第99回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和4年10月7日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  60歳代後半 男性
<傷病名>
  胃噴門部癌(狭窄のため食道胃ステント留置状態)
  肺転移、胸膜播種、骨転移
<発表者>
  座長は、旭町内科クリニック; 森岡 明 医師
  ①家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 コーディネーター
  ②症例報告
   中野医院
    中野 憲仁 医師
  ③訪問看護ステーションからの報告
   セントケア訪間看護ステーシヨン
    所長 松平 直美 看護師
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
①第99回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料
②鎮静の薬剤

<議論の要点とコメント>

●あらゆる手段を持ってしても症状緩和が困難な場合の「鎮静」に対する考え方。

●在宅医療・ケアを担当する側から、病院主治医が在宅医に早い段階から連携を取ればいいのにと考えがちだが、実は患者さんご本人が治療に強い希望をもっているとき、そのようには一概にならないことを在宅スタッフ側は認識しておくことが必要。

<職種別参加者数>

合計  62名
医師 7名 社会福祉士 3名
歯科医師 2名 ケアマネ 11名
保健師 3名 介護 3名
薬剤師 5名 その他 1名
看護師 26名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
    今回の症例検討会で沢山の意見を聞きながら、改めてお客様のニーズとサービス提供者のニーズとのすり合わせの大切さを感じました。議論になった総合病院から緩和治療に関わる医院との連携に関してですが、総合病院の医師の考えやご家族の考えもわかりますが、緩和ケアの話が進むにつれ、今後関わって頂く医師との連携を徐々に行いながら、情報を共有しながら今後の支援を行いたかったのかなと感じました。ケアマネとして、医師、訪問看護も含めて代弁されていたように感じました。ご本人、ご家族の思いは、表ではそこまで不安にみせないように振舞っておられていても、内面的には色々不安で考えもぐらつく事も有ると思いますので、今回の症例を参考にしながらニーズと現実とサービスの調整と話し合いを常に意識しながら対応していきたいと思いました。
  2. ケアマネ
    自分が担当しているご家族から「本人がこのまま最期にしてほしいと言っている。鎮静をかけた方がよいのではと悩む」と相談があり、どんな言葉をかければよいのかと思ったことがありとても勉強になりました。
  3. ケアマネ
    「もっと早く在宅医に繋いでもらったら」と感じたことはありましたが、しかしあのタイミングがベストな時期だったのだと、今思いました。私たちケアマネは、在宅で残された時間を本人、家族の思いを傾聴しながら支えていきたいと思います。
  4. 看護師
    在宅医療に変わるタイミングは、すごく難しい問題だと思います。今回の症例の中で、「本人、家族が在宅に変えようと思った時がタイミング」ということが考えられました。医療者が考えるタイミングではなく、本人や家族が思うタイミングが本当なのだと勉強になりました。
  5. 看護師
    かかりつけ医への連携がなかなかできなかったことは、申し訳なく思っているのですが、当院の主治医の考えについても、少しでも伝われば幸いです。連携室は医療機関と地域を繋ぐ役割を持ちますが、患者さんや家族だけでなく医療者(主治医)の思いや考えを伝えることは、とても難しいと実感しています。
  6. ケアマネ
    「たくさん話せて、幸せな時間を過ごすことが出来た」と奥様が最後に言われたこの一言が看取りのすばらしさを物語っていると思います。
    今回の事例では、鎮静をかけていないから、このような時間が持てたのだと思いますが、何といっても指揮官である清水ケアマネさんの細かな働きが、チーム全体の方向性を定められたものと思います。
  7. 薬剤師
    今回の症例では、必要なかったように思いますが、呼吸苦の酷い患者さんに鎮静の必要性が出てくるかもしれないことで、鎮静について学ばせていただきました。
    鎮静は苦痛緩和の手段にはなるが、鎮静後の家族の同意、チームスタッフの賛同、倫理的な配慮など、色々なことを検討し、慎重に判断される必要があると感じました。
  8. 介護士
    「最期までに沢山話ができた」「もう少し早く在宅医に繋げたかった」とご家族様の想いを聞くと、改めて看取りの難しさを学びました。
    他職種様々な関係機関の領域と、ご本人の思い、ご家族様の思いがマッチングしてスムーズに支援できることは大変なことだと思います。日々進む病状によって、ご本人の思い、ご家族様の思いに変化が生じ、そのような時に出る言葉や態度は決して真実でもなく、揺れ動いていることも認識しなければならない。
    薬を使うことで、ご本人の人権を奪うことにも繋がる。専門職だからこそ、薬を使うことに慎重にならなければならない。医療の奥深さを再認識しました。
    他職種連携を図るうえで介護としてご家族様の声を一番聞ける立場であるので「気づき」を大切にし、私たちの自己満足で終わることのないよう、最後までご本人様の思いを代弁できるよう努めたいと思いました。
  9. 看護師
    具体的な生活背景がみえ、参加者の方々の熱の入ったディスカッションで勉強になりました。
    参加者の言葉の節々から、思いがにじみ出ていて身が引き締まりました。日々の業務に追われる中で、症例検討という形で振り返る時間は大変貴重なものだと実感できました。
    鎮静のアルゴリズム等も定期的に見直すきっかけとなりますので、どれもすぐに活用できると思っています。
  10. 看護師
    今回の事例は、吐血をされていてご本人もご家族もご自宅で過ごすことに不安が強かったと思います。在宅療養を支える医療・ケアチームの皆様の支えがあって、家族でよい時間が過ごせたから、奥様から「もっと早く在宅につなげて欲しかった」という言葉が聞かれたのではないかと思いました。
  11. 看護師
    治療をされる医師、在宅医との間の引継のタイミングは、患者さん一人ひとり、ご家族によっても違っていて、いつが一番いいというのは永遠の課題なのだと思いました。本人、家族が受け入れをして、どうしたいかという思いに寄り添いながら支援ができれば皆にとって良い時間が少しでも長く過ごすことができるのでしょう。
  12. 作業療法士
    本人様や家族様の気持ち・希望に沿うようにアプローチし、家族様とかけがえのない時間を過ごし、在宅で看取ることの大切さをあらためて感じました。
  13. 医師
    今まで病院勤務でしたので訪問看護の経験がなく、まだまだ理解もできておらず、初めて知ることばかりでした。患者様の具体的な生活背景、経過が記されており在宅における患者様像を知ることができました。病院内ではできない関わりが在宅でされており、ご家族様を含めた関わりの必要性を感じました。参加者の方々の熱いディスカッションに圧倒されました。皆様で協力して、どのようにしたらよいのか振り返り、今後に生かされていくのだと感じました。手技・固定方法などものせていただけるとありがたいです。
  14. 医師
    終末期における「鎮静」の考え方と、臨床倫理からの「鎮静」のあり方をまとめると、鎮静を実施する上での5項目について検討しなければなりません。すなわち①予測される生命予後が2~3週以内、②治療抵抗性、③耐え難い苦痛、④患者さんの希望もしくは推定意思、⑤家族および医療・ケアチーム内の合意、です。
    「予後2~3週・治療抵抗・耐え難い・患者の希望・チームの合意」と語呂合わせで覚えておくと、患者さんを目の前にして「鎮静」という言葉がよぎったとき、この5項目を唱えてみることが必要です。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006