第101回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和5年1月13日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  50歳代 女性
<傷病名>
  子宮頸癌、骨盤膿瘍、癌性腹膜炎、癌性イレウス
<発表者>
  開会あいさつ
   八幡浜医師会会長
    芝田 宗生 医師
  座長
   矢野脳神経外科医院
    矢野 正仁 医師
  症例報告
   市立八幡浜総合病院
    循環器内科・緩和ケアチーム
     森岡 弘恵 医師
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第101回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●急性期病院での終末期がん緩和ケアの問題点や緩和ケアチームのかかわりについて。

●入院期間の制限があり、経過中いったん退院、再入院の形をとることも考慮しては。

●感情の起伏がある方への心理的・スピリチュアルな側面の考え方と対応について。

<職種別参加者数>

合計  61名
医師 9名 社会福祉士 4名
歯科医師 1名 ケアマネ 11名
保健師 5名 介護 3名
薬剤師 8名 その他 1名
看護師 18名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 社会福祉士
    日頃から、「森岡先生は丁寧で親切」と、知る方々が言われます。私自身も親やご利用者様がお世話になっており、常に同様に感じております。今回の症例から、より「素晴らしい先生」「こんな先生が八幡浜にいらっしゃるんだ!」と思いました。
     緩和ケア・アプローチの5原則、全人的苦痛、臨床倫理の4分割、スピリチュアルケア、医療従事者の心理的問題等を示して下さり、とても勉強になりました。 先生ご自身が診察しながら振り返られ、「痛みに対する処方、心に対する処方」をされ、「悪者になろう」、「人間として関わろう」、「体当たりしてみよう!」と覚悟され、ご自身やチームを動かされた事で、「先生が旗を振って下さったから付いていけた」とチームとして信頼関係が生まれたこと感動しました。
    余談ですが、私自身「叱ってくれてありがとう」の気持ちが大切よ。と、母から教えられてきました。この方はまさに、そんな気持ちになれたのではないかと思いました。「叱ってくれる=大切に思ってくれている」と感じたから、気持ちが落ち着かれたのではないかと思います。「これをやってみて上手くいくだろうか?ドクターの立場として良いのだろうか?」と悩み考えられたのだと思います。
    患者様に先生の精一杯が伝わり、思いやりをもってともにいること、医療従事者の基本的態度を自ら示された今回の取り組みは、非常に素晴らしく、森岡明先生も率直に「素晴らしい」と仰って、益々お二人のファンになりました。 先生やチームの皆様のような関わりが自分の事業所でも出来るよう、頑張りたいと思います。
  2. 薬剤師
    今回の症例の患者さんは、わがまま?な所がある方でしたが、病院のスタッフの方と良い関係を築けて良かったと思いました。これも関わった方皆さんの努力だと思います。病院の決まりで3カ月で退院した後、1週間は別の場所で過ごして、また再入院してもらうという方法もあることを知りました。
  3. ケアマネ
    気分の浮き沈みがあり、在宅でもなかなか難しい事例の方だったのに、病院で、しかも急性期病床のみの病院でこのような対応が出来る事に大変驚きました。また、森岡先生をはじめ、チーム皆が寄り添う姿勢が大変素晴らしいと思いました。チームで患者様(利用者様)を支えると言う意味で、在宅や病院に関わらずお手本とさせていただきたい事例でした。少しでもこのようなチームに参加できる人材になれるよう頑張っていきたいと思います。
  4. 薬剤師
    森岡先生はじめ他のスタッフの方々のまるで家族のような接し方に感動しました。
  5. 看護師
    皆さんの熱意と優しさが画面上からでもとても伝わってくる素敵な症例検討会でした。 患者さんにとって、がんの進行は辛いですが、親身になって一生懸命関わってくれるスタッフに囲まれて過ごせる時間は、もしかしたら一生の中で一番幸せな時間なのかもしれないなと思いました。私も、皆様のようなケアが提供できるようになりたいと思いました。
  6. ケアマネ
    森岡先生をはじめ緩和ケアチームは凄いと思いました。この患者さんの寂しさ、孤独が「支援してあげたい気持ちにさせていく人」にさせていると感じました。しかし、見放さず傾聴し、寄り添い、スタッフがそのたびに話合い、この患者を支え、今の良い関係が築けている森岡先生を中心に看護、リハビリがチームを組み、一人の患者を支えていることに感動しました。入院期間は3カ月、その後どこにどう繋げるか、これからのことも報告してもらったら参考になると思います。いつもの在宅とは違った事例でしたが違った視点で良かったと思います。
  7. 保健師
    急性期病院の役割と倫理的葛藤の中で、この方をどのように支えるか、人生の最期を送って頂くか考えさせられる症例でした。
    難しいかもしれませんが、在宅を考えるなら地域にこの方のこれまでの生活や人となり、関わりのある人を知っている方がいらっしゃるかもしれません。行政や保健所、職場の方などと病院連携室やコーディネーターさんが相談や情報収集、ケア会議等をしてみても良いのではないかと思いました。
    亡くなって身元の引き取り手がない状況になって初めて行政に相談となっても、先ずはご家族に連絡をお願いすると思うので、ご家族とも是非話をしてみて頂きたいです。
  8. 看護師
