第103回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和5年3月3日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
  肺癌(StageⅣB 脳転移 骨転移 癌性腹膜炎)
<発表者>
  開会あいさつ
   八幡浜医師会会長
    芝田 宗生 医師
  座 長
   旭町内科クリニック
    森岡 明 医師
  家族状況などの説明
   八幡浜医師会居宅介護支援事業所
    清水 建哉 コーディネーター
  症例報告
   矢野脳神経外科
    矢野 正仁 医師
  訪問看護ステーション報告
   よつば訪問看護ステーション
    川脇 和子 看護師
  ケアマネージャー報告
   たけしケアプランナー
    前上 あき ケアマネージャー
<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第103回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●在宅診療の導入時には、生命予後が短期であることが予想されていたが、自宅に帰ってお亡くなりになるまで約4か月の経過があった。在宅での生活そのものが予後の改善につながったのでは。

●ステロイドの副作用としての「せん妄」が予想されるとき、ステロイドの投与量の考え方について。

●こまめに開催されたチームカンファレンスで患者さんの意向を共有し実践できたこと。

<職種別参加者数>

合計  65名
医師 9名 社会福祉士 9名
歯科医師 1名 ケアマネ 10名
保健師 2名 介護 7名
薬剤師 7名 その他 8名
看護師 23名 事務 1名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. 看護師
    病院は病気を治す場所、自宅は生活する場所、心の安定につながる意欲も上がるということが凄く印象に残りました。生活する場に戻って、その人らしく生き抜くためには色々な人の協力、覚悟など必要なのだと感じました。今後もご本人、ご家族の思いを聞きながら希望に少しでも添っていけるよう多職種で関わっていきたいと思います。
  2. 看護師
    小さな目標を決めてクリアしていくことで達成感があり、穏やかに過ごすことができるのだと勉強になりました。また、カンファレンスを行いチームでの統一ができており、素晴らしい事例だと思います。
  3. 福祉用具専門相談員
    今回の症例に貸与事業所として関わらせて頂きました。退院前に状態を聞いていたので早ければ数週間くらいなのか、と考えながら関わりましたが、1ヶ月を経過した頃からは安定した生活を送られていて、外出を視野に入れた提案をさせて頂きましたが、最初は長男様の意向が得られず、11月に前上ケアマネ様が聞いたチームカンファレンスでご本人は何を求めているのか、に踏み込んだ話ができ、お墓参りがしたい希望があり、その想いを実現し、クリスマス、お正月、誕生日までを過ごせた素晴らしい事案に関わらせて頂きました。デスカンファレンスに初めて参加させて頂き一連の締めまで参加できたこと良い経験となりました。
  4. 作業療法士
    患者様に対して在宅生活の中で家族様との時間を過ごして頂くことの大切さや、介護者(家族様)の思いを考えながらアプローチすることの大切さを改めて学ばせていただきました。
  5. 薬剤師
    今回の症例では、せん妄とステロイドの量について勉強になりました。
  6. 看護師
    今回の症例は息子さんが仕事を辞めてお母さんを介護するという家族愛を感じました。息子さん一人では介護できなかったと思いますが、長女さんと次男さんの協力もあってできたのだと思います。本人の希望だった両親の墓参りにも行くことができ本当に良かったです。ケアマネさんや訪看さん、先生の連携で実現できたのだと思います。
  7. ケアマネ
    今回の症例検討会に参加させて頂きましてセントケア訪問介護のサービス提供責任者が意見を致しました件について初めに補足したいと思います。今回の事例の方に限らず訪問介護スタッフとして感じる事も含め話された様子です。確かに看取りのケースの場合は医療行為や緊急時の対応など看護の方が対応する事になり、訪問介護として支援が最後の看取りまで至らず途中で支援が終わるケースが有ると思います。そういった際、訪問介護としてとても残念な気持ちや、無力さを感じる事が有るようです。私の担当したケースの場合も最後の支援はキャンセルしたことも有りました。訪問介護として勿論出来ないケアは有ります。
