第94回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和4年5月6日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  40歳代後半 女性
<傷病名>
  右乳癌
<発表者>
  座長は、座長は、旭町内科クリニック; 森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 コーディネーター
  ②症例発表
   三瀬医院 院長 片山 均 医師
  ③訪問看護の経過について
   訪問看護ステーションSetsukO
    所長 菊池 世津子 看護師
  ④支援経過と全体の流れ
   居宅介護支援事業所 西安
    門田 幸代 ケアマネージャー
  八幡浜医師会居宅介護支援事業所
   清水 建哉 コーディネーター
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第94回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●早期発見レベルの乳がんで、おそらく抗がん治療を途中中止しなければ治癒した可能性のある事例だった。このようなケースにどのようにかかわればよいのか。

●家族関係に配慮を要する事例で、スタッフ自身が傷つかないように本人に最後まで寄り添うかかわりをいかに実践するかについて。

<職種別参加者数>

合計  61名
医師 9名 社会福祉士 4名
歯科医師 1名 ケアマネ 15名
保健師 3名 介護 1名
薬剤師 9名 その他 2名
看護師 16名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 医師
    事例の質が回を重ねるごとに高まっていることに嬉しく感じます。
  2. ケアマネ
    今回のようなケースに似たケースは何件かあります。先生方のお話を聞き、腑に落ちないこと、新たな発見ができたことがあり勉強になりました。どんな方々でも寄り添えるケアマネであるには自分も人間として幅を広げ、心を元気にしておこうと思います。
  3. 薬剤師
    今回の症例の患者さんは本人のこだわりが強く、家族との関係も良好とは言い難いので橋渡しをするのは大変だっただろうと思いました。自分のやり方を優先されていたので薬の使い方としては、適切ではなかったかもしれませんが、それが安心感に繋がっていたならそれで良かったのかなと思います。どこまで踏み込むかとても難しいですが、ご本人が治療に対して積極的になれなかったプロセスや家族カウンセリング等、臨床心理士が居たら専門的な視点から一歩進んだ治療ができたかもしれないと思うと専門職の必要性を感じます。
  4. 看護師
    病院とは違い病状だけを診るわけでもなく、家族関係なども考慮する必要があるため、どこまで介入していいものなのかいつも悩みます。本人がどこまで望んでいるのかを理解するためには何度も訪問し、看護師と本人の関係作りをしないと難しいと思います。しかし、希望される訪問回数にすることも必要だと思うし、本当に難しい問題だと思いました。
  5. 薬剤師
    本症例にてスピリチュアル的な安定を保つためにも、民間療法等の必要性を感じつつ、固定観念を持つ患者さんにいかに心を開いてもらって、その人らしく生きられる医療を提供することは難しいと改めて感じました。
  6. 作業療法士
    対象者様と家族様との関係性や、本人様や家族様に寄り添い傾聴することの大切さを学ばせていただきました。またその中で、どのような声かけをしていくのかということの難しさを感じ、とても勉強になりました。
  7. 福祉用具専門相談員
    本日の症例の自分の印象ですが、ご本人は我儘(わがまま)というより、極度の寂しがりではなかったのかと感じます。年齢や周囲の状況から推測されるに、バブル世代の恩恵を受けながら育ち両親からも高額なもの、海外旅行等にも出資してもらいながら育ち、建設会社の社長夫人としての生活、それが倒産と同時に失っていく寂しさ。それまで蝶よ花よという華やかな生活から倒産に伴う財務整理等で、自分自身に目を向けてもらえない寂しさが思い込みになり、頑張っている自分を認めてもらえないと云う言葉に凝縮されている気がします。民間療法に依存したのも、治療の根拠よりも自分の考えを認めてもらえるといった気持とリンクしたのではないでしょうか。育児放棄は、逆に幼少期に両親から受け過ぎた愛情が当たり前の事として根付いてしまい、親子関係、家族関係が愛情だと感じきれなかったのかも知れません。頭では解っているのですが、表現方法が解らない状況だと感じます。両親の悩み、仲直りしたいのにお互いが売り言葉に買い言葉で拗れてきたのではないでしょうか。治療に関してはあまり積極的ではなかったようですが、痛みは想像以上に厳しかったのが解ります。それを踏まえても、民間療法に何かにすがる想いや自分が信じられる治療といった心の寄りどころにしていたのだと思います。想像や推測だけなので、実際には難しく重い雰囲気の事例ですが、家族間の事にどれだけ関われるのか自分自身にも課題が残ります。
  8. 薬剤師
