第98回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和 4年9月2日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  60歳代後半 女性
<傷病名>
  多系統萎縮症
<発表者>
  座長は、矢野脳神経外科; 矢野 正仁 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 コーディネーター
  ②「多系統萎縮症について」のレクチャーと症例発表
   旭町内科クリニック
   森岡 明 医師
  ③事業所の振り返り
   セントケア訪間看護ステーシヨン
    大塚 菜穂子 看護師
   訪間看護ステーシヨンひまわり
    西谷 郷平 作業療法士
   青葉荘デイケア
    二宮 圭司 介護福祉士
    平尾 龍太 支援相談員
   ようなるデイ
    宮本 知里 管理者兼生活相談員
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第98回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●今回は非がん緩和ケア症例について症例検討した。

●多系統萎縮症についてのリハビリ、生活支援の在り方など多職種の方々からの報告と討論を行った。

<職種別参加者数>

合計  54名
医師 5名 社会福祉士 2名
歯科医師 2名 ケアマネ 13名
保健師 2名 介護 5名
薬剤師 4名 その他 3名
看護師 17名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    神経難病の難しさを感じました。病気のことを理解するということが大事だと思います。
    元気な時に脈絡なく”死“のことを聞くのは難しい、できない、と思っていましたが、皆さんのお話を聞いて、関係性ができていれば、その方の心が”話したい“気持ちに向いている時に、その瞬間に気付くことができるのかもしれない、と感じました。家族を大切に、気持ちに寄り添うことができればと思いました。
  2. 医療機器担当
    普段、知る機会の少ない皆様の貴重なご意見を聞くことができ大変勉強になりました。
    一人の患者様とそのご家族のために、多くの方が深く関わられ、試行錯誤しながら寄り添われているということに改めて気付かされました。
    私自身、医療機器メーカーの社員として患者様に接する機会は多いですが、今一度皆様のように患者様とそのご家族に心から寄り添いながら接していけるよう心掛けてまいりたいと思います。
  3. 医療コーディネーター
    立位においてバランスが悪く、歩行時重心移動がスムーズに行われず、本人が転倒し易くなった原因のひとつは、資料の写真を見る上で、股関節・骨盤を中心とした歪みが大きく関与していることだと思われました。体操で姿勢矯正ができればその点は改善の余地が見込まれたと思われました。
  4. ケアマネ
    LINEで関係者が情報を共有し、同じ支援を行っていくことは凄いと思いました。ようなるデイのスタッフの皆さんが、一人ひとりの利用者さんを凄く大切にされており、機能訓練特化型のデイサービスでの終末期における利用者に対して、もどかしさや苦悩が感じられました。答えはなかなかでませんが、ケアマネも一緒に考えていきたいと思いました。
  5. 看護師
    悪くなっていく方と関わることは辛いことも多いですが、その関わりからたくさんのことを学ばせていただいているということをあらためて感じる検討会でした。関わられた皆様の熱い気持ちと優しさが伝わってきました
  6. 薬剤師
    今回は多系統萎縮症という聞きなれない病気の方でした。病状の進行が読みにくい難しい病気であったと思います。ご主人がぶっきらぼうな感じで、奥さんを大事に思っている行動はみられるが、言葉、会話ではそれがわかりにくい中、皆さん素晴らしい対応だと思いました。
    穏やかにでも進行していく病気で、医療関係者はどうなっていくか予想できるから、ご家族に「きっとこうなる」ということを先に教えてしまいがちですが、先のことではなく、今に寄り添い、本人がご家族と向き合えたら良いと思いました。宮本さんの誕生日のエピソードに感動しました。宮本さんの思いや気持ちが素晴らしく、こんな気持ちをもって関われたら、関わった方は嬉しいだろうと思いました。
  7. 看護師
    医療職スタッフとしては、今後のことを伝えてはいけないと思いがちですが、相手と向かい合った時に言えない気持ちというのは、相手からの思いもあり、言わせてもらえないエネルギーの相互作用によるものだということを学ぶことができました。教えたい気持ちと受入れができて知りたい気持ちのタイミングを合わせることも考えるべきなのだと思いました。非がん患者さんの関わりの難しさを感じることができる症例でした。
  8. 保健師
    今回は非がんの症例であり、いつもの訪問系サービスの関係者ではなく、通所系サービス関係者が中心での内容であり、新たな視点で支援について、各関係事業所の役割について考えることができた。最終的には一番大事な事は、本人の意思(思い)と、それに沿って関わっていただける人と人の繋がりだろうと感じた。病気がなんであろうが、利用者を取り巻く家族や関係者が、利用者にしっかり向き合い、繋がり、時に役割分担していけることが大事ということを、これまでの症例同様に受け止めることができました。関係者それぞれの丁寧な関わりに頭が下がる思いです。