    私も日々、「これでよかったのか。こうしていれば良かったのではないか」と患者さんとの関わりに悩みながら、看護を行っています。そういう思いを医師も持っていてくれたことを知って、とても嬉しく思いました。森岡先生のように、家族のように接してくれる先生が主治医でいてくれることは、患者さんにとってとても心強いのではないかと思いました。
  9. 看護師
    主治医を中心として同じ方向に向いて、多職種で関わっていくことで患者さんとの信頼関係が築け、ご本人の思いに添えることができるのだと改めて教えていただきました。
    年齢的、性格的に考えてご本人の発言、行動等理解し辛いと思っていましたが、吉田さんが言われたように愛情のお試し行動だと思うと今の言動を考えても納得することができました。患者さんをみる時に自分の物差しでみるのでなく、その方一人ひとり個人としてどうであるかということを考えながら、患者さんに関わって行きたいと思いました。
  10. 保健師
    病院での医師はじめスタッフの丁寧な関わりについて聞かせて頂き、当事者である人に寄り添うことの必要性を改めて考えさせられました。地域で住民に対し支援する立場にある自分達も「困った人」と捉え、支援者が振り回されてしまうことも多々あります。しかし、その人の背景、今回の事例のように行動の裏にあるその方の不安等の思いをしっかり受け止め、ケアしていくことがその方の不安を軽減させていくことにもつながるのだと思いました。がんの患者に特化したものでなく、様々な方に対し通じるものだと思いました。
  11. ケアマネ
    森岡先生や看護師さん、リハビリの先生の温かい気持ちが伝わってくる事例でした。 学生の時に学んだ危機理論を思い出し、この患者さんは否認や怒りの最中にあったのだろうと感じました。もし家族や親しい友人との支えがあれば、もう少し楽に乗り越えられていたかもしれない時期を、家族や友人の代わりとして、忙しい業務の中で病院のチームで支えておられたことに、本当に頭が下がります。寄り添う気持ちを忘れず、そばにいることを大切に利用者との関わりを見直したいと思います。
  12. 看護師
    医療チームがしっかり団結して同じ方向を向いているのが素晴らしいと思いました。また先生が役割以上に動いていて、そこに看護師等がしっかりついている印象を受けました。体当たりの行動も時には有なのだと勉強になりました。寄り添うってそういうことなのだなと思いました。
  13. 薬剤師
    森岡先生の患者さんとの向き合い方で、母親的な視点で向き合った内容がとても印象に残りました。薬局勤務だけではわからないことも多く、学べることが多いため次回の開催も楽しみです。
  14. ケアマネ
    今回の症例検討会に参加致しまして市立八幡浜総合病院の対応にとても感銘、感動しました。症例の患者様の今までの経緯や性格、家族の状況を理解され、受容と傾聴の姿勢は勿論の事、時には叱咤、激励を行いながら意欲の向上を図られている対応がなかなか出来ない対応だと感じました。外出支援、チームケアどれもとっても療養型病棟でない中で対応されているのにビックリしております。医師の姿勢が全体に浸透し実践されている事例だと思い、私の語彙力では上手く表現できない位凄い事だと感じました。又安易に安定剤等処方されない事が、ご本人との信頼関係を大切にされている証拠だと思います。今後の病状や支援が気になりますので是非今後の支援経過、看取りの状況など発表して頂きたいです。
  15. ケアマネ
    在宅での支援では、多職種連携ができる環境が整い、充分な力を発揮できていることに気付きました。同時に市立八幡浜総合病院の抱える問題点も知ることができ勉強になりました。在宅、病院、どちらで最後を過ごしても充足できる環境が早く整うことを願います。
  16. 医師
    今回の事例は、もともとのキャラクターはあるのかもしれませんが、がんの発症が強いストレスとなって発生した苦悩状態(ストレス障害)のように感じました。
    憂うつ気分、不安、焦り、心配など、うつ病と似たような症状が起こりますが、うつ病と診断されるほど重くはありません。感情の障害が中心で、行為障害(本例では繰り返し起こす攻撃的、反抗的な行動)が目立ちます。このケースでは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬ではなく、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)などの気分安定化薬(mood stabilizer)を試してもいいように思いました。ただし、イレウスを惹起しており経口投与が難しそうなので、アリピプラゾール水和物持続性注射剤(エビリファイ持続性 水懸筋注用300mgまたは400㎎シリンジ)を考慮してもいいのではないかと思いました。ちなみに、同薬の適応病名は「○統合失調症 ○双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」です。同薬は広義の気分安定化薬ですが、非定型抗精神病薬なので300㎎の半量でも効果があるかもしれません。過剰な気分の波は、神経細胞にとってよくありません。神経細胞を保護する観点からも考慮されてもいいのではないでしょうか。
    また、この事例では親類縁者が乏しく、唯一の弟さんとも不仲で、武田先生がご発言されていたようにお亡くなりになったあと、どなたがご遺体をお引き取りになるかなども今の内から行動を起こしておくことも必要でしょう。独居の身寄りのない方を数例看取った当院での経験では、生前必ず行政の方(福祉課)と連携しながら多職種で関わり、お亡くなりになったあとの手順もあらかじめ意思統一しておりました。がんコーディネーター(清水氏)やソーシャルワーカーにその点は相談・お任せしてもいいのではないでしょうか。1週間在宅帰宅・退院といった方法をとってそれをきっかけに方針を立てることもいいかもしれません。その際は、多職種で隙間のない1週間看護・ケア計画を立てることが必要でしょう。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006