    今回の症例は、もっと掘り下げる課題があるのかもしれないと思いました。また、改めて患者さん自身の人生の選択について考えさせられました。
  9. 保健師
    ご本人様の本音の引き出しや家族間の調整等、きっとケアマネさんがかなり苦労されたのだと思います。病気や特性のある患者さんとして見るのではなく、ご本人様のありのままを受け入れること、自分の価値観の幅を広げ、心のストレッチをしておくこと、私も心がけたいと思いました。
  10. 介護支援専門員
    疾患への対応だけでなく、家族関係への対応まで、本当に大変だったと思いますが、関わられた皆さんが、本当に一生懸命、本人や家族のためを思われていたことが伝わってきました。自分の価値観の幅を広げられるよう、いろんな症例を見聞きしたり、考えたりしていきたいと思います。
  11. ケアマネ
    ケアマネとして、家族の関係にどこまで入り込むべきか、よくあるケアマネの悩みでもあると思います。どこまで家族のことを深く聞いて良いのか、そこまでしないといけないのか、色々悩みながら支援しています。今回の事例で、ケアマネさんの発表を聞き、自分だったらどう反応し対応するだろうか、このケアマネさんのようにできるのか等色々考えさせられました。
  12. 社会福祉士
    様々な職種の関わり方や考え方を聞くことができとても勉強になりました。常に自分自身も柔軟な考えで患者様に接していけるよう頑張っていきたいと思いました。
  13. ケアマネ
    ケアマネとして家族の関係にどこまで入り込むべきかという課題については常に考えさせられます。まずは、傾聴、寄り添うという立ち位置で関わることになるのですが、自分の価値観の幅を広げて押し付けることのないような関わり方を常に意識していきたいと思いました。
  14. ケアマネ
    今回の事例は、病状や痛みに対する不安やご自身が感じている孤独などを、医療側から見たら効果的でないこと(フェントステープを自分の思いで貼ったり、民間療法など)も、ご本人にとって安心感の獲得のためにしていたのではないかと感じました。
    私たちが支援を行っている中で、ご本人が必要性を感じられない場合も多くあり、うまく支援を導入することができないこともたくさんあります。その中で、必要性を感じるまでの支援が大切だと思い関わりをもたせていただいています。その期間が大切で、そこでしっかりと関わりを持つことで支援を入れてもらいたいと思ったときに、ご自身から訴えてくださることも多くあるように感じています。そのタイミングを逃さないようにしたいと思っています。看取り期だと時間も多くは取れませんが、短い期間でも、その思いを少しでも早めに吐き出していただけるよう関わっていきたいと思いました。そのために、自己覚知を深めていき、自分の価値観を押し付けていかないように心がけています。家族がいるからできること、逆に今までの生活歴、関係性において、家族だからできないことや抱く感情もあると思います。こちらの思いを押し付けることはできませんが、ご家族が後悔することだけはないよう声掛けなど家族支援にあたりたいと思います。
    今回の事例では、医療機関の変更や訪問看護の支援回数の変更などいろいろな出来事がありましたが、皆様の寄り添いと関わりの積み重ねで、信頼していただけたからこそ自宅での看取りが叶えられたと思います。今後の自分自身の支援の参考にさせていただきたいと思いました。
  15. 保健師
    長い関わりの中で、医師をはじめケアマネ、訪問看護師等関係者が本人はもとより両親や夫、娘さん方のよき理解者、支援者であったことがよくわかりました。この症例では、ご本人の自分勝手といえる行動も際立っていますが、生きる為に医療だけでなく何かに縋っていたという、若いがゆえの行動とも推測されます。医療関係者からみると無駄と感じる事でも本人にとっての救いであったのではないでしょうか。その行動をあえて全否定せず、振り回されず、しっかりと受け止めて関わっていただけた支援者のこうあるべきを押し付けない、本人が望む最期に向けて意思決定していけた事例で大変勉強になりました。
  16. 医師
    がん患者が年々増加し、がんとの共生のための支援が求められる中、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)の重要性がますます認識されています。サイコオンコロジーは、がんの予防や検査、診断、治療、終末期などすべての病期にわたり、患者、家族、医療スタッフに対して心理社会的援助を行う全人的な医療です。がん患者さんの心理的支援において支持的精神療法(受容、傾聴、共感、支持、肯定などを中心として支持を続けるコミュニケーション技法)が最も重要であることは、私たちがこれまで経験してきた事例から了解できると思います。
    本事例では、患者さんの幼児期からの親子関係がどのようなものだったのか、さらに人生を重ねるうちにおとずれたいくつかの不幸な経験が、これまでの親子関係・家族の在り方をどのように修飾していったのかを推し量ることが重要なポイントとなる報告でした。担当ケアマネージャーの苦慮された経験の報告が大変印象に残りました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006