ここまで、私たちを取り巻く環境の変化を見てきましたが、それでは私たちが働く医療や介護、福祉の状況はどう変化しているのでしょうか。

最近、よく新聞やテレビで、産科救急の崩壊が進んでいることが取りざたされています。そういった報道の中でよく「たらい回し」という言葉を使って記事にされることをみて、憤るのは私一人でしょうか。明らかにスタッフ不足で対応できず、やむを得ず救急の受け入れを断わららずを得ないにもかかわらず、あたかもサボタージュをして断ったかの印象を与える報道は、正しく今の医療の現実を伝えていません。逆に、国民に医療不信と誤解を助長する害ある報道と言わざるを得ません。

しかしながら、都会では産科、小児科の医師不足は深刻ですが、私たちが暮らす、地方とくに八西地区はどうでしょうか。少子高齢化の波をもろにかぶっているような私たちの住む地域では、むしろ内科医、脳外科医師の不足が深刻なのではないでしょうか。今まで、医学部卒業生はほとんどが大学に残り、希望する教室に入局し、大学にはベテランから新人まで多くの医師がいました。2004年からスタートした新臨床研修制度では、医学部卒業生は自分の希望する研修病院へ自由に行くことができるようなり、大学に新人の医師が残らなくなりました。その結果、いままで大学に医師派遣を依存していた地方の病院は大学から医師の派遣を受けることが難しくなり、現在の公立病院の医師不足を招いたのです。