルな支援者として支え手になってもらうことをもっとお願いしてもよかったのではないでしょうか。そのことが、次男妻の支援にもつながると思いました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006