    ですが、【プライドも有ります】今までの経験や知識の習得により状態観察(呼吸、バイタル、)口腔ケア、身体ケア、又ご本人、ご家族に寄り添い不安への傾聴、声かけ等行って頂いています。その中でご家族、ご本人とのコミュニケーションの重要性を強く感じられていると思います。又他事業所との連携が課題と感じられております。ご家族からすると訪問して支援して頂く事は一緒と認識し、サービス内容の違い理解不足、ついでにお願いする事も有ると思いますがその事により、支援に入れない、コミュニケーション不足、信頼関係の構築までは至らない、という悪循環が今回のケースでは訪問介護として感じられたと思います。デスカンファレンスや訪問支援時に相談してくれたと思われると思いますが、訪問介護事業所はまだまだ意見を発信しづらい立場で有るのかなと感じました。格差のない関係性作りはまだまだ時間はかかりますが、八幡浜地域は看取りを始め在宅支援にとても力を入れている地域だと思いますので、是非今後もご理解とご協力宜しくお願い致します。ご幣が有りましたら申し訳ございません。看取りに対するご家族、ご本人の状況はホントに十人十色だと改めて考える事が出来ました。
  8. 介護士
    今回の症例は、長男さんの覚悟や責任感など、様々な背景が感じられ良かったです。ご本人さんもお墓参りや誕生日など、目標を持てた事が良かったと思うし、家族もその思いに何とかしてやりたいというのも良かったです。カンファレンスもその都度行い、みんなが同じ目標に向けたのも良かったです。ご本人様の「生きる」というのを感じられて、精いっぱい生き抜いたなと感動致しました。
  9. ケアマネ
    口数の少ない長男さんが主導して介護にあたられていた事例で、エンジニアという職業柄からか論理的、計画性を持って介護にあたっていたというのが印象的でした。けれども、時折涙が止まらなくなると話されていたことを考えると長男さんなりの献身的な介護の仕方だったのでは…と思っています。
    御本人の希望であった墓参に家族全員が参加し、行動を共にできたことは、御家族の皆様が御本人の思いに寄り添えることができた貴重な時間だったと思います。
  10. 介護士
    状況に応じた適切に支援を行うために、随時担当者会議を行いご本人、ご家族様を中心に多職種連携が図れている事例に、今後の様々なケア対応に学びになりました。
    かかりつけ医による、服薬使用についても想定外の状態がでてくることもあり、薬の成分と受けて側の身体的状態によって効果に影響がでること、それによるかかりつけ医の苦労も理解することができました。
    がん末期の方は、状況の変化が激しくタイミングが大切です。そのようなタイミングに担当者会議を開催し多職種と情報共有されたことが素晴らしく、ご本人の目的に沿ったチームづくりができ、お墓参りの達成や誕生日を迎えることができたのだと思います。
    デスカンファレンスをすることで、ご家族の想い、多職種の知識と経験に活かされるので実践させていただきます。
    最期に長男様が涙を流されたことについて、深い意味はわかりませんが長男様は満足されたように思います。
  11. 医師
    いのちの終わりを前にして、患者家族は今後の医療やケアについてはもちろん、生活や人生についての選択を迫られることになります。中でも病気の進行や急変により患者自身の意思決定能力が低下したときの選択をどうするかは、個人の自律(=自己決定)が優先される現代においては、当人が自分のいのちに関わる意思決定に直接的に関われないという点で、生命倫理上の難題の1つともなっています。そのような意味からも、今回の症例は機会があるごとに家族と支援する側である医師、看護師、介護士などのスタッフが集まり、今後のケアのありようを皆で共有しながら、そして最終的にデスカンファレンスを開いて事例の振り返りをしたという点で多いに学ぶポイントがありました。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)はこのようないのちの終わりにかかわる意思決定支援の一つでありますが、まさにこれが実践された良い事例だと思いました。大変勉強させていただきました。ありがとうございました。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

PDFを見る

県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006