  9. 社会福祉士
    多系統萎縮症は、癌と違って突然死が起こり得る病であるという認識を持ち、報告し合い、検討し合う事が大切であると思います。今回は、グループラインでも其々の事業所が状態観察し報告し合っておりました。「足が出辛くなっている、座位が保てなくなってきた、自分の力でストローが吸えない、食事に時間がかかりだした、ご主人が食べさせた食事が飲み込めず掌一杯ほどの残食が口の中から出できた」等々、こういう状態になってきた時が、サインだったのではなかったのでしょうか。主治医の先生、看護師さん、ヘルパーさんへお繋ぎし、在宅サービスに切り替えご家族が病を受け入れる体制を整え、説明し、期間を設ける。そうする事で、ご主人が慌てて救急車を呼ぶ事も防ぐことが出来たかもしれない。森岡先生が仰っておられた「サービスは変えていかなければならない」というお言葉を聞き、本当にそう感じます。ご本人の「しんどい」サインを見落とさずサービスを切り替えて差し上げる事で、ご本人が楽に過ごせる。十分な移行期間を持つ事で病を受け入れる事ができる、それこそが、「チームで関わる」という事ではないでしょうか。各事業所が持つ特徴を把握し、一つの資源として捉え、組み合わせてプランニングして頂けるよう、こまめに情報提供して参りたいと思います。
  10. ケアマネ
    今回の症例についてとても心の暖まる症例であったと感じました。多系統萎縮症という病気の中、体の変化に応じてご本人、ご家族は勿論関係者が一丸となって話し合いを重ねながら支援をされていたのがとても印象的でした。ご本人の意向やご家族の思いもしっかりと受容されながら前向きに向き合えるような支援をされとても勉強になりました。60代と若くして最期を迎えられた事に対してご本人、ご家族の思いを考えるととても辛かったと思いますが、グリーフケアもしっかりとされ思いの確認が出来ていると感じました。
    私の担当している多系統萎縮症の方がおられます。お薬の調整がとても大切で個人差が有ると感じております。今後の症状や体調を把握しながら今回の症例のような支援が行えるようになりたいと感じました。
  11. 作業療法士
    今回の症例検討会に参加させていただき、声かけの仕方や、家族様への寄り添い方など、自分が普段心がけていることですが、あらためてその大切さを感じ、振り返る大切な時間となりました。今後もそういった気持ちを大切にして、利用者様や家族様と関われるようにしていきたいと思います。
  12. 介護士
    今回参加させていただき学んだことです。
    ・最初に言った言葉がすべてではない。病状によって想いは変わってくる。
    ・その時の状態をご本人様と距離感を大切にしながら、できなくなっていくことが増えていき不安感が強くなる気持ちを傾聴し、いつでもどんな状況でも居場所があるという安心感を提供すること。
    ・ご本人様が元気な時に、価値観、文化、想いを把握しておくこと。
    ・他職種との連携、アドバイスできる専門職を目指すこと。
    ・進行性の病気でも、ご本人様の真の想いを引き出し、その時、その状況でのご本人様の有する能力を活用しながら生活を過ごせるよう援助する。
  13. ケアマネ
    今回、難病の方の支援ということで、がんの方と違い、急な変化も考えられ、ご家族も動揺しやすいことを知りました。そのような中、ご本人の思いを確認しておくことが大切になってくると思います。その思いを誰が聞き取るか、そして、それをどう共有するか、その大切さを学びました。支援者は思いを引き出せる立場にあるとは思います。しかし、対象者の思いをこちらが構えて聞こうと思うと聞けなかったりもします。普段の関わりの中で、ふとした発言を聞き取り、それを共有することができれば、支援者それぞれが、「聞かないといけない」と構えてしまうことは減るのかもしれません。それがご本人にもプレッシャーや負担にならないのではないかとも考えました。ACPについて、『誰が』ということではなく、『みんなで』『さりげなく』と考え、その一つ一つを共有していけるチームを作っていけたらと思います。
  14. 保健師
    デイサービス事業所さんの、本人様やご家族様の思いに寄り添い、熱心に関わっておられる様子が伝わりました。事業所で出来ることが減り、失敗や心配な事が増える中、受入れに悩むケースも多いかと思いますが、この方が可能な限り最期まで大好きな事業所に通うことができ、スタッフや仲間とともに幸せな時間を過ごせたと思います。
    八幡浜市にこんなデイサービスがあるということは、地域の宝だと思います。大変なこともあると思いますが、ケアマネをはじめ関係者とともに今後も支援いただきたいと思います。
  15. 医師
    八幡浜在宅医療研究会は、11年前「多職種連携協働」の理念をかかげて立ち上げた経緯があり、この点から今回の検討会は、訪問系、通所系のほとんどすべての職種が連携協働した症例でした。通所系の皆さんの支援の工夫が報告され感動しました。ありがとうございました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006